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行動開始

「ふう」


 リアナ王女と交戦した俺は自分達の隠れ家に戻ってきていた。フードを外し、一息つく。


「あの王女様、なかなか巻くのに力を使わせてくれる。少し疲れたぞ」


 リアナ王女、今の王家でもっとも優れていると言われる者の力は伊達ではない。今回は逃げることが目的だったからよかったものの最終的に戦って倒さなければならないのだ。


「まあ、その準備は整った。あのダリアンのおかげで輝晶石を人に埋め込んだ時のサンプルもとれたしな」


 あのダリアンという男は存外役に立ってくれた。古い意識に縛られ、対した実力もないのに高いプライドがあるという操りやすい人種だったからな。おまけに魔力の扱いには長けていたので貴重なサンプルとなってくれた。なにも知らないから切り捨てる時も後腐れがなくていい。


「つくづく哀れな男だ。あのラナーーいや、グレンにお前如きが敵うわけもないのに。過ぎた勝利への欲求から自ら自分とその家族の運命をめちゃくちゃにしているのだから」


 ローレンス家はもう二度と表舞台に立つことはできないだろう。彼は自分が守ろうとしていたものを自ら壊したのだ。

 

 勝てなければすべてを失う、そうかつての自分のように。


「あ、おかえり。もう終わったの?」


 帰ってきた俺を見て、アリス様が尋ねてくる。


「ええ、必要な結果は手に入れました。今からは行動に移ります」


 俺の言葉を聞いてアリス様は嬉しそうに顔をほころばせる。


「ああ、やっとなのね。私が表に出る時はもうすぐなんだ」

「ええ。その内誰もがあなたに頭を垂れるようになるでしょう。その一歩を踏み出す時が今やってきました」

「うふふ、楽しみだわ。私、この体になって戦うのは初めてだもの。うまく戦えるかどうか少しだけ不安だけど頑張るわね」

「あなた様ならきっとその肉体を使いこなせるでしょう。そのためにあなたの魂を転生する時に調整しましたから」

「クレイの言うことは間違っていたことはないわ。あなたのおかげで私は転生前の私が馬鹿だったことに気づけたのだもの。感謝してる」

「ありがとうございます。私の身はあなた様のためにありますのでどうぞご自由にお使いください」

「ふふふ、そんなにかしこまらないで。あなたとグレン、今はラナと名乗っていたかしら。あなた達をそんなふうに扱いたくないわ」

「……」


 アリス様の言葉に僕の心はちくりと痛む。まだこの御方はあいつをーー僕の親友だったグレンのことを想っている。


 あなたを今の世に転生させたのは俺なのにあなたはあいつを見ている。


 心の中で嫉妬の炎が燃え上がる。今あなたの側にいてあなたのことを支えているのは俺なのに! どうしてあなたは今もあいつばかり……。


「どうしたの? クレイ? 気分でも悪い?」

「……いえ、なんでもありません。少し考え事をしておりました」

「そうなの? 顔色が悪いわ、無理はしないで欲しいの」


 アリス様は僕の前まできてその小さな腕で僕の頬を撫でる。


「今の私が頼れるのはあなただけよ。だからあなたに倒れてもらっても困るわ。そのことを覚えておいて欲しいの」

「肝に銘じておきます」


 アリス様からかけられた言葉で心の中にあった嫉妬心が消えていく。……我ながら見にくい男だ。親友と思っている人間にこんな醜い感情を抱くなんて。


「さあ、行きましょう。魔王を倒すのよね」

「はい。そしてあなたが魔族の王になるのです」


 僕は力強く答え、転移の門を生み出す。狙うのは魔王の首だ。


 さあ、世界への復讐を今から始めよう。

 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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