悪い癖
侍女からの知らせがもたらされた後、僕達は急いで屋敷に戻った。
「ダリアンが脱出したって……自力であの牢を開けたとでもいうのですか……」
アーシャが信じられないという声で呟く。あの牢はかなりしっかりと作られているし、見張りの衛兵もかなり人数がいたはずだ。それを彼一人で破れる
とは思えない。
「この家の牢はそんなに簡単に破れるとは思えない。自力で開けることは彼にはできないはずだよ。」
「じゃあどうやってここから彼は脱出したんですか」
「……だれかがここに来て彼がここから出るの手伝ったんだ。じゃなきゃここから出られはしないでしょ」
僕とアーシャが会話しているとリアナが口を挟んできた。
「ねえ、二人とも会話中だけどいい? 今凄い魔力を私感じたんだけど。二人も魔力探知をしてみてくれないかしら」
リアナに言われたとおり、僕は目を閉じて魔力の流れを探る。すると街の近くに大きな魔力反応を見つけた。
「今僕もその大きな魔力を見つけた。これは……氷属性の魔力かな」
「もしかしたらいなくなったダリアンはそこにいるのかも。とりあえず準備が出来たらそこに向かってみない?」
僕は頷き、戦闘が起きることを想定してアーシャと共に装備の用意をしようとしていた。
「ねえ、私が使えそうな装備はあるかしら?」
「……」
ああ、また始まった。
僕は思わず頭を抱えてしまう。リアナは王族なのに自ら危険を省みず飛び込む癖があるのだ。そのおかげで民から慕われてもいるんだけど僕は毎度彼女がそういうことを言い出すたびにハラハラする羽目になる。
「リアナ、君は王族なんだよ。君を危険な場所に連れて行って万が一のことでもあったら僕は国王陛下になんて言えばいいのさ」
「あら、民の危険を取り除くのも王族の務めよ。それに自分から動かないと他人からの信頼なんて勝ち得ることは不可能だわ」
僕の言葉をリアナは一蹴する。……分かってはいたけど説得して聞く人間ではない。
「はあ、もう! うちのお嬢様といい君といいどうしてこう強情なのかな!」
そこか彼女達のいいところでもあるんだけどね。
「諦めなさい。私がこういう人間だということは知っているはず。それに簡単に負ける人間でもないということをね」
リアナが自身たっぷりに言ってのける。確かに彼女は大概の相手に負けることはないだろう。実際その実力もある。
だから性質が悪いんだけどね! 実力があって自信もあるから誰も彼女を止められない。
「ラナ、諦めて。戦力は多いほうがいいでしょう。なにが起こるか分からない時は味方は一人でも多いほうがいいです。ましてリアナのような実力がある人が味方についてくれるならこれほど心強いことはありません。……認めるのは歯がゆいですが」
アーシャもリアナがついてくることに賛成してしまった。こうなってはもう止めることは出来ない。
アーシャが侍女達を呼んで、リアナの分の武器を用意するように伝えると彼女達はすぐ行動を始めた。
「ラナ、私達も準備をしますよ。そんなところで呆けてないで早く支度をしてください」
僕にそう言うとラナは足早に自分の部屋に向かった。僕は頭を抱えながら諦めるしかないと自分に言い聞かせ、部屋に自分の武器を取りに行った。
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