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再会

 完全にダリアンの意識を刈り取ったことを確認した僕は雷の大剣を消滅させる。

 意識を失った彼はその場に倒れぴくりとも動かない。

 彼の身柄を公爵様に引き渡して今回の事件の犯人は彼だということをはっきりさせないといけない。僕は彼の体を担ごうとしゃがむ。


「やはりそいつは使いものにならなかったか」

「!?」


 声のした方向を振り向くと一人の男が立っていた。


「お前はあの時の……」

「またあったな、ライアム家の付き人。いや今は正式にライアム家の者になったのだったか」


 僕は鞘にしまった剣を引き抜き、構える。こいつを逃がすわけにはいかない。


「ダリアンにあの指輪を与えたのはやっぱりお前か」

「ああ、あいつも言っていたとおり俺があいつにあの指輪を与えた。あいつが君にどうしても勝ちたいと言っていたからな」


 くっくっくと笑い声を漏らしながら男は僕の質問に答える。ダリアンのことをあざ笑うような笑いだった。


「もしかして、こういう結果になることを分かっていて彼に指輪を与えたの?」

「そうだ。その魔道器の効果も確かめたかったしな。彼は良き強力者だったよ、君に勝ちたいと思う向上心、飽くなき栄達への欲望。俺は彼がその欲望を叶えるのを手伝っただけさ」

「協力者? 利用価値のある駒としか考えていなかったんじゃないの?」

「人聞きの悪いことを言わないでくれ。彼は君に勝つための力を欲していた。俺はただ彼にそれを成し遂げる可能性のある道具を与えただけだ。それで彼が負けたことを俺のせいにするのお門違いだと思うがな。あの指輪を使って君に負けたのは単純に彼の実力不足だったということだろう」


 冷淡な言葉、だが的確に事実を述べている言葉だ。


「……そうだね、ダリアンに関してはお前の言う通りだよ」


 僕はフードの男の言葉を肯定する。ダリアンが実力不足なのは僕もそう思っていたことだしね。


「だけどお前をここから僕が逃がすと思う? 前は魔物の相手をしていて逃げられたけど今日はお前が逃げるのを助けるやつはいないよ」

「そうだな。だが俺もここでお前に捕まるわけにはいかんのだ。その指輪を回収して逃げさせてもらうぞ」

「やれるなら、やってみてよ!!」


 僕は男に向かって突進し、上段から剣を振り下ろす。この男は強い、雰囲気で分かる、だから最初の攻撃から僕は全力を込めた。


「ふふ、相変わらず恐ろしく早い。そして重い剣だな。だが」


 男は僕が振り下ろした剣をかわす。結構本気を出して攻撃したんだけどね……!

同時に僕は男からある気配を感じた。


(これは魔力の気配!?)


 男は魔力操作で風の魔力を操り、竜巻を生み出す。生み出された竜巻は僕に向かってくる。


(あれだけのものを魔力操作で生み出すなんて……こいつ、やっぱり魔力操作は一流か……)


 あの巨大な竜巻を一瞬で生み出すような魔力操作を行える人間はそうそういない。この男の魔力操作の腕はやはり超一流だ。


(気を引き締めてかかろう、そうじゃないとこいつを捕まえられない)


 僕は迫ってくる竜巻をかわし、雷と風の魔力を操作。一気に相手に肉薄し、横薙ぎに剣を振るう。

 だが男に直撃したはずの攻撃は空を切った。


「これは……幻影か……!!」

「その通り、闇の魔力を私が扱えることは勘づいていたんだろう? ならこういうものにも警戒すべきじゃなかったのか?」


 響き渡る男の声、後ろに巨大な魔力反応。


(来る!)


 僕はとっさに横に飛ぶ、僕が先ほどまでいた場所を風の刃が通り、地面を抉った。

「くくく、まあお前をこの程度では倒せんことは分かっている。お前と戦うのは楽しいが今回はそれが目的ではないのでな、逃げることを優先させてもらう。この辺りで終わりにしよう」


 男の言葉と共に大量の幻影が生み出される。


「これは……!」

「今日のお前の相手はこいつらだ。俺はお前がこいつらの相手をしている間に逃げさせてもらおう」

「待て!」


 僕は雷と風の魔力操作で奴を追いかけようとするが幻影達が邪魔をする。


「くそ! 僕の邪魔をするな!」


 僕は剣に風の魔力を操作し、風の刃を自分の周囲に発生させて襲ってきた影法師達を一気に倒す。だがまだ大量にいる影法師は絶え間なく僕に遅いかかってきた。


「しつこいなあ!! もう!! お前らに構ってる暇はないよ!!」


 僕は一気に影法師を一気に殲滅するために剣を鞘にしまい、両手に雷の魔力を集中させ、剣の形を作る。


「邪魔!!」


 これは一気に魔力を消耗するからやりたくなかったけど仕方がない。相手が物量で来るなら一気に倒してあの男に追い付くしか捕まえる方法がない。僕は両手の雷剣を操って次々に幻影を倒す。いつもの身体強化と速度上昇も利用して凄まじい早さで男の幻影を斬っていく。


「あいつは……!」


 僕は周囲を確認する。あいつは倒れているダリアンに近づくと彼の指から指輪を回収し、黒い渦の中に消えようとしていた。


「くそ!」

「さようならだ、ライアム家の懐刀。いや、英雄グレンよ。いずれ俺達は再び会うことになるだろう」

「また……なぜ僕の前世をお前は知ってる!? いったいお前は何者なんだ!」

「いずれ分かるさ。じゃあな」


 男の姿は渦に飲まれ消滅した。あの男が生み出した幻影も役目を終えたのかすべて消えていく。


「逃がしたか……」


 僕は歯がみしながら男を逃がしたことを悔やむ。しかし今回少しだけ戦ったことで確信を得た。


「やっぱりあの男は強い……」


 竜巻を一瞬で生み出したり、自分の幻影を一瞬で大量に作り出すなんて並の人間にはできない。


(あれほどの使い手なら名前を知られていてもおかしくないはず、なのにどうしていままであいつについてなにも情報がなかったんだ?)


 疑問は募るばかりだ、なにより肝心なことが聞けていない。


「今回もなぜあいつが僕の前世を知っているかは分からなかったな」


 前回あの男が口にした僕の前世の名前。それをなぜ知っていたかも確かめたかったけど逃げられてしまった。


「……」


 悔しさを飲み込んで倒れたダリアンのほうへ歩みよる。


「あの男には逃げられてしまったけど君の処分はしっかりさせてもらうよ」


 僕は彼を抱えるとその場を後にした。


 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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