vsクレイ
「グレン!」
向かってくる僕とアーシャに向けてクレイが風の刃を放つ。迫る凶刃をかわして、僕はクレイに雷剣を振り下ろした。
「そんなものが効くか!」
クレイは雷剣を防ぐように闇属性の魔力を操る。僕が生み出した雷剣は霞みのように消えてしまった。
「やっぱりその闇属性の適正はずるいね……! 他の魔力をほとんど無力化するなんてやっぱり反則だよ」
僕はその圧倒的な優位性に歯がみする。闇属性の魔力は他の属性をすべて喰ってしまう。対抗出来るのは光属性のみだ。
「嫌みか! 貴様はそんなことを言いつつ俺と張り合っていたくせに!」
クレイが怒りを燃やして僕を罵る。彼は僕との距離を一気に詰めると僕の顔目がけて蹴りを放ってきた。
僕は背をのけぞらせてその蹴りをかわす。クレイはそれでも攻撃の手を緩めず、僕へと向かってきた。
僕は彼に向かって雷の刃を放つけれどクレイは闇属性の魔力を操って再び消していく。
「させません」
響くアーシャの声、彼女は光属性の魔力を操り、クレイに向けて放った。光属性の魔力は闇属性の魔力が唯一防げない魔力だ。クレイも僕への攻撃を中断して距離をとった。
「ちっ……! 忌々しい女め!」
「ラナを傷つけさせはしません!」
アーシャが僕の攻撃を援護するように光属性の魔力を操り、クレイを妨害する。僕はその隙をついてクレイを追い詰めるように攻撃を仕掛けていく。
「舐めるな!」
クレイが風属性の魔力を操って周囲に突風を巻き起こす。僕はそれによってクレイと距離を引き離されてしまった。
「……やっぱり簡単には通してくれないか。流石に強いや」
かつての最も信頼した戦友の実力に感心しながら僕は次の一手を考える。ずっと生きてきたせいなのか前世の記憶にあるよりも強くなっている気がした。
「ふん、こんなものか、グレン。お前の腕も落ちたものだな」
挑発するように僕のことを煽るクレイ。その挑発に乗る気は僕もないけれど。とはいえこのまま戦っても手詰まりなのは確かだ。
「ラナ」
「アーシャ?」
隣にやってきたアーシャが僕に話しかけてくる。
「私が彼と戦って私に注意を向けなければならないようにします。あなたはその隙に彼を戦闘不能に追いこんでください」
「でも……」
クレイは強い。アーシャは決して弱くはないけれどクレイ相手だとどうなるかは分からなかった。
「大丈夫です。私は彼の強みである闇属性を無効化出来ますからそれなりに注意は引けるはずです。その間にあなたが彼を倒すことは可能だと思いますから」
「……危険だよ、それでもいいの?」
僕の質問にアーシャは不敵な笑みを浮かべて答える。
「そんなことは百も承知です。でもあなたがいるから大丈夫って私は信じてます。だから必ず彼を倒してください」
まっすぐ僕の目を見ながらアーシャは迷いなく答えた。まったく僕の主人は本当に強い精神の持ち主だね。
「……なら僕も全力で答えないといけないね。お願い、アーシャ、クレイの注意を引いて。僕がその隙をついて絶対に倒すから!」
「はい! 行きましょう! ラナ!」