クレイの心
忌々しい男だ。
向かってくるかつての親友――グレン・アシュヘルトを心の中で罵りながら俺――クレイ・トワイライトは戦闘態勢に入る。
こいつはいつもこうだ、迷いながらも周りに慕われ、最後は必ず立ち上がる。前世でも最初の擦れた頃からアリス様と触れ合うことで随分と変わった。そしてアリス様もそんなこいつに惹かれていくことになる。今の世でも隣にいるアーシャという娘に慕われ、共に戦っている。
(本当に嫌な奴だ。人に影響を与えるだけ与えて自分は死ぬんだから)
こいつが死んだ時のアリス様の憔悴ぶりは酷かった。なんとか立ち直ったものの立ち直った後も会話にグレンのことが出てくるくらいだった。それくらい彼女にとってこいつの影響は大きかった。
――ずっと彼女を好いていた俺よりも。
自分の残した結果を振り返ると情けなくなる。ずっと二人と一緒にいて後を託されたのにアリス様をありもしない罪で死なせてしまうという最悪の結果を防げなかったのだから。
生き残ったのは俺だけ。結局俺はグレンやアリス様のようになにかを成し遂げることが出来る人間ではなかったのだ。
それでも俺はアリス様の死に納得出来なかった。そこからだ、俺が狂っていったのは。彼女を破滅に追いやった世界を壊し、すべてをアリス様に捧げるために俺は行動を開始した。
俺はかつて聞いた魔力の循環についての考えを思い出していた。その考えを思い出し、俺はそれからの時間をアリス様の復活のためにすべてその研究に費やした。
その結果、まずは自分の魂を別の肉体に定着させることには成功した。
問題は他人の魂を引き出して肉体に定着させることだった。これが魂を抽出するのに上手くいかず俺は現代まで何百年も時を費やすことになる。
また魂を別の肉体に移すのならいい素体であったほうがいいとも考えたため、大公の一族の者を素体にするために殺した。彼らはアリス様を見殺しにした奴らだ、これくらい当然だろう。
そうしてすべての準備が上手くいき、俺はまずグレンをこの世に転生させることにした。アリス様のためにグレンなら再び働いてくれるだろうと思ったから。彼の力があれば世界を壊すことにも近づけると思った。
しかし、彼の魂を定着させたのはいいが、ノースフィールド家の当主が俺を倒しに来てしまった。なんとかアリス様用の素体を持って逃げれたのはいいが、グレンの魂を定着させた素体は奪われてしまった。 こういった問題が起きつつも、俺はついにアリス様を転生させることに成功した。彼女が生き返ったことに喜びつつも俺は今の状況をアリス様に伝えた。
彼女は俺の話を聞くと泣き出した。彼女がこんなふうに泣いたのを俺は初めて見た。彼女が泣き止むのを俺は待ち、あなたが思うようにやればいいと言った。
アリス様は俺に言った――この身を焼いてしまいそうな憎しみと怒りを燃やしてこの世界を滅ぼしたいと。
だから俺はお前に負けるわけにはいかない、アリス様の世界を滅ぼすという願いを叶えるまではお前にだって負けるわけにはいかないんだ、グレン。
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