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自分の気持ち

「僕がなにをしたいかなんて僕自身が一番分からないんだよ」


 やけになった僕の声が部屋に響く。

 アーシャやシャルロッテが去った後、僕――ラナ・ライアムは部屋に引きこもったままだった。

 アーシャにあなたの選択を尊重しますと言われた僕は今だにどうするかを決めることができずにいた。


「……情けない」


 自嘲するように僕は呟いた。そのままベッドから起き上がり窓から部屋の外を覗こうとした時、禍々しく巨大な炎が見えた。


「あれは……!」


 僕は青ざめる、あれは間違いなくアリス様が王都で使った技だ。


「まさかもうここまでやって来たの……!?」


 まだ戦う決断が出来ていなかった僕は慌てた声を出してしまう。他の人が見ていたらさぞみっともないと思われていたことだろう。

 僕が狼狽しているのを余所にアリス様が生み出した炎がライアム領に向かって放たれる。しかしその炎は誰かによってかき消された。


「あれはシャルロッテ……!!」


 そのまま彼女はアリス様との戦闘に入る。その後戦いにはアーシャやリアナが加わって激しくなっていく 

 

「くそ……!」


 僕は現実から目を逸らしたくて窓の側から離れた。そのままベッドに倒れて顔を埋める。

 こんな状況で大事な人達が戦っているのに僕はまだ踏ん切りがつかない。布団に顔を埋めることしか出来ない。

 

「僕は……!」


 自分にとってなにが大事なのか、なにが嫌なのかを必死に考える。


(アーシャ達が死ぬのは嫌だ……! 今の僕にとっては彼女達は大事な存在なんだ)


 彼女に今世の僕は救われた。たとえお前はクレイに罵られても僕にとってはアーシャと過ごした時間もあの二人と過ごしたことと同じくらい大事なことなのだ。たとえ彼女達の先祖がアリス様を追い込んでこの国を作った人達の子孫だとしても僕は彼女達が人々をよい方向に導こうとしているのを知っているから。


 だから彼女は死なせるわけにはいかない。


(同時に僕はアリス様も殺したくないんだ……)


 だから王都の時に彼女を斬れなかった。それは僕の甘さだろう、だけどアーシャ達も死なせたくないなら彼女を止めなければならない。

 ふと、アーシャに言われたことを改めて思い出した。


「もしあなたが彼女と戦うことが辛いなら戦いに参加しなくてもいいです。彼女はきっとあなたに酷いことはしないだろうから。あるいは戦って倒す以外の選択肢もあるかもしれません」


 戦って倒す以外の選択肢。


 ああ、そうか、僕は――


「結局大事な人には誰も死んで欲しくない甘ちゃんだったってことか」


 気付いてしまえばなんてことはない。きっとこの感情を甘いと切り捨てる人間だっているだろう。


 けれど僕はそれをしたくない。


「……よし、決めた。僕はアーシャ達もアリス様達も救ってみせる」


 ようやく自分の気持ちに気付くことが出来た。後は行動するのみだ。 僕はベッドから起き上がり戦う用意をすると部屋を出て大事な人達がいる戦場に向かった。

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