死闘④
「あら、あなたももう動けるようになったの」
アリスの冷ややかな声が場を支配します。それは私--アーシャ・ライアムを助けに来たリアナに対するものでした。
「ええ、なんとかね。命はなんとか拾ったわ」
「せっかく拾った命なのに無駄使いするつもりなのかしら? あなたが私に勝てないというのは王都の戦いで十分に分かったはずだけれど?」
アリスはリアナに対して見下すように言い放ちます。
「そうね、あなたの言うとおりだわ。でもだからってすべてを破壊しようとするあなたを止めないという理由にはならないの」
リアナは毅然としてアリスに言い返します。彼女の手に握られていたのは二振りの剣――銀桜と紅禍でした。イサーク様の一件の後、私は二人からあの剣についてどういうものか聞かされました。
「あなた、その剣は……」
アリスはその二振りの剣を見て不機嫌そうにしています。リアナはその言葉には答えずただ剣を構え、戦う意思を見せました。
「……どこまでも私を苛立たせてくるわね、あなた達は」
その言葉とともにアリスはリアナに襲いかかります。放たれる邪竜の炎をリアナは紅禍を振るって切り裂きます。魔力を裂く効果は邪竜の炎にも効くようです。
「ちっ! 魔力を練り上げてるこの炎は無力化されるわね! 厄介な!」
アリスは攻撃方法を切り替えて血の剣を生み出し、リアナに斬りかかります。リアナはそれを受け止め反撃し、二人の間で激しい応酬が続きました。
「しぶといわね」
「簡単に死ぬわけにはいかないの! 私はこの国の民を守らないといけないから!」
リアナは銀桜を奮い、虹色の刃を放ちます。アリスはそれをかわして血の槍を召喚、リアナに向けて放ちますがリアナも炎属性の槍を生み出し血の槍をすべてたたき落とします。
「へえ、少しはやるじゃない」
「まだまだ!」
二人の激しい戦いは続きます。体勢を立て直したシャルロッテ様も加勢に加わり、アリスを追い詰めようとしています。
「私も……」
「させん」
加勢に加わろうとした私に誰かが攻撃を加えました。私はなんとかその攻撃をかわします。
「あなたはクレイさん……でしたね」
「ほう、俺のことも知っているか。アリス様のことは聞かされていたようだが。グレン、いやお前達はラナと呼んでいたか。あいつから聞いたのか?」
かつてのラナの旧友――クレイ・トワイライトはこちらをあざ笑うような笑みを浮かべながら私の前に立ち塞がりました。
「ええ、あなたとの関係も。ラナ自身、あなた達の結末自体はシャルロッテ様から伝えられたようですけれど」
「……ノースフィールドめ、そんな力まで持っていたのか。どれだけのことが可能なんだ、あいつらは。まあいい」
クレイの周囲に魔力が渦巻いていきます。完全に戦闘に入る状態です。私も相手の攻撃に備えていつでも魔力操作で対応できる体勢をとります。
「貴様達は俺達にとって邪魔だ。総仕上げに取りかかっている以上全力で排除させてもらう」