真実⑨
「ねえ、シャルロッテ」
リリベラ様の記憶を見た後、僕はシャルロッテに尋ねた。
「今のノースフィールドに受け継がれる記憶を見て聞きたいことがある?」
「うん」
「私が答えられる範囲でなら答える」
「・・・・・・実を言うと僕には目覚めた時からの記憶しかないんだ」
今世の僕の記憶がはっきりしているのはライアム家の養子となった頃からだ、前世の記憶まで取り戻したのはアーシャを助けた一件からだけど。それ以前の記憶はもやがかかったように今までは思い出せなかった。
「でもこの記憶を見てその理由が分かったよ。・・・・・・リリベラ様が僕の記憶に干渉したんだね」
「・・・・・・うん、そう。あなたを助け出したお母様はその処遇をどうするかとても悩んだ。クレイ・トワイライトの転生の試みは成功してしまっていて君はもう命を授かった一人の人間として生きてしまっていたから」
「それでライアム家に預けることになったの?」
「そうだね。悩んだお母様は信頼できる人間に君を預けることを選んだ。それがライアム公爵だった。お母様は君の記憶を消した上でライ編む公爵に預けた。彼は君をきちんと導いてくれたみたいだからお母様はとても感謝していたよ」
「・・・・・・じゃあ、ライアム公爵は僕はこういう出自であることを・・・・・・」
「うん、知っている。君が転生者であることもすべてお母様が説明したから。それでも彼は君を引き取って育てたんだ」
「・・・・・・」
知らされた真実が重くのしかかる。孤児だと僕に聞かせていたのは嘘だったのか。アーシャもおそらくこの事実は聞かされていないだろう。
「そっか・・・・・・公爵様は僕のことを知ってたんだね」
こんな事実を知っていてそれでもライアム家で引き取る決断をしてくれた公爵様にはますます頭があがらなくなってしまった。
けれど、
「真実を知ってなにをすればいいか分からなくなった?」
「・・・・・・」
シャルロッテが僕の顔をのぞき込みながら尋ねてくる。その瞳に見つめられるとすべてを見透かされているような気持ちになる。
「……そうだね。受け止める覚悟は出来ていたけど……ちょっと情報量が多すぎて……少し整理する時間が欲しいかな」
僕の言葉を黙って聞いていたシャルロッテはしばらく僕を見ていたがやがて小さく頷き、立ち上がる。そうして部屋の出口へ向かった。
「……今はいろいろなことを知ったからいろいろと落ち着かないと思う。自分の根幹に関わることだから。君自身で今見たことに整理をつけるといい」
穏やかな口調でシャルロッテは僕に語りかけて部屋から出て行った。
「僕は……どうしたらいいんだ……」
一人きりの部屋に僕の小さな声が虚しく響き渡る。答えはなく、静寂が場を支配した。