真実⑧
クレイとリリベラさんの戦いが始まった。両者は激しい攻撃の応酬を繰り広げる。リリベラさんが魔力操作で放った魔法をクレイは闇属性の魔力を駆使して防ぎ、反撃する。
「……やっぱり闇属性の魔力に適正があるのは厄介ね」
「ふん、嫌味か。ノースフィールドの者ならいくらでも対処法くらいあるだろう!」
クレイは攻撃の手を緩めない。凄まじい勢いで攻め立てていくがリリベラ様もそれをすべて防ぎきっている。彼女の様子にはまだ余裕が感じられた。
「ちっ! 本当に忌々しい! 簡単に倒せないのは分かっていたがこれほどとは……!」
「……もう満足した?」
「!?」
冷たく響くリリベラ様の声。リリベラ様はクレイに向けて蹴りを放つ。クレイはそれを受けてそのまま吹き飛んでしまった。
「ぐっ……!?」
呻くクレイ。リリベラ様の先程の蹴りはかなり効いたみたいだ。
「くそ……!? やはりその強さは時代を経ても健在か!」
「力の差が分かったなら早くあなたが奪ったノースフィールド家の人間の遺体を返しなさい。あなたが持っていていいものじゃない」
「断る!」
「はあ……まったく。聞き分けの悪い人間には痛みをもって対応します」
再びリリベラ様から強烈な一撃が放たれ、クレイが吹き飛ばされる。クレイは壁を突き破って別の部屋に吹き飛ばされてしまった。
「ここにあったのね」
リリベラ様の視線の先には2人の人間が横たわっていた。2人共動く気配がない。
「大人しくその2人を引き渡しなさい。これ以上の抵抗は無駄」
リリベラ様の言葉にクレイは顔を歪ませ激怒する。
「返せだと! はっ! 誰が返すものか! これは俺の野望に必要なものだ! 絶対に渡さない!」
「なら、叩きのめして持っていく」
リリベラ様は再びクレイに猛攻を仕掛ける、クレイはそれを凌ぎながら横たわっている2人の側に向かった。
「はあ、はあ……勝つのは難しいか……! こうなったら……!」
クレイの側に黒い渦が生まれる。転移のためのものだ。クレイは闇魔法で生み出した影で2人を抱えてそのまま逃げようとするが、
「逃がさない」
リリベラ様の神剣が振るわれる。高速で振るわれたその剣は1人を抱えていた影を切り裂いた。
「しまっ……!?」
クレイは叫ぶが黒い渦は彼ともう1人を飲み込んで消えてしまった。
「ちっ、逃げられたか……」
リリベラ様は神剣を下ろして助けた人間の元へと向かう。その人間の顔を見た僕は息を呑んだ。
「あれは……僕!?」
美しい銀髪に青い瞳、それは紛れもなく今世での僕の姿だった。
リリベラ様は横たわる僕の側に寄る。驚いたことに横たわっていた僕は目をうっすら開けた。
「……っ!? まさかもう転生に成功していた……!」
リリベラ様は驚いた表情をしたけれどすぐに元に戻して僕に問いかけた。
「あなた、名前は?」
尋ねられた僕は首を横に振った。どうやら分からないということらしい。
「……よかったら私と一緒に来る?」
リリベラ様の申し出に過去の僕は頷いた。