真実⑥
僕は目を開けて周囲を確認する。そこには再びシャルロッテの先祖がいた。彼女は自分の部屋で侍女から報告を受けているようだった。
「そう……アリスは処刑されてしまったのね」
「はい、処刑の時も言い訳一つせず刑の執行を受け入れたそうです」
「……」
侍女の報告をシャルロッテの先祖は黙って聞いている。表情は変わらないがどこか悲しそうに見えた。
「分かったわ、報告ありがとう。もう下がっていいわよ」
「はい、それでは失礼します」
侍女は淡々と答えて頭を下げ、部屋から退出する。彼女が出て行った後、シャルロッテの先祖は大きくため息をついた。
「あなたは最後まで素晴らしい人間であろうとしたのね。でもそれは周りには理解されなかった。……悲しいわね、少し私の意見を聞き入れていれば違った結末があったかもしれないのに」
椅子の背もたれにもたれかかりながらの呟きを聞く者は誰もいない。しばらくは部屋は静寂に包まれていたが突然部屋の外が騒がしくなる。
「なにかしら……?」
騒がしいのが気になって部屋から出るとそこでは屋敷の人間と1人の男性が揉めていた。
「だから俺はあなた達の主人に合わせて欲しいだけだ。何故そこまで頑なに会わせることを拒む?」
「あのお方は俗世の争いには関わりになりません。あなたもそれは分かっているはずですが?」
「そんなことは知っている!」
廊下に男性の声が響き渡る。大きな声に侍女が怯んだ。
「それでも……俺は…….!」
「クレイ・トワイライト。話があるなら聞きますよ」
シャルロッテの先祖の声が響き渡る。クレイはその声の主をじっと見ていた。
「そんなところで騒がずとも私は逃げたりしません。今日はどうしたのですか?」
「……何故ですか?」
クレイは静かに問いかける。そこに込められている感情は怒りだ。
「あなたはアリス様と友人だった、それなのにノースフィールド家は人間間の争いには関与しないと言って彼女を救おうとはしなかった! あなたほどの力があればアリス様を救うのは容易かったのに!」
それは力あるものへの嫉妬と羨望が混じった心からの叫びだった。
「それでも私は彼女のことに干渉するわけにはいかなかった。それをしてしまえばノースフィールド家の立場が大きく変わってしまうから」
「……っ!」
クレイはその言葉を聞いて顔を歪ませる。
「……やはりその態度は変わらないのか。友人を見捨てる薄情者め」
「そういうあなたは私にどうして欲しいのですか?」
「アリス様を貶めた奴らへの復讐への協力を頼もうと思って来たがやめだ。その考えなら協力は得られないだろうからな」
クレイはそう吐き捨てると背を向けてその場を去ろうとする。
「あなたはこれからどうするのですか?」
「決まっている、アリス様を破滅に追い込んだ者たちを破滅させる。どれだけ長い時間をかけてもな」
迷いのない口調でクレイはそう言うと足早にその場から去っていった。