表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/145

真実⑤

 光がおさまると目の前にシャルロッテがいた。彼女は静かに僕に語りかけてくる。


「これがあのアリス・ローゼンタールに起きたことの真実」


「……」


 シャルロッテの言葉を聞きながら僕は唇を噛みしめる。今、見せてもらった記憶を僕は頭の中で整理していた。


「君に見せてもらったことを整理させてもらっていいかな?」


「うん」


「僕が死んだあの戦いの後、アリス様はクレイと一緒に世界の復興を頑張った。でも彼女を恐れた勢力に陥れられたアリス様は最終的に処刑され、それを主導したのが今の王家の先祖であるアルバイン家だと」


「そう、今の王家は昔の権力闘争を勝ち抜いて今の秩序を作り上げた。歴史書では今見せた記憶のところは抹消されているけれど」


「……納得がいったよ。道理で今の世でローゼンタール家の話のことを調べても見つからないわけだ」


「……」


 僕の様子をシャルロッテは静かに見守っている。その表情は分かりにくいけれど僕のことを心配しているようだった。


「僕はどうしたらいいんだろうね……自分がもっとも尊敬し……愛していた人が今の王家によって葬られていたなんて」


「そして彼女を殺されたクレイはその者達を呪った。彼自身もアリスが殺されたことで失脚し、姿を消した」


「その途中で僕とアリス様を転生させた魔法を完成させた……」


「うん」


「……クレイがああなってしまった経緯は知ることが出来る?」


「……ある程度は分かる」


 シャルロッテはためらいがちに僕の質問に答える。きっと僕がショックを受けているのを見て気を遣ってくれたのだろう。


「でも君は本当にそれを知りたい? ただでさえアリス・ローゼンタールのことを知って今大分堪えているように見える」


「……うん、そうだね。正直大分ショックだよ、今の王家がアリス様達を犠牲に権力を手に入れたって事実は」


 僕はシャルロッテの言葉に頷く。彼女の言葉を否定することは出来ないからだ。


「でも僕には知る義務がある。二人になにが起きたかを。だから僕のことは気にしないで記憶を見せて欲しい。知らないまま二人と向き合ったら前と同じ結果になると思うから」


「……」


 シャルロッテは考え込んでしばらく沈黙していたがやがて首を縦に振った。


「分かった。ラナの意思は固い、だからクレイ・トワイライトに関して見せられるものはすべて見せる」


「お願い」


 お前は半端者だ、王都での戦いの時にクレイに言われた言葉が頭をよぎる。確かにこの記憶を見た後では僕は半端者と言われても仕方ない。二人が受けた苦労を知らず、自分の生まれた理由も知らなないで幸福に暮らしていただけの人間でしかないのだから。


(だから知らないと。アリス様のことだけじゃなく、クレイのことも)


 そうじゃないと話をしようと思っても出来ないから。また


「それじゃ始める」


 シャルロッテの言葉と共に僕の視界は再び眩い光に覆われた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ