真実④
目の前の光景が切り替わる。何度も経験すると流石に慣れた。僕の目に飛び込んできたのは拘束され、傷ついた女性の姿だった。
(……っ!! アリス様!!)
(ここは私の先祖の記憶の中、君にとってはきついかも知れないけれど気をしっかり持って)
(……そうだね)
シャルロッテに叱咤され、僕は冷静さを取り戻す。それでもアリス様のこんな姿を見ていて心が痛まないわけがなかった。
体のあちこちに傷ついた後が見える、顔はやつれて前の様な覇気も感じられない。服も粗末なものを着せられていて彼女が罪人であることが嫌でも分かってしまう。捕らえられた後、なにが行われたかは想像がついた。
そんな彼女の姿を見ている僕の中にアリス様に酷いことをした奴らに対する怒りが湧いてくる。押さえるのに必死だ。
そしてアリス様の側に立っているのはシャルロッテの先祖。
「……随分酷い目に遭わされたようね、アリス」
「……あれだけ関わらないって言って会いには来るのね」
くすりと笑うアリス様、しかしその笑みに力はない。
「だから私は忠告したのに。人を信じすぎないようにって。本当に馬鹿ね」
「……そうですね、こうなってしまった以上あなたの忠告を聞き入れなかった私が愚かでした」
「……」
アリス様の言葉にシャルロッテの祖先は答えない。沈黙が場を支配する。
「……多分これがあなたと話せる最後の機会になるわ。だから会いに来たの。面会時間は決められているけれどめいいっぱいあなたとお話するつもりよ」
「……ありがとう、わざわざ会いに来てくれたのはあなたくらいよ。あとは……皆離れていったわ。私に最後まで味方してくれたのはクレイくらいね」
「彼か……あなたをずっと慕っていたわね。今、どうしているの?」
「私を助けるために最後まで奔走してくれたみたい。ここに捕らえられてからは会えてないから今のことは分からないわ」
「そう」
それから二人は他愛のない話を面会時間ぎりぎりまでしていた。話している間はアリス様の表情が少し柔らかいものになっていた。
「おい、時間だ」
しかしその時間も終わりがやってきた。アリス様の監視を担当していた人間が面会時間の終わりを告げる。
「もう終わりか。じゃあ私は行くわ」
「ええ、最後にあなたと話せて楽しかったわ」
シャルロッテの先祖はそのまま部屋を去る。彼女が部屋を出た後、監視役の人間が扉を締めた。
「……さようなら、人のために戦った英雄、アリス・ローゼンタール。そしてあなたを友人として助けることが出来なくてごめんなさい……」
世界を背負った一族の長の悔しさが滲んだ言葉は彼女以外の誰にも届くことはない。そのまま彼女は友が捕らえられた場所を後にした。
そして強い光が僕の視界を再び奪った。
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