真実③
「大公様、これを」
僕はシャルロッテに再び別の記憶を見せられていた。今度はシャルロッテの先祖がなにやら手紙を受け取っている。
「……! これは……!」
手紙を見た彼女の表情が険しいものに変わる。一体なにが書かれているのだろう。
「……ここに書かれていることは本当なのか?」
「はい、確かなことでございます」
「……馬鹿なことを……。アリスを処刑するなどと。処刑の理由は……彼女が国を私物化しているためか……ふん、下賤な奴らめ」
(えっ……!?)
その言葉を聞いた僕は凍り付く。
(アリス様を処刑!? どうして……!?)
(前回の記憶で私の先祖がアリスに忠告していたのを覚えているか?)
(確かアリス様に反感を覚えている人達がいるから気をつけろって)
(そうだ、そしてその予感は当たった。彼女は見事に嵌められて大罪人に仕立てあげられた)
(・・・・・・そんな! どうして!)
(功績をあげた英雄なんてその後は疎まれるのが常。彼女は人を信じすぎた。ありもしない罪をでっち上げられて嵌められた)
(・・・・・・誰がそんなことを・・・・・・)
(それはこの後の会話を聞けば分かる)
「はあ・・・・・・」
シャルロッテの先祖が額に手を当てて溜息をつく。
「だから気をつけろといったのに。人というのは強いものを恐れるものだ。なにゆえ力あるノースフィールド家が人の世と一定の距離を置いているかを考えたら分かったことだろうに」
「大公様、アリス殿の件をどうなされるおつもりですか?」
知らせを届けた侍女が問いかける。
「……私にはどうにも出来ない。ノースフィールドが動くのは世界の危機の時だけだ。こういった人間同士の権力争いで私が動くことはない」
言葉こそ冷たいがその表情は悔しそうに見えた。
「……ご友人がこんな目に会われたのに助けにいけないのは辛いですね」
「……」
侍女が気遣うように声をかける。ノースフィールド家のかつての当主はその言葉になにも返さない。
「……いけないな。私もこんなことで自分の感情を出していては。お前にも見抜かれてしまうのは恥だ」
「あなた様とは長い付き合いですから」
侍女は淡々と主人の言葉に答える。
「ふふ、そうか。いつもありがとう、君には助けられてばかりだな。それにしても本当に愚かなことをしたものだ、アルバイン家め」
(ア、アルバインだって!! アリス様を陥れたのって……!)
(そうだ、彼女を悪者に仕立てあげて処刑に追い込んだのは今のアルバイン王家の先祖だ)
(ど、どうしてそんなこと……!)
(彼らはずっと力を持ったアリスのことを疎んでいた。手に入れた力を使い有力貴族である自分達に牙を向くのではないのかと)
(そんなことアリス様がするわけないだろ!)
(それは君は彼女の人となりをよく知っているから言えること。アリスと地位を通して付き合っていた人が絶対的な力を持っている彼女のことを疑わないのは不可能。人がきちんと対話をして相手を理解するのはどんな時でも難しい、いろんなしがらみもあるから)
(……!)
シャルロッテにそう言われて僕は言葉に詰まる。それは僕自身もダリアンに対してそうだったからだ、彼の気持ちのことを理解出来ず最後まできちんとした対話は出来なかったから。
(そしてアルバイン家はアリス・ローゼンタールを謀略で追い落とすことにした。彼女が自分の権力を濫用しているという証拠をでっち上げてね。今のアルバイン王国はこの時代に彼らがアリスを追い落とした後に作り上げたものだ。彼らはすべてを掌握した後、王国の正当性を確かなものとするために歴史の記録を書き換えた)
(……!)
だからアリス様のことが記録に残っていなかったのか、この世界に転生してからずっと疑問に思っていたことがようやく解決した。
(……君には辛いかもしれないけど次の記憶に行く)
苦い思いを噛みしめながら僕はシャルロッテみ導かれて次の記憶へ向かった。
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