帰還
傷ついた皆を休ませて僕は公爵様の元へヨハン様と一緒に向かった。
「ラナ、よく戻ってきてくれた。アーシャと一緒に無事に戻ってきてくれてなによりだ」
公爵様の暖かい言葉に僕は唇を噛む。
「いえ、僕は大したことはしていません、頑張ったのは大公様ですから……」
「ラナ、それにライアム公爵。いろいろと話したいことはあるだろうがまずは大きな状況を整理しよう」
ヨハン様はライアム公爵に王都が陥った状況を説明した。話を聞いた公爵様が頭を抱える。
「まさか、王都がそんなことになるとは……王都の人々がどれだけ生き残っているかも分からないということですか?」
「ああ、その通りだ。僕達もぎりぎりで逃げ帰ってきたようなものだからな。あの2人からリアナが僕を守って逃してくれなかったら転移の魔導具を使うことも出来なかっただろう」
「なんにせよ、無事でよかったです。王都を壊滅させた者達は次になにをするつもりなのですか?」
「言動から察するに目的は一つだろう。このアルバイン王国を滅ぼすこと、あの者達の目的はそれだけだ」
「……つまり、この国のすべてを破壊することそのものが目標ということですか」
公爵様の表情はとても暗い。それはそうだろう、たった一日で王都は壊滅し、王族が命からがら逃げ出すようなことになったのだから。
「……状況は分かりました。いずれ彼らが王国すべてを滅ぼすために行動を始めることも。私はこれからそれに備えるために用意をします」
「すまない、ライアム公爵。こんな時に王族がなにも出来ないなどという情けない状態で」
「気になさらないでください。誰だってこんなことは予測できませんから。ヨハン様も休まれてください、相手も今は動いていないようですから」
ヨハン様は頷き、部屋から退出する。僕もヨハン様にい続いて部屋を退出した。
*
ヨハン様と公爵様の部屋を出た後、僕はライアム邸の自分の部屋へと戻った。そんなに離れていないはずなのに酷く懐かしく思える。
「……っ!」
部屋のベッドに僕はそのまま倒れ込む。疲れがどっと押し寄せてきた。
(どうしてあの二人があんなことを……一体二人になにがあったの?)
二人は理由をあの時は説明しなかったけれどあの口振りは絶対になにかある。戦いの時はこんなことを考える余裕がなかったけど。
「なにが二人を変えたの……? 僕には分からない……」
誰もいない部屋に小さな呟きが響き渡る、僕の言葉に答えるものは誰もいない。
「ラナ」
その時、部屋の外から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「その声は……シャルロッテ? もう大丈夫なの?」
「うん、動くのには問題ない。あなたと話したいことがある、よかったらあなたの部屋に入れて欲しい」