撤退
紫の炎がシャルロッテを焼き尽くそうと迫る。
「シャルロッテ!」
僕は想わず叫ぶがクレイに邪魔されてシャルロッテを助けにいくことが出来ない。
「くそ……!」
そのまま紫の炎がシャルロッテを焼き払おうとした時、
「大公様!」
声が響き渡り、シャルロッテの前に光の盾が形成される。その盾は迫り来る炎を防いだ。
「!? あなた……」
「アーシャ……!」
アリス様の炎を防いだのはアーシャだった。シャルロッテのおかげで回復したとはいえまだ苦しそうだった。
「はあ……はあ……!」
「ちっ……! 生き返ってすぐでそれほど動けるなんてなかなかあるわね。でも……次は防げないでしょう!」
アリス様は弱った2人にさらに追撃を加えようとさらに大きな炎を生み出す。
「そら! 受けきれるなら受けてみなさいよ!」
再び激しい炎が二人を襲う。アーシャは必死に盾を作るが徐々にひびが入っていく。
「……っ!! くうううううううううううううううううう!!」
「あははははははははは! 無駄よ! 無駄! おとなしくその忌々しいノースフィールドの女と一緒に消えなさい!」
「そんなことは……させない」
アーシャの盾に重なるように虹色の盾が形成される。炎は二重の盾によって防がれた。
「大公様……!?」
「はあ、はあ……!」
防いだもののシャルロッテも息が荒い。膝をついて苦しそうにしている。
「いい加減に死ね! 鬱陶しい!」
「いいえ! 死んでなんかやらないわ!」
「!?」
紅蓮の炎がアリス様を襲う。襲ってくる炎をアリス様は自分の炎をあてて相殺した。
「リアナ・アルバイン……邪魔をしないで!」
「そんな言葉、聞くわけがないでしょう!」
炎を放ったのはシャルロッテによって回復させられたリアナだった。彼女も回復したとはいえ満身創痍の状態だ。
「ああああああああああああああああああああああああ!!」
炎の剣を生み出し、アリス様へと駆けるリアナ。アリス様もそれを迎え撃つ。
「あなたじゃ相手として話にならない。あのライアム家の子みたいに光属性を扱えもしないなら大した脅威ではないわ」
「ぐっ……!」
だんだんとアリス様に押されていくリアナ。僕の心を焦りが支配していく。
「くそ……! クレイどいて! このままじゃ皆が死んでしまう!」
「退くと思うのか? それにお前はいまだに迷っているのだから行ったところでなにが出来る」
「っ……!?」
クレイの言葉が僕の胸を突き刺す。その迷いは僕の足を止めるのに十分だった。
「ふん、どっちつかずの情けない奴め。大人しくしていろ」
クレイが僕に向けて攻撃を放とうとする。その時彼目がけて攻撃が放たれた。クレイの動きがそれで止まる。
「ラナ! 皆無事か!?」
「ヨハン様!?」
「すまない。必要なものを集めていたら遅くなった。だが状況は
最悪らしいな」
突然現れたヨハン様は状況が悪いことを瞬時に理解した。国王様も側にいる。
「ラナ。一旦撤退するぞ」
「撤退ってどうやって!」
「こんな時のために転移の魔道具を用意していたんだ。今は体勢を立て直すしかない! それを使って脱出するぞ!」
ヨハン様はアリス様と戦っているリアナに向かって呼びかける。
「リアナ! こちらに来い! 大公様もアーシャもだ!」
ヨハン様の呼びかけに気付いた皆がこちらへ向かってくる。
「逃がすと思うの? 全員死ね!」
アリス様の攻撃をリアナが殿を務めて防ぎながらこちらに走ってくる。
「逃がさんぞ……!」
クレイもヨハン様目がけて攻撃を開始する。僕はそれをすべて防いだ。
「半端者が邪魔をするな!」
「……っ!」
クレイから罵られても僕は彼からヨハン様を守り続ける。そうしてリアナ達3人がヨハン様の元へとたどり着く時間をなんとか稼ぐことが出来た。
「よし、全員揃ったな! 転移の魔道具を発動するぞ!」
ヨハン様の言葉と共に僕達は黒い靄のようなものに包まれた。
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