勇者vs魔王④
禍々しい紫炎がアリス様を覆うように発生していく。炎は触れたものを灰燼に帰した。自動で自分の主を守ろうとしているように見える。
「邪竜の炎をそんなふうに使いこなすんだ。普通の相手なら確かにこれで終わり」
「あはは、まだ準備運動みたいなものよ。楽しみましょう、ノースフィールドの末裔」
アリス様が手をかざす。無数の棘が邪竜の炎を纏ってシャルロッテに迫った。彼女は剣を振るい、迫ってくる棘を破壊する。
「!?」
「迂闊だったわね。その炎、燃え広がるわよ」
まるで獲物を狙うかのように炎は剣を伝い、シャルロッテに迫る。シャルロッテは魔力を練り上げて、炎をかき消した。
「むう、面倒な攻撃をしてくれる」
「ふふ、いいでしょう。じわじわとあなたを追い詰めてあげるわ」
再び炎を纏った棘を放つアリス様。シャルロッテも下手に攻撃を受け続けたら自分が不利になると判断し、アリス様との距離を詰めるために動く。
「あの炎は触れなければいいだけ」
虹色の鮮やかな魔力がシャルロッテが剣を振るうと同時に放たれる。放たれた魔力は棘を徹底的に粉砕した、その隙をシャルロッテはのがさない。一気にアリス様との距離を詰める。
「これを喰らえ」
お返しと言わんばかりにシャルロッテは神剣に魔力を纏わせ、アリス様目がけて上から振り下ろす。しかしアリス様は生み出した剣でそれを受け止めた。
「惜しい、残念でしたぁ」
アリス様の剣も炎を纏っており、その炎がシャルロッテを襲うが彼女は魔力でそれを打ち消しながら剣を振るう。
「ふっ!」
剣に加えて蹴りを混ぜた攻撃を繰り出すシャルロッテ。アリス様はその蹴りを受け止め炎でシャルロッテを焼こうをする。
「!? ちっ! 対策済みか!」
シャルロッテは足に魔力を纏わせて炎の影響を受けないようにしていた。
「それだけ見せられたら嫌でも対策が出来る」
「嫌な奴!」
勢いを殺さず、攻め続けるシャルロッテ。アリス様もあらゆる攻撃手段を用いてシャルロッテを殺そうとしていた。紫と虹色の乱舞が王都の暗い夜を彩り、凄まじい轟音が鳴り響く。
「はああああああああああああああああああああ!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
シャルロッテが魔力を纏わせた剣を横薙ぎに振るうと同時にアリス様も最大出力で炎を纏わせた剣をぶつけた。お互いの力が拮抗し、激しく火花を散らす。
「いい加減……くたばりなさい! 忌々しい守護者!」
アリス様の叫びと共にさらに紫炎が巻き起こり、シャルロッテを襲った。炎の直撃を受けた彼女は吹き飛ばされてしまう。爆発が起こり、二人は煙に包まれる。
「あはは! やっと死んだかしらね! 今のは防ぎようがないでしょう!」
煙の中から聞こえるアリス様の高笑い、視界は晴れると同時に見えたのは悠然と立っているアリス様と酷い火傷を負ったシャルロッテだった。
「あら、まだ死んではいなかったか。ならもう一撃くれてやるわ」
アリス様が止めを刺そうとした時、シャルロッテがなにかを呟く。
「第二の制限、解除。光剣展開」