勇者vs魔王②
赤と虹色が交差する。王都に轟音が鳴り響いた。
シャルロッテとアリス様の戦闘が始まった。二人はお互いに一歩も引かない攻防を繰り広げている。
シャルロッテが黒と黄金の美しい剣を振るう。その度に虹色の閃光が閃く。
あの虹色の魔力はシャルロッテ、性格にはノースフィールド家の者しか生み出すことが出来ない。なぜならすべての魔力の属性に適正がある彼らが魔力を集めた時に生まれる色があの虹色だからだ。彼女はそのエネルギーを単純に放つことで凄まじい火力を生み出している。
「ふふ、流石」
楽しそうに笑うアリス様、シャルロッテはそんなことを気にせず神剣を振るう。
「まだ幼かろうとノースフィールドの地を引いているだけはあるわね。私に食い下がってくるなんていい腕をしているわ」
「褒めてくれてありがとう。一応素直に受け取る」
「でも」
にやりとアリス様が笑う。
「私もここで負けるわけには行かないの。自分の目的を果たすためにね!」
渦が無数にアリス様の周りに現れる。その渦からは血の槍が大量に放たれた。
「ふっ!!」
迫りくる槍の雨をシャルロッテは神剣を振るってすべて叩き落とす。
「こんな程度の攻撃は通用しない」
悠々と攻撃を凌いだシャルロッテは絶対の自信を滲ませてアリス様に向かって宣言する。
「ああ、なんて傲慢なやつ。いいわ、そんな態度を2度ととれないようにしてあげる!」
攻撃の手を緩める気配がない。アリス様はシャルロッテの周囲を囲むように渦を生み出し、そこから血の棘を伸ばした。
「串刺しになりなさい!」
全方位から迫る攻撃、シャルロッテに逃げ場はない。
「こんな程度なの?」
シャルロッテの周りに魔力が渦を巻く。やがて彼女を中心に魔力が解き放たれ、血の棘は跡形もなく消し飛ばされてしまった。
「こんな攻撃では私は殺せない」
「あはは、やっぱりこんな程度じゃ無理よね。ええ、分かっていたわよ」
今までの結果にアリス様は驚いていない。むしろ今までの攻撃くらい凌いでもらわないと困ると思ってさえいそうだった。
「じゃあ、次を見せてあげるわ」
アリス様の周りに紫色の炎が発生する。それを見たシャルロッテの目が見開かれた。
「その炎は……! まさかあの邪竜も取り込んだの?」
「ええ、凄く大変だったけどね。クレイが頑張ってくれたわ。この炎を味わうといい!」
アリス様から紫色の炎がシャルロッテ目がけて放たれる。シャルロッテは神剣を横薙ぎに払い、集めた魔力を放った。
ぶつかった炎と光は拮抗し、爆発する、凄まじい爆風が吹き荒れあらゆるものが吹き飛ばされた。
「……っ!?」
爆発でなにも見えなかったけれどやがて視界が回復する。アリス様もシャルロッテも二人ともまだ立っていた。
「まだまだやれるわよね? 大公様」
「もちろん、こんなことじゃ止まらない」
挑発するアリス様にシャルロッテも同じように挑発で返した。彼女は神剣を構え、なにかを呟いた。
「第一段階の制限、解除」