王都炎上⑤
アーシャを見たアリス様がさっきより殺気を増して襲いかかってくる。
(前にアーシャとアリス様が会った時があった時、殺気のようなものを感じたけどあれは間違いじゃなかったみたいだね……!)
アリス様はどうやらアーシャが気に入らないらしい。もう敵意を隠す気もないようだ。
アリス様はなにもない空間に血の色をした無数の槍のようなものを生み出しアーシャに放つ。しかしアーシャもそんな程度でやられるような人間じゃない、光属性の魔力を操ってすべて迎撃してしまう。
「はあ!」
アリス様の攻撃を防いだアーシャはそのまま彼女へ突撃、至近距離から攻撃を加えてアリス様を吹き飛ばす。
「っ……!」
吹き飛ばされて起き上がったアリス様は憎しみの籠もった視線をアーシャに向ける。
(……!? 傷を負ってる……?)
アーシャの攻撃を防いだ右手が灼けたような傷を負っている。僕が攻撃した時はそんな後がつかなかったのに。
(まさか……体が魔族に近い作りになっているのか……?)
クレイはアリス様を転生させる際に吸血鬼の力を取り込んだようだった。だから魔族に対して効果のある光属性の攻撃が効いたのかもしれない。
「いずれにしても……アリス様を動けなくするのは今……!」
僕はアーシャが作ったアリス様の隙を逃さないように雷剣を生み出し、それを放つ。しかし、それは黒い渦に飲まれて消えた、闇の魔力に喰われたのだ。
「クレイ……!」
「言ったはずだ、俺も相手だと」
僕はかつての親友を睨みつける。アリス様に追い打ちをかけようとしたらクレイが邪魔をしてくるのは非常に厄介だった。
「アリス様に手は出させない、もし話を聞かないならお前をここで倒して連れていく」
「捕まってやる気なんてないよ!」
二人を倒して話を聞かせてもらうのは僕のほうなんだからね!
風の魔力で生み出した刃をクレイに叩きつける。クレイはその攻撃をかわし、こちらに接近、蹴りを叩き込んできた。僕は吹き飛ばされてアーシャと距離が出来てしまう
「こんなもので僕が怯むと思ったのか!」
蹴りは入ったものの防いだため、大した傷は負っていない。しかしアーシャとアリス様から距離が出来てしまったことが僕を苛立たせた。クレイは吹き飛ばした僕に追い付き、行く手を阻む。
「どいて!」
「どくと思うか? アリス様の邪魔はさせん」
僕とクレイはそのまま接近し、戦闘に入る。彼も近接戦闘は弱くはないけど僕には及ばない。彼が放つ足蹴りをなんなく防ぎ、反撃に雷の魔力を放った。
が、それはクレイの目の前に発生した黒い渦に飲まれて消える。彼が操る闇の魔力の性質は厄介だった。
「……っ! 邪魔をしないで……!」
僕は怯まず蹴りを放つ。クレイはそれを防ぎ、負けじと反撃してきた。一進一退の攻防が続いたが僕の一撃がクレイを捉え、吹き飛ばす。
「ちっ……!」
「悪いけど君の相手をしている暇はないんだ。ごめんよ」
「待て……!」
足止めを喰らってしまった、早くリアナの元へ行かないと。
クレイの呼び止める声も聞かず、僕は全速力でアーシャの元へと駆けだした。