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王都炎上⑤

「はあああああああああああああああ!」


 僕は地を蹴ってアリス様へと肉薄する。アリス様は不敵な笑みを浮かべながら僕が向かってくるのを待っていた。


「ふふ、あなたと戦うことになるなんて前世からじゃ考えらレなかったわね」


 感慨深そうに呟くアリス様。彼女は僕が振り下ろした雷剣をその手で受け止めた。


「!?」


「こんなものじゃないでしょう? 私はもっとあなたと楽しみたいわ。私の騎士として見せた力をもっと見せて」


「……っ!!」


 分かっている、アリス様の強さくらい。かつて仕えていた人間なのだから。全力でかからないとこちらが負けるだろう。

 僕は一旦アリス様から距離をとって体勢を立て直す。そのまま空中に雷剣を5本生み出してそれをアリス様目がけて打ち出した。


「血よ」


 アリス様の声が響き渡る。彼女の足下に赤黒いなにかが染みのように広がっていく。その染みから剣の形をしたものが放たれ、僕が生み出したものとぶつかった。ぶつかった剣同士は跡形もなく崩れていく。

「今の力は……!」


 あの力には覚えがある。あれは……。


「その力は……」


「気づいた? そう、かつて私達が倒した吸血鬼の王の力よ」


 今よりも魔族が遙かに強かった時代、その魔族達の中でも強かったのが吸血鬼達をまとめていた奴がいた。僕達が苦労して倒したけれど今、アリス様が使った力はそいつが使っていた力とそっくりだ。


「なぜあなたがその力を使えるのですか……!」


「ふふ、クレイが新しい私のためにこの力を与えてくれたの!! 素敵でしょ!!」


 アリス様は血だまりから剣を作り、僕へと突進してくる。振り下ろされた血の剣をかわして雷剣をアリス様の胴体目がけて横薙ぎに振るう。

 が、その雷剣はアリス様に直撃することはない。雷剣は赤黒いなにかに阻まれたからだ。


「ぐっ……これなら!」


 風の魔力を操って、刃を生み出し叩きつけるもそのすべてが叩き落とされる。身体強化を行って攻撃の勢いを増していくがそれもすべて防がれてしまった。


「ふふふ……さっきの王女様も頑張ってたけどあなたには及ばないわね。やっぱりあなたは強いわ、グレン。でも、今の私の相手は厳しいわね」


 アリス様の言葉と共に彼女の周囲に無数の赤黒い棘のようなものが生まれ、それが一斉に僕に襲いかかってくる。向かってくるすべてをかわそうとしたが数があまりにも多く、少し傷を負ってしまった。


(全部はかわすことができない……なら!)


 僕は雷属性の魔力を集めて向かってくる棘に向けて放つ。放たれた魔力は迫る禍々しい棘とすべて粉砕していった。


「あはは! 隙あり!」


「!?」


(早い……!!)


 僕が棘の対処に時間をとられている間、アリス様は僕の側まで近づいていた。彼女が放った蹴りを防いだものの僕はそのまま吹き飛ばされてしまう。


「ぐっ……」


「いいのか? アリス様だけに気をとられて。俺もいるんだぞ」


 声が響くと共に僕の側に黒い渦が形成される。そこからクレイが出てきた。

 彼の体から闇属性の魔力があふれ出す。影のようなものが僕を縛り付け身動きがとれなくなった。


「こんなものすぐに解いて……!」


「お前ならそれが出来るだろう。だが言ったはずだ、二対一だと」


「そうよ、私のことを忘れないで」


「!?」


 動きを止められた僕に先程の棘が襲いかかる。僕の体中にずぶりと鋭い凶器が入り込んできた、痛みが僕の全身を駆け巡る。


「あ……ぐっ……!」


「うふふ、いくらあなたでもこの状況じゃ積んでるわ」


 アリス様が軽く手を振るうと僕の体に突き刺さった棘が動き、彼女の前まで僕の体を持っていく。まるで王様に貢ぎ物を捧げるような動きだった。

 アリス様は僕が目の前に来たのを確認すると、右手に血の剣を生み出してにやりと笑い――


「耐えれるでしょう、あなたなら」


 その剣を僕のお腹へと突き刺した。


「……!?」


「あはは! まだまだ!」


 アリス様は剣を引き抜くと再び僕の体へと突き刺してくる。今度は足だ。


「っ……!」


「あは、さすがグレン。頑張るわね、やっぱりあなたは素敵よ。どれだけ耐えられるかしら」


 痛めつけることを楽しむように僕を痛めつけてくるアリス様、自分の知っている彼女とあまりに違っていた。


「……なにが……」


「?」


「なにがあなたにあったんですか? どうしてそんなふうになってしまったのですか?」


 痛みに耐えながら僕はアリス様に問いかける。なぜという疑問だけが僕の心を支配していた。


「それを聞きたいなら私と一緒に来てくれる?」


「……それは……」


「ならあなたが出来るって言うまで私はいたぶることをやめないわ」


 僕から剣を抜き、再び突き刺そうとするアリス様。


「ラナから離れてください!」


 しかしそこに誰かが割って入る、アーシャだった。彼女は光属性の魔力をアリス様に向かって叩きつけて吹き飛ばす。僕に刺さっていた棘もその拍子に消えた。


「アーシャ……」


「ラナ……! 酷い傷……すぐに治します」


 アーシャは僕へと駆け寄ってくると僕に手をかざした。光属性の魔力の力で傷が塞がっていく。


「大丈夫ですか? 酷い傷でしたけど」


「うん、平気だよ」


 僕はアーシャに感謝の言葉を述べる。しかし感慨に浸っている暇などなかった。吹き飛ばされたアリス様が起き上がってきたからだ。


「アーシャ・ライアム……」


 アリス様はアーシャの名前を呟くと彼女を睨みつける。その瞳には本気の殺意が宿っていた。


「グレンのことを縛り付けているのはあなたね。本当に忌々しい……まあ、いいわ、手間が省けたと思いましょう。ここであなたを殺せばグレンも私に着いてくるでしょうし……ここで殺してしまいましょう」


 吸血鬼の力を取り込み怪物となったアリス様が再び僕達へ襲いかかって来た。









 

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