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7◆3回目の理由

懇談室は何部屋かあり、いつでも借りることができる。生徒の家族が学園にやって来て話すときなどに使うのだ。部屋を使用すると言えばちゃんと人数分のお茶も用意される。そんなわけでマリウスとセシリアの前に香り高いお茶が出され、二人で向き合っている。


「今回は初めまして、セシリア」

「やっぱりあなたが黒幕でしたか、マリウス殿下」


そう言って冷たい視線を投げつけてもマリウスは全く動じない。

こんな呪いを掛けた極悪非道の人間だ、ちょっとやそっとで心が動くはずもないとセシリアは内心憎々しく思うし、顔にも出した。それでもマリウスは飄々と笑っている。


「私、これで人生3回目ですの。一体どういうおつもりでこんな呪いを掛けたのでしょうか?」

「呪い?これは王家に伝わる秘法で呪いなんて禍々しいものじゃないよ。現に君は人生のやり直しができているじゃないか」

「それが本人の望みならば素晴らしいのかもしれませんけども。私は1度目も2度目も意向を確認された覚えはございませんわ」

「そうだね、君に確認は取っていない」


笑顔で答えるマリウスへの苛立ちをセシリアはやはり隠すことはない。感情的にならないように躾けられた貴族の娘であるが、自分をこんな目に遭わせた相手に遜ってやる必要はないと、感情が駄々洩れである。

二度死んでいるので怖いものは無い。王子に向かって悪しざまにクレームを付けようと口を開いたが、それより先にマリウスが言葉を発した。


「君は本当によくやったよ。手助けができなくて申し訳なかった」

「は?」


一体何のことを言われているのか。セシリアはさっぱり見当がつかないでいた。


「何のことでしょうか…」

「聖女の皮を被った悪魔をあそこまで追い詰めたことさ。おかげでようやくその後ろにいる奴が尻尾を出した。全てはデリア公爵…父上の弟が仕組んでいたのが解ったよ」

「は?」


デリア公爵がなぜよその公爵家の娘に冤罪を掛けて始末する必要があるのだ。もし王子の婚約者に自分の娘を立てたいなら他にやりようがいくらでもあるだろう。


「デリア公爵の狙いは、あの白い悪魔を王家に入れることだ。類まれなる力と権力を持ったあの女がこの国を滅茶苦茶にするのを見るために」

「…王の弟が、なぜ…」

「王の弟だから、じゃない?生まれた順番の違いだけでこうも持ち物が違うことに今も納得できていないとか。まあ本人に聞いたわけじゃないから憶測だけど」


今の王が王になるまではそれは大変だったと聞いたことがある。王位争いはそれは苛烈で、それゆえに現王は妃と側室はお互いに協力関係のある家から娶り、兄弟も最低限の二人だけしか作らなかった。


「それと、私が二度も生き返っているのと何の関係があるのでしょう?」

「さて、ここで訂正しておこう。生き返っているのではなく、記憶をそのままに時間を戻っているだけだ。他の者も戻った時の時点まで記憶がリセットされているというだけで、同じ事が起きている」

「それが王家に伝わる術でしょうか」

「そういうこと」


にこりとマリウスが口元で笑う。術を使ったマリウスは間違いなく記憶が残っているのだろう。


「ではマリウス殿下も前の記憶もあるのですね。どうして私の記憶はリセットしていないのですか?」

「それは君に見所があるからだ。過去二回の記憶がある君なら今回の僕が以前と違うところがわかるだろう?」

「はい。あなたはアレス殿下の兄のはずでは」


真っ直ぐに見据えてそう言うと、マリウスは思った通りの回答を得られたと満足げに微笑みで返す。


「そう。この秘法は使い手の年齢を一つ食う。今回が7回目で、とうとうアレスの弟になってしまった」

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