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17◆新しい関係図

教科書焼却の犯人が挙がったことと、メリーナの側にアレスとその側近候補がやたら一緒にいることで、再びメリーナブームが到来している。

メリーナは聖女の力がある以前に美少女なので、変なやっかみがなければ普通にモテモテだっただろう。それが今、王子たちと一緒にいるのも相まって「王子が認めるほどの聖女」「レベルの高い人たちと一緒にいる女子」などと妙な付加価値が付き人気に拍車をかけている。


まとめ役のアレスとその側近候補たちがメリーナと一緒にいることが多いので、仲良しAクラスも変化してきている。今では大所帯でみんなが仲良しというよりも、色んなグループができつつある。しかし一度纏まったクラスだけあって、ここぞと言う時には団結できるのでこれで良いかもしれない。


「王子二人とその側近候補、そしてメリーナ、私…。これはそろそろ私が邪魔になる頃合いじゃないかしら」


今の相関関係を俯瞰し、セシリアは考える。

セシリアがどこに所属しているかと言えば、そんなつもりはないのだけど二人の王子と共に居ることが多い気がする。取り巻きの皆さんは二年生になってからそれぞれ自分のやることもできて、いつも取り巻いてくれるわけではないのだ。

二人の王子とその側近候補、その輪の中にいる女子生徒はセシリアとメリーナ。イケメンにちやほやされるのは自分だけでいいという理由で排除されるのではとセシリアは危惧している。

メリーナブームに乗っている生徒たちも、白い物でもメリーナが黒と言えば黒と言いそうで恐ろしい。


そんなことを考えながらセシリアは一人校舎から出る。今日は取り巻きの皆さんと放課後を楽しもうと思ったが、今日の午後は予定があるとのことだ。暇人はセシリアだけなのである。


「セシリア様~!」


遠くから大声で自分を呼ぶ声がする。学園内で大声で名を呼ぶ者の心当たりは一人しかいない。平民上がりのメリーナだ。


「メリーナ様、大声を出さずとも私はここにおりましてよ」

「あっ気付かないで行っちゃうかと思って」


セシリアの元へ走ってやって来たメリーナは息を切らせて笑顔で言う。


「セシリア様、今日新しい教科書が来ました!長らくお借りしてありがとうございました!」


そう言ってメリーナは大きな麻のバッグを差し出した。


「あら、よかったですわ。新しい教科書で心機一転ね」


渡されたバッグを受け取るとずっしりと重い。どうやらセシリアに借りていた教科書類を全て入れているらしい。

教会で手伝いをしていたというメリーナは事も無げに片手で持っていたが、力仕事などしないセシリアは腕がちぎれそうだ。

だけどセシリアは貴族、笑顔を絶やさない。


「…もし次回があれば、部屋に届けさせてくれるとありがたいわ」


笑顔のまま、つい言ってしまう。

嫌味を言ったと誰に泣きつかれようと構わない。重い。

そうするとメリーナの顔色は青くなり、セシリアから再び教科書の入ったバッグを奪う。


「すみません!私ったら全く気が利かなくて!セシリア様のお部屋までお持ちします!」


冗談じゃない、メリーナを荷物持ちになんてしたらどんなトラブルになるか解らない。

それなら腕がちぎれた方がマシだと、セシリアはバッグを渡してもらおうとした瞬間、背後から声が掛かった。


「か弱いご令嬢を荷物持ちにするは酷なんじゃないか?」


やはりだ。来るんじゃないかと思っていた。

誤解を与えるタイミングで誰かに見られ、自分が悪者になる切っ掛けができるんじゃないかと思っていたセシリアは、思った通りの展開にめまいを覚える。

そしてそんな最悪のタイミングに現れるのは…


「アレス殿下、ご機嫌よう」


やはりこの人なのだ。


「貸せ、俺が持っていく」

「あ、あのっ私が持って行きますのでっ」

「まあ、逞しくいらっしゃるのですね。私の気が利かないばっかりに申し訳ございません。よろしくお願いしますわ」


本当は学園付きの用務員でも呼んできてくれたら良かったのだが、もう誤解は与えたあとなので、荷物を運んでくれるなら誰でもいい。

メリーナの性格は前回までとは随分違うようだけど、結局同じような展開に進んでいくのだなとセシリアは思う。それ故にマリウスも苦労しているのだろう。


「こういう時は俺を頼れ」

「ですって、メリーナ様」

「あのっ本当に私は平気なんです…っ」


しゅんと下を向いてしまったメリーナだが、可哀そうぶって見せるにはイマイチだとセシリアは思う。恐らく今回のメリーナはこういうことがあまり上手くないのであろう。

二年の女子寮までアレス王子に持ってもらって、あとは寮の使用人に運んでもらう。今日はもう予定もないので、このまま寮で勉強でもしようとここで別れた。

寮に入っていくセシリアを見送りながら、アレスとメリーナは少しだけため息を吐いた。

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