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1◆死に戻った悪役令嬢

セシリア・カーン公爵令嬢はベッドに横たわったまま天井を見上げていた。布団から両手を出して確認すると小さくてぷくぷくとした子供の手だ。


(また戻ってきてしまったというの…)


顔の前まで持って来た小さな手をパタリと落とし、そのままため息を吐く。死んだと思ったら目が覚めて子供になっている、実はこれで二回目だ。


「…一体何の呪いよ」


きっと、たぶん、呪いに違いない。

だってそうでなくては説明が付かない。やりたくもない人生をこれで三回やらされることになるのだから。


「セシリア様、おはようございます」


そんなことを考えていると、メイドが朝の身支度のために部屋にやって来た。


「おはよう」

「今日は待ちに待った王妃様のお茶会の日ですね」

「そうね」


嬉しそうな返事が来ると思っていたメイドは、あっさりした言葉にはてと思う。

同じことが3回目となるのだから楽しみも何もない。このお茶会でアレス王子の婚約者となるのだ。

両親からはよく言うことを聞いていい子でいなさいと言われ、言われるままにアレス王子と婚約し、真面目に王子妃教育を受け、学園でも皆の手本となるような淑女として過ごした結果、あらぬ冤罪を掛けられ婚約破棄をされた上に、罪人として毒をあおって死んだのが一回目。

二回目は、普通はそうならないようにトラブルを回避して生きようとするかもしれないが、一回目の人生でセシリアの性格は矯正不可能なくらいに捻じ曲がっていた。

理不尽に理不尽を重ねられ、アレス王子どころか両親までもセシリアを罪人と信じ、酷い言葉でなじり見捨てたのだ。

公爵家の娘へせめてもの情けと毒杯を渡され、セシリアは世の中を恨んで恨んで恨み切って一気に飲み干した。そのテンションのまま二回目を始めてしまったものだから、トラブル回避どころか、冤罪で掛けられた罪以上のことをやって周囲を恐怖のどん底に突き落としてやろうと思い、実際にそれは上手く行った。

冤罪を仕組んだ可憐な子爵令嬢も、最後の断罪の時は一回目の時の勝ち誇った笑みではなく、本気でセシリアに恐れ慄いていた。


「…あれはよかった」

「え、何がでございますか?」


髪結いをしていたメイドに独り言が聞こえてしまった。


「ううん、この髪型いいなって」

「まあ、ありがとうございます」


メイドに適当に答え、再びセシリアは前回のおさらいをする。


-アレス王子も両親もそりゃあすごい剣幕で、それこそ一回目の比じゃないほど私を糾弾したけど、一回目の時より気持ちは軽やかだったわ。自分のした悪事を責められているんだからそれは至極真っ当なことだもの。同じ糾弾でも「理不尽」より「因果応報」の方がずっといいと妙に晴れやかな気分だった。

反省が見られないと言われて毒杯じゃなくギロチン刑になったけど、最後の最後まで高笑いしてみせたのできっと見た人はトラウマレベルだっただろう。やったね。


身支度をされながらセシリアは二回目の人生を「悪くない」と評価した。

そして今、三回目。一回目の時の恨みを晴らす為に二回目を全力でやってしまって、今はもうそんなテンションもない。あれはあれでパワーがいるので、やれと言われても無理だ。通常の学業や王子妃教育にプラスして悪巧みをしていて、時間も体力もギリギリの状態で常に疲労困憊であった。別に悪巧みが好きなわけではないので楽しさも無かったが、恨み晴らさでおくべきか精神でやってのけた。

復讐は何も生まないという言葉がある。たしかに生産性は皆無だが「やりきった」という達成感は何物にも代えがたいと思うので、まあ迷ったらやってみてもいいんじゃないかとセシリアは思う。


メイドに飾られたセシリアはお人形のように可愛らしい。

そうして着飾ったセシリアは父母に連れられ王城へ向かった。


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