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REGULATION(レギュレーション)  作者: 凸凹天神
19/30

【REGULATION】《19話》「ワームホール」

「御上、お前…」

「そ、そうね…。御上君の言う通り光の速度、すなわち〝光速〟を超える事は不可能。ま、これに関してはある種、この宇宙の絶対的ルールみたいな物だから仕方がないわ。それより、ワームホールの存在を認知していたのには驚いたわ…。確かに私達は、ワームホールを通ってこの星までやって来たの。ただ、厳密に言えばワームホールを〝作って〟来た訳じゃなくて〝そこにあった〟から利用しているだけなの」

「え、じゃあルティナさん達でもワームホールは作れないんすか?」

「えぇ。今の所は…。化学者達による研究は続いているものの、未だ満足のいく成果は出せていないのが現状だわ」

「おいおいおいおい…。ちょっと待ってくれ。何ニ人で異次元の話をしてんだよ!全くついて行けねぇじゃねーか!」

俺は突然始まったニ人の会話に入る事が出来ず、まさに蚊帳の外だった。

「あ、え?おっちゃん宇宙の事、全然知らない感じ?ごめんごめん。おっちゃん、ネカフェでも宇宙人について調べてたし、なんなら宇宙人?と一緒に住んでるから、てっきり宇宙についてある程度は知識あるかと思ってたわ」

「いや、だからコイツと会ったのは一昨日だし、この家に勝手にやって来たのは、昨日なんだよ」

「なるほど。それで困惑したおっちゃんは、宇宙人について調べてたって訳か…」

「ま、そう言う事だな。…つか御上、お前!何でそんなに詳しいんだ!?あん時、俺が調べてたの馬鹿にしてただろ!」

「ははっ。そうだった、あれはマジでごめん。実は俺、元々小さい頃から、宇宙にすっげぇ興味あったんだ。でも少しずつ大きくなるに連れて、周りと話が合わなくなってきてさ、それで俺の中では封印してたんだ」

「ふーん」

「んで、そんな時、いきなり見ない顔のおっちゃんが現れて、宇宙人について調べてたから気になってたって訳」

「気になってたなら普通に話しかけて来いよな。俺だっから良かったけど、さっきみたいに最近はイカれた大人も多いから気をつけろよ」

「だな」

「ところでさっき言ってた〝ワームホール〟ってなんなんだ?」

俺の質問に対し、御上は水を得た魚の如く、目を見開き、前のめりになる。

「ワームホールって…」

「ワームホールは…」

ルティナと御上の声が揃う。

「ごめんなさい…いいわ。御上君、説明してみて」

「はい!あ…じゃあ、おっちゃん紙とペンとかある?」

「紙とペン?」

俺はテレビ台の下から、広告の裏紙とボールペンを取り出し、御上に渡した。

「ほい」

「サンキュー。じゃちょっと待ってな」

そう言って、御上は紙に何かを描き始めた。

「これでよしっと」

御上はこちら紙を見せた。

その紙には、ニつの黒い丸が描かれていた。

「例えば、こっちの黒い丸の所に地球があるとして、こっちの黒い丸の所をルティナさん達がいる星とするじゃん?んで、この間の距離は大凡ニ千光年…。」

「わりぃ。その、ニ千光年って一体どれくらいなんだ?」

「えっとね…距離にするとだろ…ちょっと待ってな…」

御上の先程までの勢いは失速し、突然オロオロとし始めた。

それを見たルティナが口を開く。

「光年。それは光が一年間掛けて進む距離。ここは分かるわよね?」

「お、おう…何となく…」

「御上君、この星で一般的な速い乗り物は何?」

「あ、はい!えっと…新幹線とかかな?」

「その新幹線とやらは時速どのくらいなのかしら?」

「時速は…三百キロとかそのくらいだったはずっす!」

「分かったわ。ありがとう」

ルティナは顔パックを付けた間抜けな顔で、語り始めた。

「一光年を貴方の為に、分かりやすくキロメートルに換算すると、光の速度は時速三十万キロメートル、掛ける事一年間…約九兆五千億キロメートル…」

「九兆!?五千億キロメートル!!?」

「そう。だからニ千光年は、単純に九兆五千億キロメートルに二千を掛けた数学…一京九千兆キロメートルよ」

「いっけい…きゅうせんちょう…」

想像も出来ない程の単位の登場に、頭が付いて来ない…。

しかし、ルティナはそんな俺を置き去りにし、お構いなしと話を続けた。

「貴方でも理解出来る様に、もっと分かりやすく言うのであれば、貴方達にとって速い乗り物、しんかんせん?とやらで向かうとすると、時速三百キロメートルと仮定すれば、一年間で進む距離は大凡二百六十三万キロメートル…」

目眩がして来た。

「一京九千兆キロメートル割る事の一年間で二百六十三万キロメートルをすれば…しんかんせんで私達の星まで辿り着くには、約七十二億年掛かる事になるわ」

「……」

俺は白目向いた。

「七十二億年がイメージ出来ないのであれば…分かったわ。時間換算してあげる。七十二億年を時間に直すと…」

「おっちゃん…!おっちゃん…!ルティナさんもう辞めてあげて!おっちゃん息してない!死んでるよ!」


・・・・・・


「つまり!話を戻すとワームホールって言うのは、この途方も無い程離れた場所にある黒い点と点を、一瞬で移動する事の出来る技術なんだ」

「一瞬で?瞬間移動でもするのか?」

「ちちちっ」

御上は人差し指を自慢げに振った。

「ワームホールは漫画みたいな非現実的な代物じゃないよ。見ててな。この点と点をただ進むだけだったら、さっきルティナさんが説明してくれた通り、桁違いの時間がかかる事になる。じゃあどおするか?」

そう言って御上は黒い点の描かれた紙を、半分に折り曲げ始めた。

「こうするんだ」

半分に折り曲げた紙に、ボールペンを突き刺した。

「ほらね。一瞬で移動出来た」

御上は突き刺したボールペンを抜き、折り曲げた紙を広げて見せた。

確かにボールペン一突きで、二つの黒い点に穴が空いていた。

「んー…何となく理解した様な、してない様な…。要は空間を折り曲げて、最短ルートを作ってそこを通るって事だよな?理屈は分かるけど、そんな事が現実問題出来るのか?」

「ルティナさんがここに居る事が何よりの証拠だよ。ま、さっきは一瞬でって言ったけど、厳密に言えば一瞬で移動出来るのかどうかは分かんないけどな」

「凄い…。ワームホールの説明も、ほぼほぼ正しいわ。御上君、何処でこんな知識学んだの?」

「あ、いや、昔本で読んだだけっす。それで本当にこんなこと出来たら、すげー面白いだろうなぁって思って覚えてたんすよ」

ルティナは顎に手を添えた。

「つまり、この星にもワームホールの存在を認知している者が居るという事よね。この星はレベルIにも満たないと思っていたけど、どうやら私の測り間違えかも知れないわね…」

ようやく、会話に一区切りが付いた。

俺は席を立ち台所へ向かう。

「お前ら何か飲んだり食べたりするか?…」

「ところでルティナさん!」

「ど、どうしたの?」

御上は俺の言葉が耳に届いていない様だ。

前のめりな御上少年に、流石のルティナも困惑気味の様子だ。

何はともあれ、御上を家に連れて来て正解だった。

初めて御上に会った時は顔が、と言うか目が明らかに曇っていた。あれは間違いなく何かを抱えた目…。少なくとも、高校生の目では無かった。

特にアイツには、恩も義理もへったくれも無いが不思議とほっとけず、こうして今に至ると言うわけだ。とは言え、楽しそうで何よりだ。

俺は少し離れた台所からニ人を眺める。


「さっきのレベルIがどうとかって話は何なんすか!?」

「あ、あれはね、この宇宙には文明のレベル分けがされていてね…」


「ロズウェル事件って知ってます!?」

「え、知らない。何それ?」


「何でこの星に来たんすか!?」

「ふふーん♪その質問を待っていたわ。それはね…」


「普段は何食べてるんすか!?」

「え、虫…」

「──虫!!??」

「──虫!!??」

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