ルナティック・キャンディ
さて、二部のタイトル章、
『ルナティック・キャンディ』の始まりでございます。
タイトル章として相応しい内容になるよう、
気合を入れて書いたつもりです!
是非、お楽しみください。
きらきら光る、綺麗な宝石たちに、とっても甘いキャンディ。
イエロー、ゴールド、ブルー、グレー。
最近のお気に入りはエメラルドグリーンだった。
でも、今はもっと欲しいものがある。
ブラックも、カーマインも、まだ持ってない。
今直ぐにでも欲しいけれど、もう少しだけ我慢、我慢。
だって、私は知っているから。
本当の本当に我慢できなくなるまで待ったほうが、もっといっぱい輝いて見えることを。
綺麗なものは大好きだ。
混じりけの無い、純粋で、単純なものほど美しくて、そしてとっても丈夫。
簡単には壊れないから、ずっとそばに置いておける。
だから、後もう少し。
今はまだ、中途半端な輝きだけれど、
もう直ぐ元の姿に戻る。
不純物の無い、黒く澄んだブラックダイヤモンド。
欲しい。
欲しい、欲しい。
大丈夫、焦らなくても大丈夫。
同じ、だから。
きっと喜んでその輝きを曝け出してくれるはずだ。
だけど…。
もしかすると、もう片方が邪魔をするかもしれない。
ガーネット。
綺麗だけれど、どこかそそらない。あくまでも本命はブラックダイヤ。
あれは濁っているから。
複雑で、欺瞞に満ちていて、それなのに純なるもののそばにいようとする。
朱に交われば、赤くなる。
濁った水が、純水を穢すように。
黒い絵の具が、他の色の全てを呑み込んで黒に帰るように。
きっと、いつかあの輝きを曇らせてしまう。
あくまでついでのガーネット。
邪魔するのなら、叩き割るだけ。
私は綺麗なものを愛でるのも好きだけど、それよりも壊すことのほうがもっと好き。
だって、そうすればその美しさは永遠に私だけの手元に残るから。
本当に綺麗なものは、思い出の中でだってキラキラ光る。一等星みたいに。
でも、もっと好きなことがある。
それは――。
唐突に、遠くのほうで火柱が上がった。地下から噴き出たジュースみたいだ。
もう直ぐだ。
お楽しみはいよいよ目と鼻の先だ。
退屈しのぎに他の宝石で遊んでみたけれど、やっぱり不純物だらけで汚いだけだ。
私を満足させられるのは、やっぱり単純で、プリミリティブな光を持つ宝石だけ。
思わず、笑いが零れる。
こんな汚いものに触れるよりも、あのブラックダイヤに触れているところを妄想していよう。
あの白い表面に舌を這わせているところを想像する。
しかし、どんな色を返してくれるか分からないため、結局直ぐにその妄想は霧散する。
小さな桜色の唇から、はぁ、と熱っぽい吐息が零れだす。
待っててね、私も待っているから。
光輝く、ブラックダイヤ。
後書きまで目を通していただいている方々、いつもお世話様です。
拙い作品をご覧になって頂いてありがとうございます。
さらにご意見・ご感想、ブックマークや評価をして頂けている方、
いっそうの感謝を申し上げます!
今後とも、よろしくお願い致します!




