科学少女の忍者伝
小説家になろうラジオの企画
第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞
に向けた作品です。
以前投稿した短編作品「科学少女が教える、最強忍者の育て方」を
再構成した作品です。
少しでもいいなあと思った方、感想お待ちしてます。
少女の名は千代目 量子。十五歳にして飛び級で国立大学に入学した天才科学者だ。
タイムマシンの起動実験に失敗し、量子は爆発に巻き込まれ――姿を消した。
「天女様が降臨なされたぞぉ――!」
「うみゃ⁉」
目を覚ますと、着物姿の人々に取り囲まれていた。量子は戦国時代にタイムスリップしていたのだ。
そこは忍者の一族「鬼環忍軍」の里。
「我々、日照りに悩まされ雨ごいをしていたところに、あなた様が現れたのです。天女様、どうか我々をお助け下さい」
「あたしが天女⁉ いやいや買い被り過ぎでしょ」
量子は最初は戸惑うも、里を救うためある実験を試みる。不完全燃焼の焚き火で煙を空に飛ばし、人工的に雨雲を作り出す。科学の力で雨を降らした。
里での生活に慣れた量子に耳を疑う事態が……。
「大変だ! 鉱山が大名軍に占拠された!」
この地の集落では製鉄が盛んで、鉱山から取れる鉄などの資源が不可欠。鬼環の里でも忍者の生業の傍ら、鍛冶を営み生計を立てていた。
ある大名軍が資源を独占すべく、銃を片手に鉱山に立て籠った。
そこで量子は里の者とある一計を企てる。
「資源はみんなの物よ、譲り合う気がないなら貴方達には出て行ってもらうわ!」
「これから戦が始まるのだ。有事に民が武士に差し出すの当然であろう!」
量子の説得に大名は耳を貸さなかった。
「仕方ない。やるわよ、みんな」
「御意!」
鬼環の忍びは量子を取り囲み、両手を組んで呪文を唱える。すると空には雨雲が立ち込める。
次の瞬間、量子が叫ぶ。
「忍法・雷遁――万雷の陣!」
『ドドオォ――――ン‼』
大名軍達と対峙した場所の更に上、鉱山の山頂に雷が落ちる。
先日と同じ方法で雨雲を呼び、ベンジャミン・フランクリンの発明した避雷針の技術の応用。山頂に鉄の棒を設置して落雷を呼び寄せた。
科学を知らない時代の人間なら妖術の類に見えたことだろう。
「この地から手を引きなさい。さもないと貴方の領地に雷が降り注ぐわよ‼」
「ひいい! 撤退っ、撤退だ‼」
その後も量子は科学で数々の忍術を現実のものにしていき、その噂を聞きつけた徳川家康が鬼環忍軍との協定を結ぶため里に使者を仕向ける。
はたして量子は、科学は戦国乱世に何をもたらすのか……。