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ショートショート7月~

じたばた

作者: たかさば

ザッ・キィイイーーーーン!!!


「ああー!!またしくったぁああああ!!!」


僕の鎌は、ターゲットをわずかにかすり、地面に突き刺さった。

うぉおおお!!先端、曲がっちゃったよ!!!

コレではいつまで経っても鎌に自我が芽生えてくれないよぅ…ぐすん。


僕の足元では、魂のしっぽがじたばたしている。

くそう、忌々しいしっぽめ!!


…持ってくけどさあ!!!



僕は死神一年目。

研修を終えて、この四月に鎌をはじめて握った。

悪意にまみれたクソみたいな魂を刈るべく、ただいま人間界に初出張中な訳なんだけど。


…もうさ、マジでくじけそう。

全然、魂、刈れない。


めっちゃ真っ黒な奴がいてさ、キターって思って刈ろうとするんだけどさ、全然しとめる事ができない。

狙うも、刈り取れず、いつもいつも!しっぽ切られて、逃げられちゃう。


魂のしっぽを切り落とされちゃうとさ、悪意がね、切れたとこからこぼれ出しちゃうんだよ。


で、魂から悪意が出ちゃうもんだからさあ、すっごくうすーくなっちゃってさ。

しかもしっぽがなくなっちゃうってことは、魂が丸くなっちゃうんだよね。

人間性が変わっちゃう。…こうなると、お手上げだ。


魂が丸くなった人ってのは、僕たちの管轄外になっちゃうんだよ。


丸くなった魂は、天使が迎えに来て、審判されて、天国行きか地獄行きかを決められる。


悪魔ってのは、基本悪い人しか刈っちゃだめなんだ。


地獄に落ちた奴の、後悔や無念、恨みや怒りや…そういうのを食ってる僕たちなんだけど。

それはその…食い物ではあるけれども、贅沢品ではないって言うか。


悪魔なら一度は食べたい、贅沢品。それが、真っ黒な魂なんだ。

天使が迎えに来る前に刈り取って、食べる事が許されている、悪い奴の魂。


本当に悪に染まった奴の真っ黒い魂ってのはさ!

この上なく甘美で、もったりとしていて、それでいてこってりしてて!!

大昔に父さんに一口食べさせてもらったことがあるんだけどさ、本当に美味いんだよ。


僕がいつも食べてる、切れたしっぽなんかさ、ホントイガイガしててエグみがあって…うぐぐ。


まあ、ともかく。


…このおっさんは地獄行きだね。悪い事し放題だったみたいだから。

この後地獄に行って、後悔牧場か恨み畑で散々後悔し続けて恨み言ほざいて、悪魔たちに提供し続ける事になるんじゃないのかな。

後悔や恨みってのはさ、悪魔たちには欠かせないものであってね。

このところ自虐風味が人気なんだ。このおっさんは何味の感情を生み続けることになるのかな?


色々考えてるうちに、目の前の魂はもうすっかり丸くなった。

魂の持ち主のおっさんも、毒気が抜けてぼんやりしてる。


散々悪いことして悪意の塊みたいだった魂なのにさ。

僕がしっぽ切ったせいで悪意が抜けちゃってさ。

コレじゃ僕ら悪魔は、食べることができない。

誰だよ!こんなルール決めたのは!!


今度こそ、絶対食えると思ったのに!!

こうなったら後は、天使が魂迎えに来るのを待つしかなくなっちゃうんだよな…。


「はい、どうも!」


…ああ、ほら、すっかり顔なじみになった天使が来ちゃったじゃん。

クッソー、相変わらずイケメンだな。見あげんの地味に首が痛いんですけど!


「はは、またしっぽ切っちゃいましたか。ごちになります!!」

「うぐぐ…こっちは切りたくて切ってんじゃないやい!」


ちょっとだけ涙目になっちゃうのも、仕方ないことだと思う!!

睨みつける僕を、天使はニヤニヤ見下ろしながら。



ぽふ。ぽふ。



頭ぽんぽんしてきやがった!


「ッ!!!子供じゃないぞ!!」

「…君、向いてないんじゃないの、こっちに転職したら。俺が親切丁寧に面倒見てあげるよ?…俺専属にしてやるし。」


何なんだ!!色気たっぷりで僕を…僕を見るんじゃない!!頭から…その清廉な手を…どけろぉおお!!!!



パシィッ…!!



僕は大きな手の平を自分の手ではじき返してやった、やったぞっ!!


「すみませんね!僕BLは地雷なんですよ、ははは!!じゃ!!!」


ここにいると色々とやばそうだ!


僕は一目散で逃げ出し…あれは!!

公園のベンチの向こう側に!ちょー真っ黒の!!ド級のクッソきたねえ魂が!!


「いっただきぃいいいいい!!!」


僕は鎌を振り上げて!!!

勢いよく!!

魂めがけて振りおろすっ!!!



ガッ・キィイイーーーーン!!!



「は、はへっ?!」



僕の鎌は、魂を刈ったけれどもっ!!

振り下ろされた先に!!

ベンチがあってええええええ!!!!



ヒュルンヒュルン…!!!



鎌ッ!!鎌が折れちゃって!!!!



根元から折れた鎌ッ!!鎌が!!




ザンッ!!!!!



「ぎゃあああああああああああああ!!!!!」


ぼ、僕!!僕のたま、たま、魂いいいいいいい!!!!

足元に突き刺さった折れた鎌が!僕の魂に刺さってるぅぅぅぅ!


「あーあ、自分で自分の魂刈っちゃって、まあ…。」


僕の魂が!!しっぽ!!しっぽがちぎれてっ!!!

しっぽがじたばたしてるぅうううううう!!!


「君、魂丸くなっちゃうね?ほら、どんどん、悪魔の証?こぼれてる。」


僕…僕はどうなっちゃうんでしょうか…。

涙が、こぼれてきちゃったんですけど…。


「…ま、とりあえず、一緒にあがろっか?」

「うん…。」



僕は、背の高い天使に連れられて、天国に行くことになってしまい。


「はい、良くできました。」



ぽんぽん。



「っ!うぅぅ…。」


真っ赤になって、ジタバタしている毎日を送ってます…。



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― 新着の感想 ―
[良い点] あらららら〜 尊い [気になる点] しっぽを切って丸くなるという発想よ! さすがです。 [一言] かわいい
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