表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の兄から魔王の配下へ  作者: みなみ 陽
第九章 暴君ノそン在しョう明

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/239

ワすレてシまわヌよう、見失ワぬように

 オースの内心は、穏やかではなかった。


(うわーもう、きったねぇ。本当は、こんなことしたくなかったけど……相手が相手だ。見栄くらい張っておかねぇと)


 笑みを浮かべて、本心を押し隠す。何にも怯えていないし、怖がっていないことをアピールした。幸い、見抜かれることはなかったようだ。


「フフ……そうだね。あたしと貴様の会合の場には、相応しいオブジェクト。野暮なことを言った。では、単刀直入に言おう。この島に巣食う本国の連中を追い出して、この島を独立させてはくれないか」

「……え?」


 さらりと流すようにとんでもないことを言われ、驚いてしまう。獅羅盟は、ラグランタイアと組み、独立派を抹殺する組織のはずだ。それなのに、何故――当然の反応だった。


「いい反応だね。無理もない。獅羅盟は、本国と協力関係にある。反乱分子を狩り、現状を維持する。その対価に、自由をある程度保証されている。それが、世間一般での常識。表にある事実だね」

「裏にも事実がある、と?」


 遺体を踏んでいることも忘れて、オースは前のめりになる。


「あぁ。獅羅盟は反乱分子を鎮圧する裏で、反乱を起こす機を伺ってきた。先祖……初代首領の頃からずっと。気付いたら、あたしの番にまでなってしまったけど。機を伺う間に、長い時が流れてしまった。それでも、想いは変わらなかった。密かに力を身につけ、大国を相手に独立を手にする日が来ることを。でも、現実は残酷。力を身につけても、本国もまた強くなる。そもそも、この島に流れてくる武器は本国のお下がりだ。魔術を使える人間は限られているし、そもそも獅羅盟に入りたがるのは社会に行き場のない奴ばかりでね。小難しい話を理解できる奴は、ほんの一握りさ。夢を現実にするには、まだまだ長い時間がかかると思っていた。あたしの代でも、まだ従属するしかないのだと。だが、魔王軍が現れて、様々な大国と一同に戦う様子を見て、まだ希望はあると思った。機は、待ってばかりではいけない。時に、掴み取りに行くことも必要だと」

「ふ~ん? 待つ時間は好きなんじゃねぇの?」


 兄貴と話している時、そんなことを言っていたはず。揚げ足を取ってみる。


「あぁ。だが、これは個人の趣味レベルの話ではない。先祖代々受け継いできた想い、そして夢だ。可能性がある時に成し遂げなければ、終われないんだ。いつまでもいつまでも、終わらない夢を見続けなければならないんだよ」


 想いだの夢だのと、人殺しの発言とは思えない。オースは、思わず鼻で笑ってしまう。


「ふっ、お前みたいな奴からそんなキラキラワードが出てくるとは」

「む? あたしにだって夢や希望はあるぞ? ちなみに、昔は、もっとキラキラしていた」

「その昔話には興味はねぇが……どうして、獅羅盟はこっそりと独立を企んでいるんだ? 甘い蜜を吸っている方が、圧倒的に幸福だろ」


 途中からではなく、最初から目論んでいたという。先祖の夢であり想いであったとしても、なかったことにしてもいい。その当時の者達は、流石に生きていないだろう。それでも、子孫である彼女が変わらず志している理由が知りたかった。


「この島の昔話なら興味を持ってくれると?」

「あぁ。だが、簡潔に話せ」

「わかったよ」


 彼女は微笑むと、目を閉じて懐かしむように語り始める。


「元々、この島には原住民がいた。だが、ある時、新たなる領土を求める国の者達がやってきて、圧倒的な戦力で原住民達を捻じ伏せ、支配下に置いた。そして、民族としてのアイデンティティを奪った。不幸はそれだけでは終わらず、今度はこの島に目をつけたラグランタイア王国との間で戦争が起き、再度戦場となってしまった。結果、最初にこの島を支配していた国が敗北し、今度はラグランタイアの支配を受けるようになってしまったという訳だ。戦乱に乗じて、島民達は奴らを追い出そうとしたが、実力差は圧倒的で叶わなかった。それから、ラグランタイアはこの島を貿易の地にするべく整備を始め、様々な国からの移民を受け入れ始めた。その時に来たのが、初代」

「え? 原住民って奴じゃねぇの?」


 独立を試みるくらいだから、原住民にルーツがあるものと思っていた。しかし、獅羅盟の初代首領は元々移民であるらしい。


「違う。同じように支配されている地域から来た……権力者の息子だ。支配を受け入れる代わりに、権力を与えられたに過ぎないが。獅羅盟と似たようなものだな。初代は次男でね。この島を同じように支配するよう命じられたんだ」


 この島と同じように支配され、獅羅盟と同じように甘い蜜を吸っている者の血筋。わざわざ海外に派遣されるくらいだから、よっぽど信用されていたのだろう。


「う~ん、うん……」


 理解できているようで、理解できていない気がする。オースは適当に相槌を打ちながら、思考を巡らせていた。


(頭痛くなってきたなぁ)


「けれど、初代は全てが気に食わなかった。傀儡としての生き方にうんざりしていたんだよ。全てを覆したかった。そこで、力で捻じ伏せられようとしていた原住民のリーダーと秘密裏に会合をした。当初は、まるで信用がなかった。無理もない。彼らから見れば、初代もまた侵略者だからだ。しかし、対話に対話を重ね、()()を見せることで、ついに手を取り合うことができたのさ。そして、計画を立てた。初代は、大国に抗う力を育てる役割を、原住民は古から伝わる呪術で支える役割を担うことを決めた。だが、その決定を知っていたのは当時でもほんの一握り。家族くらいだった」

「随分と詳しいんだな」


 とりあえず、オースが理解できたのは、彼女が過去を見てきたくらいに詳しいことくらいだ。


「当時のことは、初代の手記が残っている。何度も見たのさ」


 そう言うと、前髪をかきあげ、再び両手を上げた。


「勉強熱心なことで」

「大事なことだからな。想いを忘れてしまわぬよう、見失わぬように」


 その言葉は、まるで彼女自身に言い聞かせているようだった。


「それで? 結託してどうなったの?」

「……結婚をすることになった。原住民のリーダーの娘と。周囲は、ただの結婚だと思っていた。反逆を試みる原住民の娘で、呪術の鍵とも知らずに各方面からの祝福があった。そして、2人は獅羅盟を創立したのだ。表向きは従属のため、裏では反乱の機を伺いながら十分な力を身につけていくために」

「呪術……? の鍵?」


 また新たなワードだった。簡単に理解できるとは思っていなかったが、簡潔に話してもこんなに難しいとは。思考が停止してしまいそうになったが、次の彼女の言葉で回避される。


「この島に来て、獅羅盟と民衆の関係が奇妙だと感じたことはないか?」

「あるな。無視するにしては、あまりにも徹底的というか……まさか、それか?」


 マフィアに対して、徹底的に無視する島民達の姿勢。とてとてと共に、魔術の使用を疑った。解決するつもりはなかったが、ここで繋がってくるとは。


「あぁ。証拠の隠滅は難しいからね。いくら特別扱いされていると言ってもね。犯罪は犯罪で、罪は罪。隠しきれない罪は逮捕だよ。警察も、全員が特別扱いをよく思っている訳ではないし、色々と厄介だしね。面倒事を減らせるなら、それがいい」

「しかしまぁ、よくも全体にそんなでっけぇ術をかけられたな」


 すると、彼女は不敵な笑みを浮かべて答える。


「最初からこうだった訳じゃない。じっくりとじんわりと規模を広げていっただけ。ここまで強固なものになったのは、最近のこと。呪術の鍵が受け継がれてきたから成せたこと。ちなみに、呪術の鍵とは……現在はこのあたし、ウル=ミオン=サリム=ステラ=ロージー=ジェシカ=アウリア=ベラ=アイシャ=アルダ=ニア=ミラ=レヴィ=イメルダ=ソフィアだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ