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96話 猛者達の会合








 私の名前は、ロク。

ベルゼビュート大魔帝国の文官であり、主に幹部会での書記を任されている。

と言っても今までは先輩達の補佐であり、今日初めて一人で書記をやらなくてはいけない。




 正直な話だが、とてつもなく緊張している。




 改めて出席者の一覧を見るが、今までの会合とは一線を画す面々である。

なぜ、今日に限って一人なのだろうか?

いや、確かに首席書記官は今多忙に多忙を重ねているのは理解している。

そして次席も産休だ。




 だからといっても今回は………

さすがに私一人でなんとかなるのだろうか?

怖い………とても怖い。




 会議の為に使われる大きな部屋に入室する。

一番乗りなのは当然だ。

文官の中では偉い部類に入る書記官といえど今回集まる面々からすれば末端と捉えられる存在なのだ。




 こういう集まりの場合は下の者から集まるのが暗黙の了解である。



 

 戦々恐々の面持ちで静寂の中を部屋の隅で待っていると、ガチャリと音がして扉が開いた。




「一人目ですか……」

 



 そう呟きながら入ってきたのは長めの黒髪に細身で長身の身体。

そして顔に幾何学の模様の刻まれた男。

奇襲突撃第三部隊の隊長エステロ。

見た目に似合わず温厚だと聞くがその迫力にゴクリとつばを飲んだ。




「おー、エステロ!早いなー」




 それに続けて途轍もない巨体の赤茶髪の巨人の青年が入ってきた。

見間違うはずがないその雰囲気は奇襲突撃第二部隊隊長、ベルロック・ダイラント。

軍長ガゼフ・ダイラントの実の息子である。




「まぁ奇襲突撃部隊の隊長といえど今回は末端ですからね……」


「にしても何だ今日の会合は?どっかと戦争でもする気なのかー?」




 二人の会話に耳を向けながら扉を見つめる。

すると、そこからまた一人中に入ってきた。

金髪の綺麗な顔立ちの優男。

しかし、見た目とは裏腹に魔国の中でもかなり凶暴だと噂される男である。

奇襲突撃第一部隊隊長…ランデル。




「戦争かー?良いねー、久々に暴れられる」


「次の戦争では俺が勲一等だぜランデル」


「デカいのは身体だけにしとけよベルロック」




 いきなりの睨み合い、凄まじい殺気が部屋の中を埋め尽くす。

あーもう帰りたい。




「書記官の人が怖がってますよ?やめましょう」


「チッ」


「たまには模擬戦でもしよーやランデル」


「望むところだ」




 震える足を抑えつつ、誰かまともな偉い人が入ってくるのを心のなかで壮大に祈る。




「若いのは良いことじゃなー」




 いつの間にか部屋の中から声がしてそちらを向くと部屋の中、会議用の円卓の上座に近い場所に白髪の老人が座っていた。




「そうは思わんか?ゼス」


「まぁ若さは強さでもあるが、無謀な賭けに出て大怪我を負われても困る」


「昔はおぬしも酷かったではないか……」




 老人と会話する男もまた誰も気付かないうちに上座の横に座っていた。




 その二人に気付いて他の全員が生唾を飲んだ。

いつの間に、どうやってこの場に現れたのだろうか?

そもそも、いつから………




 白髪の老人の名はジャンゴ・バブルス。

首席宮廷魔導師にして、魔法部隊全ての頂点に君臨する魔法使いである。




 そして、上座の横に座っている男は視認しているのに表情もその力量も実際の底が全く見えないという恐怖を感じさせる魔人。

年齢も経歴もなにも知られていない、それなのに皇帝の右腕として君臨する男、ゼス。




 まさかいきなりそんな大物二人が現れるなんて思ってもいなかった。

ロクは息をするのが難しいと感じながら、なんとか端の方で気配を消していた。




「はぁ〜よかった〜!遅くなりました〜」




 大物二人の存在で皆が萎縮していた会議室の中にふんわりとした穏やかな空気が流れる。

現れたのは金髪巻き髪の女性だった。




「救護局の局長も来るとはの〜、本当に大事な案件なんじゃな」


「あっ!お久しぶりですね!バブルス様!」




 ジャンゴが言った通りこの女性は救護局の局長……シフル・ロロアラである。

回復魔法の天才と呼ばれ若くして頭角を現した猛者であり、大抜擢で救護局の局長になった人物である。

ちなみに局長に就任した時は齢14歳だったとか。




「おー!ベルロックも来てんのか!」




 凄まじい大声が響き渡り皆が扉を向くと、大きな扉を少し屈みながら巨人が入ってきた。

その隣には黒髪の魔人が付いている。




「親父っ!」


「おい……外ではそう呼ぶなと何度言ったら分かんだ!?ぶっ飛ばすぞクソガキ」


「……ひっ」




 お察しの通り現れたのは魔国軍の頂点に君臨し破壊の権化と呼ばれ恐れられる巨人。

軍長、ガゼフ・ダイラントその人である。



 隣にいるのは軍長補佐の魔国軍No.2、エミリオ・アストラである。




「相変わらず声がデカいんだよ木偶坊」


「あぁ?うるせぇな淫乱エルフ」




 ダークエルフの褐色な肌に、絵画のような美しい顔立ち、そして深緑の長く綺麗な髪。

しかし、その美しい顔立ちからは想像もつかない程に圧倒的な殺気と魔力。

近衛長、ターナ・アラーナである。




「さっそく喧嘩をするな………下の者に示しがつかん」



 

 睨み合う近衛長と軍長の間にいつの間にか現れ睨みを利かす金髪に血のような赤い瞳の男は、その睨みで二人が収まったのを確認して席につき他の者を見渡して無言で席に座らせる。

ヴァンパイアにして魔国の天才軍師と呼ばれる参謀長……ロイド・パイロンである。




「ダリフはまだ来てないのか?」


「いるが?」


「なっ!?お前いつから座ってた?」


「お前らが喧嘩を始める前からだ」




 気配無く席に座していた黒髪に灰色の瞳の狼獣人が不快そうにガゼフを見やる。

彼は魔国の影の部分の頂点、隠者部隊長ダリフ・ウォーウルフ。




「で、今回は何の集まりなんだ?ロイド」


「陛下から話があるまで待てないのか?ガゼフ」


「………ったく。でも、どうせあれだろ?」


「察しているならなおさら黙って待つべきだ」


「………へいへい」




 ロクは集まった面々を見てまるで歴史の中に傍観者として連れ込まれたような感覚を覚えていた。

この面々が暴れたら………真っ先に自分が死ぬだろう。

あーー、怖い。

母さん……父さん……私は今日死ぬかもしれません。





「参謀長閣下……遅くなりました」


「いや、構わないよレイナード卿」




 次に現れたのはこの場で唯一の人族。

皇太子アルス・シルバスタ=ベルゼビュート殿下の育ての親にして、現参謀長補佐……ケイレス・レイナード侯爵。




「ケイレスー!今度あの酒またくれよー!」


「おー、ドワーフの火酒か?」


「そうそれだ!今度また飲もうぜ!」


「いいなー!秘蔵のやつを出そう」




 ガゼフとケイレスが和気藹々と喋っているのにも驚く。

魔国の軍長と人族。

そこには埋められない因縁があるはず。

だが、皇太子の育ての親でありその人となり、そして勤勉な態度に今この国でケイレス・レイナードを馬鹿にする阿呆はいない。

それもまた魔国が変わった証だろう。




 ガチャッと扉が開いた。




 そこから入室してくる人物を見て、慌てて皆が立ち上がる。

入ってきたのは三人。

一人は金髪に透き通った青目の美女。

そして少し疲れた顔をした全てを見通すような瞳の男。

そして、白金の髪に黄金の瞳を持つ美少年。




 大魔帝国の歴史の中で、新たに設立された蒼天という皇太子が自ら創り上げた精鋭の独自組織。

その頂点に君臨する元奇襲突撃部隊隊長にして現、蒼天総帥…ローナ・フリーリア。




 そして、千眼とも呼ばれる蒼天軍団長バロン。




 だが皆が見つめるのは最後に入ってきた少年である。

創造神の使徒にして、ベルゼビュート大魔帝国皇帝の一人息子。

皇太子、アルス・シルバスタ=ベルゼビュートである。




「遅くなった……」


「いえ、お忙しいのは皆分かっていますよ…殿下。それとうちの娘が最近お世話になっているとか………ご迷惑お掛けしていませんか?」


「いや、ルフリアは才能もあって良い子だよ。俺こそ世話になってる」


「………有り難いお言葉です殿下」




 ピリついていたロイドの心からの笑みに皆が呆気にとられるが、そんな事は気にせずアルスは上座の横、ゼスと反対側に腰掛けた。




「こうやって全員が集まるのはなんだかんだで初だな……」


「殿下ー!今度俺と模擬戦してくださいよー」


「なっ!?不敬だぞ!!木偶坊!!!」


「あぁん?うるせぇな淫乱!!」


「やめろお前ら………殿下の御前だぞ」




 また揉めだした二人にロイドが明らかに殺気を放っている。

が、アルスは笑っていた。




「たまには模擬戦してもいいぞガゼフ」


「なっ!?本当ですか!!」


「甘やかし過ぎですよ………殿下」


「ターナもたまにはどうだ?」


「へ!?良いのですか!!」


「もちろんだ姪っ子のミーナとも仲良くしてるしな話の種にもなるだろ?」


「う、嬉しいです!!」


「あ、あの殿下………今度私と………その………軍略について語り合いませんか?」


「良いぞ!むしろロイドの今までの培ってきた経験を聞きたい。ぜひお願いしよう」


「………有り難うございます!!」





 大幹部達がまるで子犬のように殿下に尻尾を振る姿に他の面々は呆気にとられて固まっていた。

さすがは皇太子殿下………とロクもまた目を見開いていた。






 そして、それから少しして………また扉が開いた。

それに気付いて皆が一斉に立ち上がり跪いて頭を垂れる。




 ロクもまたその場で跪いた。




「面を上げよ………皆忙しいなかよく集まってくれたな」 





 白髪に黄金の瞳。

皇太子殿下によく似たその綺麗な顔立ちと、覇者としての圧倒的な気配。

その者を見て跪くのは至極当然だと本能的に思ってしまう。




 最後に現れたのはもちろん、大魔帝国皇帝……シルバ・ヴィベルイ=ベルゼビュート陛下である。





「座ってくれ………」




 陛下が席に座り、そう声をかけて皆が席に座る。

それを見やって陛下は一呼吸置いて口を開いた。




「この面々ならそれとなく知っている者も少なくはないと思うが、改めて話しておくべきだと感じて皆を集めた。

我が息子アルスが創造神の使徒になった理由、そして蒼天を組織した理由。

アルスと、我々この国の者達が、いずれ何を相手に戦っていくのかということについてだ。」





 その言葉から始まった会合は、正しく歴史の中で刻まれることになるであろうモノだった。

ロクは震えていた身体を抑え込み、その一つ一つを決して聞き逃さないようにと書記官としての顔になり会合に集中するのであった。












久しぶりの幹部達!!

結局のところ皆どれくらい強いんだろ

ってのを近々書いていきます\(^o^)/




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『ご報告』2023/11/23

次話を待っている皆様申し訳ございません。

私情ながら作者のお引越しの為バタバタしていますので毎日投稿ではなくなってしまいます。

ただ、溜まっている時に一気に放出する予定ですので少々だけお待ち下さいm(_ _)m


今後とも転生捨て子を宜しくお願い致します!




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