表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/138

95話 使徒とは






「ネブロスが?」


「はい、消息を絶ちました。それと魔国で使われていたネブロスの研究施設内の誘拐してきた少年少女も消えています。」


「次席はどうした?奴に警護は任せていただろ?」


「………彼はそれより少し前に消えています。ですが、彼はいつも通り自分の意思かと」


「………まったく。他の国でのネブロスの研究施設は?」


「そちらは変わりなく、そしてある程度の成果は上げておりますので別の者に引き継がせます。」


「あいわかった。にしてもやはり魔国に送り込んだのは失敗だったな………憎き邪神の使徒………あやつを倒すのは今はまだ無理だ」





 金の仮面を付けた聖職者の男が腹立たしげに虚空を睨む。

あの男………アルスだけはなんとしても殺さなくては。

だが、まだ早い。

今は力を蓄えるしか……




















「どうしたんだ?レイカ」




 黒髪の少年が、黄昏れたように街を見下ろす同じく黒髪のポニーテールの少女に声を掛ける。




「セイゴ……」


「どうしたんだよ……元気ないぞ」


「変………じゃないかな?」


「なにが?」


「私達は創造神様の使徒なんだよね?」


「あー、そうだろ?」


「なのに、なんで私達が民を傷付けてるんだろ。普通は邪神の使徒達が暗躍していて、それから民を守るのが私達じゃないの?」


「………」


「来たばっかの頃は色々混乱してて見逃してたけど………やっぱりおかしいんじゃ……」


「でも俺らは使徒であり、勇者……」


「うん……だからこそ、私達は民を守るべきなのに。宗主様だって変だよ。他の神を崇める者は皆殺せ!って………前の世界のやばい宗教の考え方じゃない…」


「確かに………」




 二人の間に困惑の空気が流れる。

何が正解なのかはわからない、急に呼ばれて急に戦わされている。

その理由を疑う余裕もなかった。

だが、確かになにか変なのは分かる。




「レイカ、少し話が……」




 すると後ろから別の声がした。

振り返るとそこには金仮面の男、終末機構の頂点に君臨する宗主が立っていた。

セイゴはまずい………どこから聞かれていた?と思案する。

仮面のせいでどういう顔をしているのかはわからない。




「私………ですか?」


「少しだけ大事な話がありまして」


「わかりました」




 タイミングと話していた内容を含めてなにか怪しいと感じるセイゴだったが、ここで拒否させることはできない。

宗主と共に立ち去るレイカの背中を見つめて言葉にならない不安が胸に広がる。





 そして、その不安は次の日確かに形として一番最悪な結果を齎す。





 次の日会ったレイカはなんの疑いもない顔で、創造神に祈りを捧げていたのだ。

そして言葉を交わそうと近づいたセイゴにレイカは“敵は全て滅ぼしましょう。創造神様の御心のままに…”と言った。




 その真っ暗な瞳を見てセイゴはごくりと唾を飲んだ。




 宗主に何かされたのは間違いない。

俺達は今何に巻き込まれているのだろうか…



















 アルスは王宮の牢屋の中の最奥に足を運んでいた。

そこには学園に潜伏していた緑仮面の男が幽閉されている。




「で、何の研究をしていたんだ?」


「研究という程の事ではないですよ。ただ洗脳して我々の陣営の兵にしようとしていただけです。」


「なるほど……邪神の指示か?」


「宗主の指示ですね………まぁ神からの天啓があったのかもしれませんが」


「なぜ魔国に?」


「身体、魔力、共に魔族は強いですからね。ですが、他の大陸でもやっていますよ?」


「他の大陸でも誘拐事件が起こってるのか?」


「むしろ、魔国の方がかなり後からになりますね。他ではもうある程度の結果に繋がっていますから……」




 アルスはそれを聞いて頭痛を感じた。

洗脳した兵を他の大陸から連れてきて戦わせる気か?

なんて惨い事を……。




「なぜ、お前は奴らの仲間に?」


「研究費を出してくれるとのことだったので………どこでも正直良かったんですよね」


「………お前、エルフだろ?」


「そうですよ………追放されたエルフです」




 いやに素直に返してくる緑仮面に少し不気味さを感じる。

が、それはそれとして仮面を取ったその男は正しくエルフの特徴のある顔をしていた。

薄緑の髪に、中性的な整った顔立ち、そして長い耳。




「なぜ、追放された?」


「そこまでやばいことはしてないですよ?ただ古代魔法を研究している時に、エルフの族長しか閲覧出来ない本を拝借してしまって………」


「それで追放されたのか?」


「はい。まったく………研究はエルフの為でもあったんですけどね。本当に頭の硬い者達です」




 つまりこいつは研究の為に閲覧禁止の本に手を出してエルフの里から追放され、邪神の陣営に研究費を出すと言われて仲間になったのか。

なんか思ったよりも………




「思ったより、理由が普通でした?」


「あぁ。それよりなんでお前はそんなにペラペラと話すんだ?それに敬語になってるし」


「私はあの神から天啓を受けた訳ではないですし、宗主に忠誠を誓っていたわけでもないですからね。ただのビジネスパートナー。そして、現状ここで貴方と敵対して良い未来があるとは思えませんので」


「薄情というかなんというか……」


「ただ研究が出来ればいいだけなんですよ……はぁ………この任務も本当は嫌だったんですが……研究費を増やしてくれると言われたので仕方なく」


「未然に防げたとはいえ俺はあの一件にまだ苛立ってるからな……?その経緯はどうあれ」


「それはもう………わかっておりますとも。で、やはり私は死刑ですか?」


「考え中だ。とりあえずあちらの知ってる情報を全て話してくれ………後のことはそれからだ」


「………わかりました。惜しみなく協力しましょう。改めて自己紹介しますね………私はネブロス。終末機構の三席に名を連ねる者です」















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ