94話 後は任せろ
「さっさと死になさい!!」
フェリナが闇魔法を纏った剣がポリオに向かう。
なんとかそれから守ろうとミーナは魔法を放とうとするが怪我で集中できない。
ポリオは魔法を自身が放つ前に剣が迫るだろうと薄々気付いていた。
「クソ…………」
「ポリオくん!!!」
ガキーーーーーンッッッ
しかしその剣はポリオには当たらなかった。
フェリナは突如現れた障壁に目を見開く。
そんな気配はどこにも………
同じく驚愕するポリオの肩にそっと手が置かれた。
「よく耐えた………後は任せろ」
「………アルスくん」
横を見るとそこにはアルスが立っていた。
それだけでポリオはとてつもない安堵を感じた。
どうやって現れたのか、あの一瞬でなぜ守れたのか、その全てはアルスなら可能だとしかいえない。
ミーナもアルスの背中を見て膝をつく。
「先生………ではないですねもう。あなたは誰ですか?」
「どうやってここに?」
「変だったんですよ……」
「変?」
「ここら一帯だけ魔力を一切感じなかったので………」
「なるほど………さすがは使徒ね」
今度は冷や汗を流すのはフェリナだった。
魔力を外に漏らさない魔導具。
それが仇となった。
まさか、魔力を感じないことに違和感を持つとは。
「もう一度聞こう………」
ポリオから離れフェリナのもとにゆったりと歩くアルス。
その身体から凄まじい魔力が溢れ上がった。
それはもはや象を前にした蟻。
それほどまでに強大な魔力にフェリナは無意識に一歩後ずさる。
「お前は………誰だ?」
フェリナはそれでもなんとか微笑みを浮かべていたが、それも止めて無表情にアルスを見つめる。
「これが使徒………あの方に聞いていた通り………やばそうだ」
フェリナの口から聞こえてきた声は今までの女性的なものではなく、男の声だった。
「ったくよー。これは任務外なんだが………逃してくれねぇよなぁー?」
いつの間にかフェリナの体から女性的な部分が消え去った。
細身だが明らかに男。
そして、顔には緑色の仮面。
髪の色も薄緑に変わっていた。
「仮面………お前邪神の使徒か?」
「俺からするとお前が邪神の使徒なんだがな」
「………またお前らか」
「はぁー逃げたい………帰りたい………めんどくせぇー!!」
フェリナだった仮面の男から漆黒の靄が吹き出す。
先程までとは雰囲気が全く違う。
アルスは何かの魔法で魔力を外に漏らさない結界のようなものに干渉しながら敵の出方を伺った。
百近い漆黒の蛇がアルスに向かってうねうねと這って来る。
アルスはそれを見ながら刀を取り出し、抜いただけのような動作でその全てを吹き飛ばす。
ザアァーーーーーーーー
風が切れ、漆黒の蛇も消え去る。
仮面の男はその光景に驚いて固まっている。
「規格外すぎねぇか?」
「なんだ?まだ刀を抜いただけだぞ?」
「チッ 闇よの支配者たる死神よ……我が敵を殲滅し尽くせ!!!」
地面に広がる闇の靄から大鎌を肩に担いだ数体の顔のない死神が現れる。
見たことのない魔法にアルスは面白いものを見る顔でそれを見つめる。
数体の死神達がアルスを襲うために走り出す。
その死神達の方へアルスはゆったりと歩みを進めた。
さながらそれは覇者の歩みだった。
凄まじく放たれる魔力。
しかし、それは魔法を形どってはいない。
それなのにその圧力で死神達は停止し、そして跪いた。
緑仮面が放ったこの魔法は死の世界から番人たる死神を一時召喚するというものである。
その力は膨大で、その分代償も大きい。
正確に言えば寿命を少なからず支払っている。
その死神が敵に跪く。
そんなことはありえない事だった。
だが事実、死神達はアルスに跪いていた。
「なるほど……闇系統の召喚魔法か。にしても、敵に跪いていいのか?」
アルスのその言葉は死神達に向けられたものである。
「まぁ、いい。とりあえず還れ」
アルスがそう言ってパチンと指を鳴らすと死神たちは消え去った。
いよいよ緑仮面は仮面の裏で顔を蒼白にした。
こいつはやばい……
勝てるわけがない。
仮面の男は慌てて踵を返し逃げようとした。
だが、途中で何かにぶつかりドンッとよろける。
「な、なにをした?」
「お前が使った結界をイジった。もうここから許可なく出ることも、転移もできない」
「嘘………だろ?」
「いや、事実だ」
戦いの最中アルスは結界をイジっていた。
前に銀仮面を逃したのを忘れていない。
「マナリノ達はどこだ?」
「………知ってどうする?」
「お前が言わなくても必ず見つけ出すぞ。それに言わないなら少し人道的によくない方法を使わざるをえない」
「………あいつらはまだ生きてる」
「いやに素直だな」
「俺は………戦闘要員じゃねぇ……戦っても勝てねぇなら情報で取り引きだ」
「取り引き……だと?なぜ対等に取り引き出来ると思ってんだ?」
「………見つけられねぇぞ俺がいないと」
「転移魔法陣は見つけた。あっちから起動するタイプなんだろ?少し時間はかかるがあっちの魔法陣の座標を読み解くことは可能だ」
「………化け物かお前」
「ただの神の使徒だ」
緑仮面は少し思案して、はぁーと地面に腰を落とした。
「なぁー、お前が俺を殺す気なら何分掛かる?」
「………愚問だな」
次の瞬間。
緑仮面の首にアルスの刀が添わされていた。
「一秒も掛からん」
「………だから嫌だったんだ………お前のお膝元に潜入するのはよぉ。で、俺は死刑か?」
「とりあえず幽閉、役に立たないなら死刑だな」
「チッ 俺はよぉ………ただ研究できればよかったんだ………あの神に忠誠もクソもねぇ」
「どうやって潜入したんだ?」
「俺の固有魔法は、記憶改変。周りの人間の記憶を改変、改竄できる魔法だ」
「厄介だな………逃さなくてよかったよ」
それからアルスの魔法で完全に無力化してからその仮面の男を王宮の牢屋に厳重に収容した。
そして、それから魔法陣をすぐに解読しアルスは相手のアジトと思われる場所に乗り込む。
もちろん蒼天の部隊と共にである。
「………こっちに行方不明の生徒達が!」
「敵は………居ねぇな」
「どういうことだ?」
「分かりません………逃げられましたね」
しかし、そこに邪神の使徒達はいなかった。
生徒達は残されていたが他の者はいない。
緑仮面曰くアジトと言っても何個もある中の1つらしく、そこには見張りとして他の使徒が1人と数人の兵しかいなかったらしいのだが、その使徒や兵の気配はなかった。
「終末機構………うっとおしいな」
「これまで以上に、奴らの尻尾を掴む為の情報を集めましょう」
「任せるぞバロン」
「はっ!!」
ちなみにだが緑仮面曰く、終末機構の本部には複数の魔法陣を使って辿り着くらしくその場所がどこなのかはよく分からないらしい。
情報漏洩を防ぐ為にそういうやり方をしているのだろう。
こんにちわ尾上です!m(_ _)m
全然関係のないお話なのですが、
好きな漫画やアニメのキャラの年齢を上回ったり、漫画の中でおじさんのように描かれてるキャラと歳が近くなったりすると………地味に傷付きますよね…w
いつの間にかしんちゃんの年齢を超え、ルフィが若くて驚き、ヤミ団長が一個上なの!?と驚愕しています。
やばい……いつの間にか俺もおじさんに……_| ̄|○




