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90話 何処に消えた






「あれ?」





 アルスは休みが明けて学園に登校した。

そして、教室に入ってしばらくして首を傾げる。




 なんとも言えない暗い雰囲気。




 そして皆が見つめる視線の先には誰もいない。

正確に言えば、居るはずの人物がいない。




「マナリノがいない…」


「で、殿下。噂によるとマナリノちゃん行方不明らしいです……」




 不穏な気配に眉にシワを寄せるアルスに先に来ていたミーナが声を掛ける。




 マナリノがいない……




 いや、待て待て。

昨日はちゃんと送って、そのあと蒼天の暗部が監視してたはずだ。




 アルスは苛立った顔で俯く。




 実際知り合いが消えたとなって改めて憤りを感じた。

マナリノは無事なのだろうか。

これは、一刻を争う………




 すでに行方不明事件として軍が動いて捜査や厳重体制を整えている。

さらには蒼天の暗部も配備した。

父上の所の暗部も居るだろう。

それなのに、まただ。

また生徒が消えた。




「どうなってる…」




 教室の生徒達ではなく周りに向かってアルスが声を掛けると、すぐに数人の黒装衣達が現れアルスに膝をつく。

アルスの怒りを感じているのかいつもより幾分か頭が下がっている。





「も、申し訳ございません殿下……」


「不審な点はなかったのか?」


「はい………誰も出たり入ったりはしていません」


「チッ 情報を掻き集めろ、一刻を争う」


「「「「はっ!!」」」」




 消え去った黒装衣。

その一連の流れを見て黙り込む生徒達。

さすがにこれ以上裏で動いていてもしかたない。

犯人は分かっていないが、もはや学園も休校にするべきだろう。




「寮暮らしでマナリノと仲良い人いる?」




 アルスの問いかけに一人女生徒が手を挙げる。




「わ、私隣の部屋です!マナリノちゃんとも昨日話しました」


「不審な物音とかはなかったか?」


「誰かが訪ねてきたような雰囲気はありました。会話は分かりませんが、争っていた気配はなかったです。」


「なるほど……」




 やっぱり犯人は内部の誰か。

もしくは内部に協力者がいるのか。

でなければ夜間に訪れてマナリノが受け入れるとも思えない。




 こんなことならもっと早く色々調べておくべきだった。

だが父上や、暗部の報告では生徒や教師達の素性はかなり細かく調べられており不審な点もない………はずだ。




 ガラガラと音がして振り向くと教室の扉から担任のロイズが入ってきた。

すでにマナリノの件を聞いているのかロイズの顔色も暗い。




「アッケンバーグ……」


「はっ!」




 いつもなら生徒と教師なのだが、アルスの雰囲気を見て慌ててロイズが膝をつく。




「少し学園内部を調べる。寮の立ち入りの許可をフィンドグリール学園長に言って、取ってきてくれ。否はなしだと伝えてくれ」


「か、かしこまりました」




 慌てて出ていくロイズの背を見つめるアルスの視線は鋭い。

普段温厚な分、皆がその雰囲気に圧倒されている。




「手伝うことはある?」




 誰も何も発しないなかポリオがアルスに近付き、そう声を掛ける。

その顔付きは同じように憤りを感じるものであり、ポリオもまた同じクラスの人間の行方不明に苛立っているようだった。

ただ、ここはポリオの国ではない。

いくら他国の王族でも勝手には動けない。




 そもそも、国からは行方不明事件のことで帰還命令が来ている。

それを受けて帰還しようとしていたが、ポリオはアルスと出会いそれを無視していた。




「本来なら他国の王族は巻き込みたくないが、ポリオは友人だからな。出来る範囲で手伝ってくれ」


「うん!学友が誘拐されているなら放っておけない」


「わ、私達も手伝いますわ」


「力不足かもしれませんが、協力します殿下」


「ルフリアとミーナもありがとな。頼む」




 しばらくしてロイズと見たことのない女性が現れた。




「殿下……学園長からの許可は取れました!」


「ありがとう………それで、その人は?」


「フェリナ教官です。マナリノの2年の時の担任だった…」


「フェリナと申します!私も、マナリノさんが心配です。協力させて下さい殿下!」




 あぁ、確かにマナリノが言っていたなーと思い出した。

フェリナ教官は、黒髪に茶色い瞳の優しそうな女性だった。

協力者が増えるのは有り難い。




「では、お願いしますフェリナ先生」


「はい!ではさっそく寮に行きましょう」


「あのー、ロイズ先生もついてくるんですか?授業は?」




 ミーナが言ったようにロイズも当然のように付いてきていた。




「生徒だけに任せるわけにはいかないからな。学園長に許可は取ってる。授業も他の教官がやってくれるから問題ない」




 そうしてアルス、ルフリア、ミーナ、ポリオ、ロイズ教官、フェリナ教官の6人は寮に向かって歩きだした。

















「変なところはないな……侵入された痕跡もない」

ロイズがそう呟く。




 授業中の為、誰もいない寮の中を6人で隈なく見て回った。

が、確かに特に不審な点はなかった。

侵入された痕跡もなければ、マナリノの部屋にも争った気配はない。




 だが、よくよく考えれば軍が捜査しているということはすでに寮は調べ尽くしているだろう。




「いやー、んー」




 しかし、アルスは寮に何かあると考えていた。

隠密曰く、昨晩出入りはなかった。

軍関係者が厳重に夜間も学園の敷地を警邏しているし、寮は特に国軍と蒼天両方の隠密が見ていたはずだ。

その中で人を抱えてバレずに出るのは不可能だと思う。

となると、何処かに隠されている部屋、もしくは隠し通路があるのではないかとアルスは考えていた。

 


 

「何か気になるのか?」




 生徒モードに戻ったアルスに、先生モードに戻ったロイズが尋ねる。




「………軍が厳重警戒して警邏していて、さらには軍の隠密が寮を監視しているはずです。昨日はうちの蒼天の隠密にも監視させていました…………元S級冒険者のロイズ先生………貴方ならその中を人一人担いで誰にもバレずに抜けられますか?」


「………無理だな」




 ロイズは即答だった。

魔帝国軍は精鋭揃いで凄腕なのは周知されている。

そして、この国に関係する一大事に陛下が手を抜くとも思えない。

つまり皇帝の肝いりの精鋭が警備し、監視していた事になる。

さらには今では話題に事欠かない蒼天に属する隠密まで監視していた。

その中で生徒を連れ出すなんてことは……。

いや、待てそもそも………




「やはり先生もそう思いますよね」




 思案に耽っていたロイズにアルスが声を掛ける。

それにロイズは“あぁ”と苦虫を噛み潰したような顔で答える。




「ど、どういうことです?」


「ポリオ………考えてもみろ。元S級冒険者でも抜け出せないんだぞ?」


「う、うん」


「だったら学園に入れるのか?そもそも」


「え!?」


「つまり犯人もしくは犯人の仲間が学園内部にいる………間違いなく」


「……………」




 その言葉に他の面々も驚愕して固まった。




「し、しかし殿下!軍は身辺調査は念入りにしていないのですか?」


「フェリナ先生………俺もそこが引っかかっているんですよ。なぜ、身辺調査の時にその者は見つからなかったのか」


「…………それでも居ると?」


「はい、居ると思います」




 フェリナは困惑しながら頷いた。




「とりあえず、調べましょうか。先程の話の続きですが内部に犯人がいるとしても、ここを簡単に抜け出せないのは変わりありません。となると……」


「隠し通路……」




 アルスの話にロイズが言葉を被せた。




「そうですね可能性としては3つ考えられます」


「3つ?」


「一つ目はロイズ先生の言っていた通り他の場所につながる隠し通路、二つ目は監禁に使う隠し部屋、三つ目は転移の魔法陣ですね。しかし、この3つのどれであろうと多分この寮の中にそれはあります。」


「なぜだ?」


「夜間の寮の方が日中よりも動きやすいから犯人は寮生を狙ってきたと思っていましたが、改めて考えると外に連れ出せないから寮に脱出ルートを作り、それがあるから寮生が狙われた。のではないかと」


「なるほど………一理あるな」


「ので、改めて探しましょう念入りに」


「隠し通路だとすると地下か?寮に地下はないはずだが、とりあえず一階に地下に続く道がないか探すか」










 改めて隈なく探した。

だが、その日不審な点は発見できなかった。

















 誤字脱字の報告…………

いや、まじで、ほんとに有り難くて………感謝感謝です。

ここ間違ってる!と知らされてみて、え?まじやん!ってなってます……はい。

俺が至らないばかりにご迷惑おかけしますm(_ _)m



 今後も誤字脱字あればお願いします!



 それと感想のとこに今後こういう展開が見たい!こういうキャラ欲しい!などあれば書いてみてください

ある程度は決まってしまっていますが差し込めたら差し込みます!!

またその際ペンネーム的なのがあれば、あとがきで「このキャラは○○さんの意見を取り入れました!」と報告するのでぜひ名前もお願いします\(^o^)/



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