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9話 魔法の扱いは慎重に…

魔法は危険…メモメモ




 魔法むずいっす。

あ、どうもアルスです。

あれから魔法を鬼教官…もとい母から教えていただいております。



 しかし、これが本当に難しい。



 最初は初級魔法だったからすぐに覚えられたけど、そこからが難解すぎる。

そもそも、この世界の魔法にはこれを覚えなさいという基本が無い。



 これ覚えたいなって思ったやつだけ覚えていく、その中でもちろんできるのとできないのがある、みたいなざっくりとしたものしかないのだ。



 スタートは火弾という火の玉を放つ魔法から手始めに教わり、これはなんとなく前世での銃器のイメージで難なく取得できたが…

そこから次のステップ…膨大な魔法書から取得したい魔法を探すという所でまず迷いに迷う。



 使い勝手良さ、火力、範囲、色々考えて決めなくてはならないし、決めてもそれが使えるかはその人次第だ。



 どうせなら派手なの!と選んでも派手になればなるほどに取得は困難になる。


 

 上級魔法など、もはや意味がわからない。

本での説明と母さんからの指導があっても容易く取得は出来なかった。



 夜な夜な理論を理解しようと想像を重ね、次の日実践するが、できない日々。

ここに来て初めて俺は躓いていた。



「もっと簡単な魔法にしてみたら?」



 母さんが諭すように言ってくるが、

俺の答えは決まっている。



「僕は量より質を選びたいんだよね…」



 そもそも多彩さには弱点がある、迷いが生じるからだ。

確かにいっぱい使えて損はないし、戦略的にも色々な練り方が出来るが、その分考える時間が生まれてしまう。

それは戦場では致命傷になりかねない。

現にあの森で暮らしていたからわかる、

あれこれ考える暇なんてなかった。

それなら今はどんな状況下でも有効な魔法を取得したい。



 なかなか前に進まない日々…



 仕方なく母さんと父さんに許可を取り、一日休みにしてもらって、心を落ち着かせる事にした。



 そこで、俺は素晴らしい出会いをする事になるとは…この時はまだ知らなかった。



 一日やることもなくオフにしたが、

今日に限って妹は母と買い物に出ていた。



 くそ、やることまじでないぞ。

しかし、魔法とか今は考えたくない!



 そこで俺は本を読むことにした。

あの借りてきた本である。



 その中でも1番勉強っぽくないタイトルの本を選ぶ。



《世界を旅する》

レイナルド・ウリウス著



 午前中から読み出し、手に汗握りながら時間も忘れて読み続けた。

 


 なんて面白いんだ!すげぇなレイナルド!



 この本の大体の内容はレイナルドという大きな大剣を持つ人族の凄腕の剣士と、ルナという弓を使うエルフの魔法使い、そしてドールという身体より大きな斧を持つ力持ちなドワーフの3人が冒険者として世界各地を放浪しながら色んなモンスターを討伐していく話である。

多分ノンフィクションであるその本には、面白いエピソードだけでなく冒険者としての心得や、野営のコツ、モンスターの特徴や弱点なんかも書かれていて、とてもタメになる。



 そして、俺はある章で目を見開いた。



 それは魔法が苦手なレイナルドとドールにルナが魔法を教えるシーンである。

ルナは独自の魔法取得の解釈と魔法に優れたエルフ族の教えを分かりやすく二人に説いていく。



『つまり魔法っていうのは目に見える現象ではなく、概念を理解する事にあると思うの!

例えば火を出すために、火を想像するのではなく、枯れ木を燃やして火を起こす事という現象を想像して枯れ木の代わりに自身の魔力で火をつける…というのが正解。

例えばそれを応用すれば、燃えた火にさらに枯れ木やもっと燃えるものを足すイメージで火炎に変えたり、さらには風をそこに送るイメージで火魔法と風魔法を複合した爆風を起こしたりする事も可能よ!』



 そうか、概念なのか。

つまり俺が火弾を撃てたのは、銃を知っていた上に、火種を起こす事で火薬を爆破させ前方に押し出すというイメージを理解していたから。

そして他の魔法が使えなかったのは他の魔法での概念をちゃんと考えていなかったから。

それを使えるか使えないかは適性と概念の知識の有無。

確かにそう考えればなんとなく正しい気がした。



 だとすると、ちゃんとイメージさえ持てれば俺にも使える。



 俺は本を部屋のベッドに放置し、慌てていつも訓練をしている庭まで走る。



 攻撃対象は周りと少し離れたところにある大木。

イメージは…大砲。



 銃とは違う。

放たれる物質の大きさも、燃焼材の量も、そして支える母体も格段に頑丈で大きい。



 まずは大砲の本体を想像する。

放たれるのは砲弾ではなく火炎の大玉。

燃焼材の代わりに風を圧縮した空気を使い。

それを支える砲身には周りから風を抑えるように使う。

炎を圧縮し固めた大玉を、燃焼材の代わりである圧縮空気に火をつけ爆破させる事により前へ押し出す。



 さぁ…放たれてくれ!!!



 脚に力を入れ、両腕を前に突き出す。

掌を包むように魔法陣が構築されていく。

風と火の複合魔法。

よし、狙いは外さない!

いけーーーーッッッ!!!!



ドガッーーーーーーーーンッッッ!!!!!



ピロンッ 【攻撃魔法[火炎砲]を手に入れました】



 燃え盛る大木を眺め俺は不敵に笑った。

出来た!出来たぞ!!火炎砲!!!

すげえぇぇぇぇ!!

なんて威力だ!!!!



 と、感動していたが、一気に冷静になる。

やばいっ!!!めちゃ燃えてる。



俺は慌てて原型を留めていない燃え盛る大木に近寄り、水、水、とあれこれ考えながら大量の水が流れる滝をイメージし、山から降りてきた水が大木の真上にある滝を通じて大木に水を凄まじい勢いでかけていくのを想像して魔法を放つ。



バシャーーーーーーン!!!!

ドーーーーーー!!!



ピロンッ 【攻撃魔法[業水]を手に入れました】



 なんとか炎は消え、

周辺には膨大な水溜りができていた。



 そしてその場にヘタリ込み、後先考えていなかった自分を責める。


 あぶねー大火事起こすところだった…




 そこに駆けつけてきたメイドと執事達、


「ど、どうなされたのですか?アルス様!」


「本当にごめん。テンションが上がって中級魔法を高火力で放ってしまった」


「「「な!?」」」



 そしてその後妹と共に帰ってきた母にもちろん怒られたが、中級魔法の成功は褒められた。



「にしても俺も見たがあの大木が爆散するとは、どんな魔法を放ったんだ?」

夜になり帰ってきた父と皆で夕飯を食べている際、苦笑いしながら聞いてくる父は説教されたのをわかっているのかどこか優しげであった。


「単純に火力のミスです。風魔法を使って燃焼材の代わりにして火力を上げたのですが、その際に空気を圧縮し過ぎてとてつもない威力になってしまいました」

項垂れる俺…


「な?もう複合魔法まで扱えるのか?」

トライデンさんはとても驚いていた。


「アルスは才能は凄いけど、後先を考えないとダメよ?複合魔法を使えたというのはとてもすごい事だし母さんも鼻が高いけど、あの木を見ればどれだけめちゃくちゃな威力の魔法を放ったのかは明白。次はちゃんと考えてから使いなさい!」

母はもう怒ってはいなかったが、もう…まったく、と呆れていた。





 魔法は危険!!メモメモ…






9話を読んでいただきありがとうございました!!

感想、評価、ブックマークを頂けたら幸いです。

また、誤字脱字、不適切表現などありましたらご指摘ください。 

 

今後もまだまだ破天荒なアルスの成長をお楽しみください

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