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88話 え、皆…異名持ちなの?


なんとか今日で2話出せたぁー。。


88話です……ぱちぱち!!

あ、それだけ言いたくて………

_(┐「ε:)_ (ちゃおっす!







「凄い………こんなに広くて、こんなに人が…………」




 蒼天本部の中に入ったマナリノは唖然として辺りを見渡している。

日に日に数が増え、蒼天の総数は現在10万人近くにもなる。

その為蒼天本部の巨大な城塞の中には凄まじい数の兵士や内勤の者らが忙しなく行き来している。




 一般の者からすればその雰囲気だけでも圧倒されるのは間違いない。

そして、通りかかった者らは皆アルスを見つけて立ち止まり礼をする。

だがそれは畏まりすぎるものではなく、皇太子相手にしては少し軽率ともとれる態度である。

しかし、それは蒼天では当たり前のことだった。

皇太子アルス本人が無駄な時間を使うなといつも言っているし、確かに蒼天の面々は常に忙しい。

その為いくら最高責任者であり絶対的な立場の皇太子であろうと本部内では挨拶にあまり時間をかけない。




「皆さん………凄く忙しそう………なのです」


「あぁ管理職の者達だけでなく、末端の者らでも蒼天では業務は多岐に渡るからな。実際忙しいんだよ」


「凄い………のです」




 驚愕続きのマナリノを連れ、ローナの執務室を目指していく。

すると前から細身でオールバックの魔人族の男が何人かの部下と話しながら歩いてきた。

その理知的な雰囲気は正しく文官なのだが、纏う雰囲気の中には武官としての強さも感じる。

マナリノはそんな男を見て、息を呑む。




「これはこれは殿下……どちらに?」


「ちょっとローナの所にな。バロン……この子は俺の学友のマナリノだ。マナリノ…彼が蒼天の軍団長、バロンだ」


「初めましてマナリノさん。大魔帝国皇太子直轄軍蒼天の軍団長、バロンと申します」




 アルスの紹介で紳士な雰囲気を作りマナリノに手を差し伸べるバロン。

一連の動作がとても様になっていて、格好いいとアルスですら感じてしまった。

さすがは、バロン。




「はわわ………千眼のバロン様………ま、マナリノです………」




 あわあわしながらマナリノが慌てて手を服でごしごし拭いて握手を交わす。

が、千眼?とアルスは首を傾げる。




「千眼てなんだ?」


「ば、バロン様の異名です」


「バロンって千眼て呼ばれてるのか?」


「私も初めて知りましたね………千眼ですか………はて?」


「バロン様は北の大陸だけでなく多くの大陸の情報を集め、その精密さで世界の全てを知る………なので千眼と呼ばれているのです」


「………あながち間違ってないな。出処は蒼天の兵士か?」


「………そこまで大層な者ではないのですがね……ははっ」


「バロン様の偉大さは皆が知っている……のです」


「バロンがそこまで評価されているのは、嬉しいことだな………」


「少し気恥ずかしいですが……」




 そう言って困った顔をするバロンだが、蒼天設立から常に最前線で努力し続けてきた姿を知っているアルスは民衆のその評価をとても嬉しく思った。

千眼のバロン………うん、良いよとても。



 大陸内外での戦争はないが、それでも一揆などは数多起こっておりそれを常々制圧し続けているのも蒼天であり、特に革命軍が出来た時の話も有名な為、蒼天はそれなり以上の知名度になっている。

それが異名の原因なのかもしれない。





「あ、そんなことよりバロン………ローナは執務室か?」


「総帥は執務室に居るはずです」


「わかった……そしたら執務室に……と、バロン………例の件だが、もう少し範囲を広げてくれ」


「…………かしこまりました」





 バロンと分かれ、さらに歩いていく。

蒼天本部は相当に広い為すぐには目的地につかない。

普段なら転移を使うのだが、マナリノは本部内を見たいだろうからとアルスはあくまで徒歩で向かっていた。




 すると今度は前から鎧を着た兵達が歩いてきた。

数にして数十人。

中でも真ん中の三人は他の者らより少し前を歩いておりその雰囲気も他の者とは逸脱している。




「殿下ーっ!なにしてるんですかあ?」




 一際大きな正しく巨人のような男が見た目通りの大きな声で叫ぶ。

いつも通りなのだが、声の大きさはもう少し絞って欲しい。

部下の兵達や、隣の二人も嫌そうだ。




「ガイゼン………相変わらず声がデカいな」


「ガッハッハッ!!!身体もっすよ!」


「ガイゼン………本当にいつになったら殿下に対する口の聞き方を理解するんだ?部下の前だぞ?」




 ガイゼンの隣で金髪の優男、レオナルドが溜息をつく。




「殿下は、んなこと気にしねぇよ!レオナルド」


「殿下が気にするか気にしないかではない!!」


「ガイゼンさん………そろそろ落ち着きましょうよ。隊長なんですから」




 レオナルドと反対の隣からとても小柄な身体に大きな魔導銃を肩に担いだエルがそう言う。

あいかわらず後輩肌だが、今では狙撃隊の隊長であるエルもまたかなり指揮官の顔になってきた。




「………エルに言われると……なんか、肩身が狭いな」


「それはガイゼンさんの身体がデカいからですよ」


「ガッハッハっハッ!!!!エル!!!お前面白いな!!!」




 相変わらずといった所である。

忘れていたが隣のマナリノを見ると、目を見開いて固まっている。




「レオナルド、ガイゼン、エル………この子は俺の学友のマナリノだ。ゆくゆくは蒼天に入りたいらしい………今日は見学だ」


「ほう………蒼天希望ですか。ならなおさらちゃんとしろガイゼン!あ、俺は蒼天壱番隊隊長のレオナルド……宜しくねマナリノちゃん」


「………はっ…………剣聖レオナルド様………」


「ほう………レオは剣聖って呼ばれてるのか」


「な、なんですそれ?」


「いや、バロンも民衆に千眼て呼ばれてるらしいぞ。で、レオの異名は剣聖………なんだろ?マナリノ」


「はい………その剣捌きはまるで舞のように美しく、さらにその整った顔立ちも相まって剣聖と呼ばれている………のです」


「…理由が……恥ずかしい」




 本気で照れた顔のレオナルド。

隣でガイゼンがニヤニヤとしている。




「よう!マナリノって言ったか?俺は弐番隊隊長ガイゼンだ!宜しくな!!」


「ぼ、暴君……ガイゼン様」


「ふはっ………暴君…………実に………良いな」




 暴君と聞いて今度はレオナルドがニヤニヤして笑いながらガイゼンを見る。




「誰が暴君だ……」


「戦場で敵を次々に薙ぎ倒し、その歩む道に一切の障害なし、誰も止められない暴れる獅子………それが暴君の所以と聞いているのです」 


「………お、おう。」


「いや、当たっているんじゃないか?割とそのままだろ?なぁレオナルド」


「……はい殿下。正しくその通りかと」


「良いな………異名」




 困惑するガイゼンと、したり顔のレオナルド、羨ましそうなエル。

三人は三者三様の顔をしていた。




「僕は狙撃隊隊長のエル!宜しくね」


「………やはり銃王エル様でしたか………」


「銃王??」




 今度はエルが目を見開いた。

銃の王か………なるほど。




「エル様の狙撃はどこからでもどんな距離でも必中すると噂なのです。だから銃王様と呼ばれているのです」


「ふふ 銃王………銃王………うん、気に入った」




 エルは嬉しそうに銃王の響きを噛み締めていた。

レオナルドとガイゼンはそれを見て息子を見るような生暖かい視線を送っている。




「………凄い…………蒼天の軍団長様に、隊長様達にまで会えるなんて………」




 マナリノはマナリノで好きなアイドルを目撃したようなふわふわした顔でニヤついている。

ローナファンというよりは箱推しなのだろうか。




「マナリノ………そろそろ行くぞ」


「は、はい!」





 隊長三人衆と解散してまた歩みを進めるのだがマナリノはまだ少し上の空の雰囲気だ。

ローナにも会ったら本当に心臓は大丈夫なのだろうか?

  




 後少ししたらローナの執務室というところで前から最近少し身長が伸びたがそれでも小柄な兄妹が歩いてきた。

黒髪の方が兄である戦鬼衆の主席、ロキ。

白髪の方が妹である戦鬼衆の次席、ロナ。

小柄な割に凄まじい魔法を扱う魔導師兄妹である。




「殿下!!お久しぶりです」


「殿下ー!!ただいまです!」


「二人共戻ってきていたのか。遠くまでご苦労だったな」


「遠かったけど面白かったですよ!」


「うんうん………美味しいお魚いっぱいでした!!」




 ロキ、ロナの二人は蒼天の任務で北大陸の最北端まで行ってもらっていた。

その為会うのは一月ぶりくらいである。




「お土産いっぱい買ってきました!」


「魔法で凍らせたお魚もいっぱいです!!」


「おー!それは楽しみだな………おっと、そうだ!マナリノ………こっちが戦鬼衆の主席のロキ、こっちが妹で次席のロナだ。二人共この子は学友のマナリノだ」


「ロキ!宜しく!」


「ロナだよー!宜しくねー」


「ば、爆撃のロキ様と、殲滅のロナ様……」


「爆撃?」


「殲滅?」


「おいおいマナリノ………この二人だけなんか物騒だな」


「私が付けたのではないのです………」




 爆撃、殲滅。

いや、あながち間違ってないな……。

本当に出処はどこなのだろうか。




 とりあえずあとでロキ、ロナとも話す時間はあるのでローナの元に向かうことにした。




「ちょっとローナのとこに行くからまた後でなロキ、ロナ」


「かしこまりました」


「了解でーす」




 何度目かのふわふわ顔のマナリノを引っ張り歩みを進める。




 今日に限って凄い幹部達に出くわすな〜とアルスは苦笑する。

もしかしたらマナリノの願いが通じたのかもしれない。




 窓からの光りに照らされる廊下を進むアルスは、少し後ろからついてくるマナリノの方を見やる。

そしてまだどこか上の空なその顔を見て、まぁ喜んでるならよかった………と微笑むのであった。












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