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78話 行方不明事件







「アルスです。お呼びですか?父上…」




 魔帝城の魔帝執務室に呼ばれたアルスはコンコンッとノックをして声を掛ける。




「入ってくれ」


「はい…」




 執務室に呼ばれるということはあまり広めたくない話なのだろうか、とアルスは考えている。

執務室には防音の魔法が掛けられているのだ。

そして、扉を開けて魔帝であるシルバの部下がいないことでその疑念は高まる。

通常ならそこには秘書や部下が何人か居るのだが誰もいないということは人を遠ざけたのだろう。




「何かあったのですね…父上」


「察しがいいな…相変わらず。まぁ座れ」



 

 執務席から立ち上がり、ソファをしめす父上に従いアルスは腰掛ける。

シルバはササッと手際よく紅茶を用意して、アルスの前と自分の前に置いた。

大魔帝国の魔帝が紅茶を自分で入れるとは身内以外なら絶句するだろう。




「美味しい……さすが父上」


「ははっ…そうか!今度お前にも淹れ方を教えよう…ロクシュリアも喜ぶぞ?」


「……ぜひ」




 婚約者のロクシュリアの名前を出され苦笑するが、お世辞抜きで淹れるのが上手いのでぜひ今度教わろうと決めた。




「……アルス。1年だけ学園に通ってくれ。と言っても最終学年からの編入となるが…それでも良いのなら」


「理由をお聞かせ頂けますか?それに、なぜ1年なのです?」


「そもそもアルスに教えることなどないだろ?皇太子としての執務もあるし、その後は帝国内も回って欲しい。お前の希望だった学園入学が有耶無耶になってしまっていたのは申し訳ないと思うが……1年というのが条件になる。お前を遊ばせられるほどうちは暇ではないだろ?」


「なるほど……確かに。学園で基礎などを教わる時間は無駄ですね。それは理解しました。で、なぜ有耶無耶になっていた学園入学をいきなり許可するのです?」




 アルスの質問にシルバは顎を擦りながら眉間にシワを寄せる。




「……どうもきな臭い事が起きてるようだ」


「……きな臭い?」


「学園の生徒が相次ぎ行方不明となっている」


「行方不明事件ですか?」


「それも行方不明になった者らに同じと思える特徴がない。成績上位者の魔人族少年、成績下位者の獣人族の少女、生徒会役員のエルフの少女、新入生の魔族の少年……」


「なるほど……調べさせても怪しいところはなく、犯人も犯行理由も分からないのですね。潜入調査ということですか?」 


「わざわざ皇太子に頼むことでもないのだがな。学園に行きたいと言っていたお前の思いと、その技量、推察力を考え妥当だと考えた。どうする?」


「いきましょう……罪のない少年少女が行方不明となれば学園を持つ我が国の信用にも関わるでしょう。それに、学園という響きはとても好ましいですから」


「まぁそう答えるだろうとは思っていた。編入手続きは既に済ませてある。制服なども用意済だ。」


「………父上。確かに私は行くと決めましたが、先にすべてを用意するのはどうなんです?なんの為の意思確認なんですか……」


「断るという行動を取る事はないと確信していた」


「……はぁ。いつからです?」


「一月後だ……」


「あのー直近過ぎません?引き継ぎとか…」


「ローナとバロンにも既に手回しはしておいた!それに新入生が入ってくる入学式のこのタイミングが一番都合がいいのだ」


「父上っ!………はぁ。分かりましたよ。一月後ですね」




 呆れながら頷くアルスに、ガッハッハと笑うシルバ。

この人はこういう人だな、と思い出したアルスは何を言う気ももうない。  



 それに確かに断るわけはないのだ。

しかし、父上の手のひらで踊らされている感覚だけが解せない。




「早期解決しても1年はどうせ通うのだ……楽しんでこいアルス。それと、執務もこなせよ?」


「学生になる我が子に言うことです?」


「学業をこなしながら、皇太子の執務をこなすなんてアルスなら造作もないだろ?」


「………問題ありません。」




 したり顔のシルバに再度溜め息をつきながら執務室を後にするアルス。

すぐに外で待機していたローナにジト目を送る。




「なぜ黙っていた?」


「殿下が学園に通うことですか?」


「………どう考えてもそれだろ」


「………秘密にしていたほうが嬉しいかな〜と」


「お前の仕事を少し増やすようにバロンに伝えておこう」


「なっ!?なぜです?」


「いやなに、その方が嬉しいかな〜と」




 そう言って前を歩き出すアルスに、ローナは意趣返しされたと頭を抱える。




 正直な話言おうか迷ったのだが、魔帝陛下に黙っていてよいと言われたのを鵜呑みにしてしまった。

魔帝陛下がこの国の長でありその意思に従うのは当然なのだが、直属の上司にあたる皇太子、その腹心である自分は確かに伝えておいたほうがよかったかもしれないと思う。

が、執務が増えるのはとても困る。



 

 なんとか機嫌を治してもらいたいとローナは祈るばかりである。



 














 次の日、部屋で学園の制服に袖を通してみた。

我ながら結構似合っていると感じた。



 自室の鏡の前でその姿を眺めるのだが、扉の方から視線を感じた。

そしてそちらを見ると瞳が8つ。



 俺は少し呆れながら扉に向かって声を掛ける。




「何してるんです?母上、母さん、それにメルとロクシュリア」


「「「「はっ……」」」」


「気付かないわけないでしょ?」




 アルスの冷めた言葉に冷や汗をかきながら件の四人が現れる。

なぜロクシュリアまで居るのかは本当に聞きたいのだが。




「なぜ四人で集まって見ていたのです?」


「あの人が制服を今日渡すと教えてくれたので……マリーに言ったら…」


「なっ!?私のせいではないですよ!」


「お母さんからそれを聞いて……」


「私もお母様方から速達を貰いまして」


「それで覗きに来たと?」


「「「「ごめんなさい」」」」




 頭を下げる四人。

俺はどれだけ情報が漏洩してるんだ?と父上のニヤリ顔を頭に浮かべた。




「まぁいいでしょう原因は父上のようですし」


「よかった……それにしてもとても似合っているわ!息子の制服を見られるなんて!!」


「ローゼンの学園の制服よりも洗練されていてアルスに似合っているわね」


「格好良いです兄上!」


「とても……良いですアルスくん。脳内に保存します」


「そこまでまじまじ見られると恥ずかしいのだが…」




 にやにやと見つめてくる四人の視線に晒され、とても恥ずかしい。

だが母二人の喜ぶ顔と、妹と婚約者の褒め言葉は嬉しくもある。




「とりあえず一年は見られるんだから、今日そんなに見なくても……」


「夏服も見たいわ!」


「楽しみね……」


「兄上……その姿を絵画にしても?」


「メルちゃんそれ良い!!」


「絵画にするのはやめてくれ……」


「「えぇー」」







 二人だけ方向性が異なるのが気になるが、我ながら今後の学園生活が楽しみでならない。














やっと、書く予定でずっと眠っていた魔帝国の学園編です。

どこまで長くなるかは分かりませんが前の学園編よりは長く続けたいと思います。

学園………わくわく



ついに、ブックマークが99。

多分今日には100を超えると思います。

昨日は閲覧数が5000を超えました。

凄く嬉しいです\(^o^)/

今後とも(転生捨て子)を宜しくお願いします!



そして、ブックマーク、いいね、☆の評価お願いしますm(_ _)m

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