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71話 闇ギルド×友人






「もう帰るの?」


「もう少し居てもいいニャ」


「いや、やることがいっぱいあるからな」



 数日経ってアルスはクロと帰還する事を告げた。

フレイもバステも少し寂しげな顔をしている。



「たまには下界にも遊びに来いよ」


「いいの?」


「それは良いニャ!」


「まぁつってもここの平穏は保ちたいから天空都市については秘匿しとくから、下界に来ても女神云々とかは隠してくれよ?」


「それは…大丈夫」


「任せるニャ!!」


「ま、俺らもまたこっちに遊びくるよ」


『クロはここすき〜』




















 何事もなかったように魔帝国に帰還したアルスとクロはとりあえず天空都市のことは秘密にして生活に戻った。



 蒼天の本拠地である無血城塞の執務室に籠もるアルスは溜まっている書類の多さに嫌気が差していた。

傍らではすっかりできる女になったローナもまた書類の山と戦っている。



 そろそろ一息つくか……とアルスがペンを置いたタイミングでコンコンッと執務室がノックされた。



「執務中失礼致します殿下。バロンです」


「どうした?入っていいぞ」


「はっ!」



 入ってきたのは軍人といった雰囲気が強く戦闘面でもかなり強いのだが、何かと色々な雑務を押し付けられ文官のような仕事も際限なくこなす働き者のバロンである。



「殿下……報告が何件かあります」


「そうか……聞こう」


「まず、邪神の使徒並びに、聖信教会についてですが……あの戦い以降表立った動きは見せていません。力が及ばないことを悟り、蓄える時期に入ったと推測しています。」


「そうか……まぁ一人はほぼ死亡、他二人も相当深手だったろうからな……こっちも今のうちに力を蓄えておこう」


「はっ!蒼天の戦力強化をさらに進めていきます。それと……殿下、」


「ん?」


「大事な報告があります」



 畏まってアルスを見やるバロン。

その姿に、何事だと首を傾げる。



「どうした?」


「〜〜〜の所在が分かりました」


「なっ!?本当か?」


「はい……これがその書類です」




 行方不明になっていた友人の一人の所在………。

アルスは少し震える手で書類を受け取った。

そして、読み進めていくとどうやら彼が元気らしいのが分かり少し頬が緩む。

だが、続けて読んでいくとアルスの眉間にシワが寄っていく。




「バロン……蒼天の情報を疑う訳では無いが、これは事実なのか?」


「はい、間違いなく事実です」


「なんであいつが………闇ギルドを治めているんだ………」




 そう、そこには友人が現在…南大陸で大きな勢力を持つ新興闇ギルド【A&T】という組織のボスであると記載されていた。

意味不明過ぎてアルスは言葉を失う。




 ………お前、何してんだよ。


















「だーかーら、てめぇみてぇなガキがうちの組織に入れるわけねぇだろうが!!!」



 大声で怒鳴り散らす大男と、怒鳴られる見窄らしい格好の少年。

それを見ても街の人間達は何も言わない。

魔族との大戦の後に起こった獣人との大戦。

それによって南大陸では多くの国が滅び、殆どの人々は困窮を余儀なくされている。

復興は進んでいると上の人間は声高らかに言うが、下の人間達にとっては何も変わらなず、それどころか生活は日に日に劣悪になっていた。



 盗みや強盗、強姦に人身売買、そんな事は今や当然に起こる。

平和な日常はもう戻っては来ない。

だからこそ強面の大男が少年を怒鳴っていても、周りの大人は何も言わない。



 しかも、大男は間違えなくカタギではない。

スキンヘッドで大柄、顔には傷。

小綺麗なダークスーツの襟には金のバッジ。

皆はその金バッジを知っている。

この街を治める闇ギルド【A&T】エーティの印。

しかも金は幹部の証である。

下の者らは銀のバッジ、銅のバッジを付けている。

素材の違いは格の違い、刻まれた【A&T】の文字は威嚇と権威の両方だ。




 すでに、闇ギルドを咎める者も殆どいないのが現状でありこの街ももはや亡き国の街である。

そもそも国に属してすらいない。




 だが、街の人々はA&Tを毛嫌いはしていなかった。

他の闇ギルドなら本当に何でもありだ、殺し脅し盗み。

それなのに彼等はそういった事はしなかった。

やっているのはもっぱら他の街の闇ギルドが襲ってきた時の対処と二度とさせないように熾烈な報復。

自分達の支配する街を守り、時に犯罪を犯した者を処罰し、他の闇ギルドから街を守る存在。

身寄りのない子供を育てる施設まで作っているのだ。

本当に闇ギルドなのか?と皆が困惑していたが、今ではこの街で無くてはならない存在である。



 だからなのだろう。

大男が怒鳴っていてもあの組織の幹部なら、きっと少年が悪いのだろうと皆が納得する。

最近街に来たばかりの者はその話を聞いて、いや………闇ギルドとは?と首を壮大に傾げたらしい。




「でも……お金を稼がないと!!妹が病気なんだ」


「……チッ!!寝言は寝て言え坊主……」



 大男が少年の小柄で細い体を胸ぐらを掴んで持ち上げた。



「そういうときはな!!大人に頼りやがれ!!!!!」



 大男の凄まじい怒号に周りがビクッ!!と戦慄するが、その怒声と内容のギャップに目を見開く。



「てめぇみてぇなガキが!!何ができんだよ!!!妹守りてぇのに、それで闇ギルドに入って死んだら元も子もねぇだろうが!!妹が病気だったら、てめぇが働くしかねぇのか?周りの大人が全員どうしようもねぇクズだとでも思ってんのか!?あぁん?おめぇらみてぇなガキはな!!周りの大人に頼っていいんだ!!!頼れ!!クソガキ!!」


「グス……グス………でも、」


「おめぇらみてぇなガキを守るためにうちのボスはうちの組織作ったんだ。ボスに恥かかせるような事ほざくな……妹うちのアジトに連れてこい。うちには医者も薬師もいる。」


「お金が………」


「何度言わせんだクソガキ……んなことてめぇみてぇなガキは気にすんじゃねえ!」



 そう言って大男は少年を地面に下ろした。

周りの大人や子供もその光景を見つめている。

それに気づいた大男は少し照れくさそうに強面の顔に苦笑を浮かべた。

そして、少年の髪をガシガシと撫でた。



「さっさと、妹連れてこい。そもそも立てるか?運べねぇなら…」


「大丈夫………です。僕が連れていきます」



 少年の瞳には大切な人を守ると決めた男の熱意が籠もっていた。

大男はその瞳を見て、撫でるのを少し強める。



「そうか……なら連れてこい」


「はい!!!」



 走り去る少年。

残った大男の後ろにいつの間にかダークスーツにロングコート姿のオールバックの青年が立っていた。

その青年の顔にも大きな傷があった。

しかし、太陽に照らされて光り輝く緑の髪はとても美しかった。



「ダルフ……お前ってほんとに口下手だよな。言葉遣いさえ治れば紳士なんだがな」


「やめてくださいボス………俺はただの裏の人間ですよ。まぁでも貴方のお陰で少しは良くなりましたが…」


「確かに良くなったが、自分で言うな。そろそろ、帰るぞ」


「了解です、ボス」






 ボスと呼ばれた緑髪の青年と、スキンヘッドの大男はその場を後にする。

その一件でさらにA&Tの評判が上がったのは言うまでもない。

だが、大男のダルフはそんな事を気にしてはいなかった。














ついに、久々の登場回ですね。

誰から……と思った方も居たと思いますが、色々話の展開的に考え彼からにしました。

おかえり!!○○○!!!



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