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70話 良い未来






 どこかの国の王城かと思う程の客室を借りて、そこで一泊した。

バステ曰く、実際の時間ではまだ1時間も経っていないそうだ。

今後二度と入れないかもしれないが、この場所に通えるなら一日の休みで何日分の休暇が得られるのだろうか……とアルスは夢想して頬を緩める。

大帝国の皇太子、さらには創造神の使徒であるアルスは相当に多忙である。





 とりあえず少しの間ここに滞在しようと考えている。

フレイとバステは好きにするといいと言ってくれているし、クロは天空都市内を飛び回り果物を食べバステから貯蔵しているという異世界産の動物の肉なんかを貰いながら色んな庭園を満喫している。

ということでアルスは、今日は一人で内部を探索する予定だ。






「どこに行きたい?」



 廊下を歩いていると少女姿のフレイに遭遇した。



「んー、面白いとこある?」


「……書庫」


「なるほど………異世界の本か。しかも、女神所有の………見たいな」


「じゃあ行こ」



 そう言ってフレイは歩き出す。

少女姿になるとフレイの喋り方も変わるなーとアルスは不思議そうに後をついていく。

アルスもまた大人姿だと敬語になるのに、少女姿だとタメ口である。



「なぁーフレイ」


「ん?」


「良いのかよ女神の書庫だろ?」


「んー、奥は入れないけど、元の世界の人間が書いた本とかも多くあるからそれなら見てもいいと思う」


「と思うって雑だな」


「だってここに入った人間なんて殆どいないから、元の世界でもね」


「なるほど……。そもそもここは誰が作ったんだ?」


「あー、あの方だよ。私の上司」




 あの方ってのはフレイとバステを天空都市ごと異世界に避難させた神か。

にしてもこれだけの天空都市を創るってさすがに神様だな、とアルスは苦笑する。




「創造神……見てもいいのか?異世界の文献なんて」




 創造神に語り掛けて、アルスは首を傾げた。

いつもなら返事があるのだが返事がない。



「この世界の創造神はここの中には干渉できない」


「え?」


「ここはこの世界にあってこの世界ではないから……」


「………哲学的だな」



 なるほど、創造神も関われない場所なのか。

とんでもない場所に来てしまったのかもしれないな。










 フレイに連れてこられた書庫は、魔帝国の超巨大書庫よりもさらに大きく、前世的に言えば東京ドームくらいあるのでは?と思うレベルのものだった。

適当に歩けば間違えなく迷子になるのが必須である。

本棚の街、と呼ぶべきだろうか。



「圧巻だな……」


「私もここの本を全部読むのにかなり時間が掛かった」


「なっ!?全部読んだのか?」


「今は138周目……」


「………さすがは女神。これを138回も見直せるって凄いな」


「何が読みたい?」


「どこに何があるのか分かるのか?」


「138周目………」


「なるほど………」



 自信というより確信の瞳を向けてくるフレイにアルスは苦笑いを浮かべて頷く。



「そうだな……その世界の歴史とか、魔法とかそんなんはあるか?」


「ありすぎる……。じゃあオススメを紹介する」


「あぁ、頼む」




 書庫の街の中には、もはや本当に街なのだが本を読むためなのか木のベンチが置かれた噴水のある公園まであった。

その公園にフレイの持ってきた本を念動力で浮かべて運びながら向かった。




「不思議な魔法……」


「念動力か?」


「……うん。こっちの世界には他にはどんな魔法が?」


「念動力はオリジナルなんじゃないかな。固有魔法だし」


「固有魔法?」


「あぁ、その人のみ、もしくはその人の系譜の人にしか扱えない魔法だな。俺は他にも二つ固有魔法を持ってる」


「後で見せて」


「あぁ、でも見せて面白いものでもないぞ。全知全能は俺にしか理解できないだろうし、無血城塞はここに出すと諸々問題が起きるし」


「じゃあ説明でいい」


「わかった。他の魔法は……んー俺がよく使うのは転移かなー。重力、空間、時間の魔法は使えるやつなんて一握りだろうよ。普通の人は自然系統、火とか水とかの魔法を使うかな?」


「重力、空間、時間………神の業」


「魔法ってのは神の力を真似してるんだろ?」


「そうであるし、そうではないけど。私の元の世界ではそこまでの魔法は人は扱えなかった。だから、アルスはここに入れたの?」


「そうだな……まぁでもここに入れるのはこの世界でもやっぱり一握りなんじゃないかな。あの結界なんて、初めて見るレベルだったしな」


「本当に分からない。あの結界は女神である私でも理解できないモノなの。作ったのはもちろんあの方」


「なに!?フレイでも理解できない?」


「そう……バステが昔、この世界にも入口を創ったからそれを通してなら侵入出来る可能性もあるけど…」


「やっぱりここってかつて古代の魔族が造ったって噂のあの天空都市なのか」


「魔族が造った?……なるほど、そう捉えられているんだ」


「ちなみに、遺跡にあるっていうバステが作った魔法陣から入ってきたやつはいるのか?」


「いや、いない。この世界ではアルスが初」


「なるほど……ローナが前に言ってた天空都市に初めて到達したのが俺か」


「うん、キミは不思議」





 






 会話を止めて本を読みだしたアルス。

フレイもまた隣で本を読んでいる。

無言の時間だがかなり落ち着く空間である。



 それにしてもフレイの元の世界の魔法ってのは結構簡潔だな。

基本的に使える魔法の属性は一人一種類だし、凄まじく強いっていう魔法はフレイの言った通りあまりない。

あくまで神から与えられた力を少し扱える…程度だ。

ただ、こちらにはない錬金術や魔導具技術はかなり発展していたようでそれはそれで面白かった。

フレイ曰く数千年前にこちらに来たらしいからこの本もそれくらい前のモノのはずだが文明レベルではこちらより進んでいた感じがする。



 わかりやすく言うなればファンタジーと前世地球の中間からサイバーパンクな世界に進んだような世界だ。

魔法に発展の限界があった為に、魔導具や錬金術が発達した世界……なるほどもって面白い。



 魔導飛行船、魔導空母、人型魔導人形、単語だけでも胸が踊る。




「なんか楽しそうだねアルス」


「いや、フレイがいた世界は面白いな。空飛ぶ魔導具の飛行船とか凄いぞ。その技術がこっちにもできれば革命だな」


「たしかに、この世界よりもそういう技術は優れていたかも……」




 しかし、歴史の本を読むとその発展した魔導具による戦争の悲惨さを感じた。

魔導銃や、魔導砲、魔導飛行砲撃艦、そして魔導大規模爆撃弾。

その技術はその世界の戦争の形を変え、ついには大規模な世界戦争が何度も起こった。

数万、数十万の命が簡単に失われていく。



 少し前世地球に近い世界感なのだろうか。

科学技術と魔導具技術は似ている。

街は発展し高層建造物が増え栄えていく一方で戦争もまた進化していく。



 魔法はどこまで言っても人の身で行う奇跡……それはある意味で自分の死とも密接だが、科学や魔導具での大規模攻撃はボタン一つで多くの敵を殲滅することができる。

自分が直接殺したという実感が薄い分、罪悪感も少ないのだろうか。

あくまで私はボタンを押したにすぎない。

魔導具を作った者や、押せと命じた者が悪い。

それが人の死という概念の価値を下げたのだろうか。



「ここまで栄えても人は争うんだな」


「人は、とても愚かで狡猾……」


「願わくばこの世界では平和な世を作りたいものだな」


「それができたなら……いつか、私にこの世界を案内して」


「……いいぞ。平和で笑顔に溢れる、そんな世界を作ろう。そしてそれが続く未来も。そして、フレイに良い運命を見せよう」


「約束……」



 フレイがそう言って小指を出してきた。

その約束のやり方は女神でも使うのか…と思いながらアルスも小指を出す。



「あぁ、約束だ。」


「じゃあ、アルスがいいよって言うまで私の運命を視る力は封印する。」


「え?」


「その方がいい」


「封印していいのか?」


「前の世界では封印してた。こっちに来た時その封印も解けたけど、誰とも関わらないから放置してただけ。だから、大丈夫。視えなくても困らない。この世界の未来が幸福に包まれたら教えて……そしたら私はその良い未来を視てみたい」







 夢見る少女のような顔をするフレイ。

アルスは改めて自分の進む道に対する覚悟を決めるのであった。






















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アルスも泣いて喜ぶかも!?

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