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66話 歴史の1ページ






 ベルドールもガイゼンも難なく相手を圧倒しているのを感じながらアルスは銀仮面と相対していた。



「お仲間はもう死にかけているが大丈夫か?」

「…………」



 銀仮面はレイピアのような魔剣を抜いてこちらをジッと見つめている。

2人はまだ戦いの中にはいなかった。

アルスはここで少しでも会話で情報が欲しかったが、銀仮面は一切声を出していない。

体つきと長い髪で女性なのは分かるが、ステータスが見れないのは危険な感覚を覚える。

今まで見れなかったのは父上と師匠くらいだ。




「まだ我々はあなたには勝てないようですね」




 初めて聞く銀仮面のその声はどこか懐かしくもあるが、知らない声だと感じた。

なぜ、少し懐かしく思ったのかはわからない。

女性というより少女のそれである。




「俺が誰だか分かるのか?」

「邪神の使徒……ですね?」

「はは お前も俺からしたら邪神の使徒なのだがな」

「………それはどういう?まぁ話はここまでです。一旦引きます」

「逃がすと思うか?」

「……さようなら。邪神の使徒さん」




 銀仮面がなにやらネックレスのような魔導具を取り出し魔力を注ぐ。

すると次の瞬間……銀仮面とベルドールとガイゼンと戦っていた黒仮面…そして先程叩き斬った死体が消え去った。




「ったく。厄介な魔導具を使いやがって」




 アルスは消えた空間を一睨みして溜息をつくと、切り替えよう、と未だ残る聖信教会の軍勢を駆逐するべく動き出す。



「敵の使徒は逃げた!!お前ら…残った軍勢を駆逐しろ」

「「「「おぉおおおおお!!!!」」」」



 拡声魔法で指示を出すと今まで凄まじい勢いで敵を倒していた蒼天の軍勢がさらに勢いを増す。









『逃げられたか…』

「敵対してみて分かったが銀仮面以外の使徒はまだそこまで危険なレベルではないな」 

『で、あるな……』

「銀仮面の素性は?」

『邪神が隠してるようじゃのう。見れんかったわ』

「……戦いはまだまだ始まったばかりだなー」

『すまんな……迷惑をかけて』

「らしくないなー創造神」

『わしとてお主の新たな人生を波乱に巻き込んで申し訳ないと思っておるさ』

「ま、そこまで気負ってないさ」












ーーーーーーーーーーーーーーー




 それは正しく圧巻の一言に尽きる。

義勇軍としていきなり現れた軍勢は敵将を一瞬で打ち破り逃走させ、残った聖信教会の軍勢も軒並み圧倒していった。



 伝説を見ているのか?



 そう思う誰しもが感じる程の圧倒的な蹂躙。

そして、滅亡を予感していたモルドナの兵士達は膝を付き勝利を噛み締めた。









 モルドナ王国の王宮にもその完勝の報はすぐにつく。

国王と大将ヴァルソアは、賭けに勝ったと共に喜びを噛み締めていた。




「陛下………なんとか、乗り切ることができましたね」

「この恩は生涯返さねばいけないだろうな」

「……はい。国としても個人としても、この恩は忘れることはできないでしょう」

「ベルゼビュート大魔帝国……ここまでの圧倒的な強さがまだ片鱗に過ぎないとは。正しく我々とは天と地の差があるな」

「あの戦争から南大陸と大魔帝国とは国交を殆ど結んでいないですが、我々は率先して国交を結びましょう……」

「そうだな、その話しも次に皇太子殿下が来た際にはするとしよう」



 滅亡の危機は去った。

だが、皇太子が前に語った邪神の話は今後も世界を巻き込んで続くだろう。

その際はぜひ協力しよう、2人は違う立場で同じ思いを胸に抱いた。










ーーーーーーーーーーーーーーー




 モルドナ王国の王宮にある応接室でソファに座るアルスとその後ろに控えるローナの二人は同じくソファに座るモルドナ国王とその後ろに控える大将ヴァルソアと向かい合っていた。




「どうお礼を言えばよいのか……」


「頭を上げて下さいモルドナ王陛下。」


「いや……我々は正しく命を、国を救われた。どれだけ頭を下げても足りぬ。」




 強情に頭を下げ続けるモルドナ王にアルスは苦笑を浮かべる。




「陛下……皇太子殿下が困っていますので………」


「あぁ……。そうだな」



 大将ヴァルソアが嗜め、やっとモルドナ王は頭を上げた。




「して、本当に金銭などはいらないのですか?モルドナ王国は確かに小国ですが、それでも誠意を見せる覚悟はありますよ」


「いえ……我が国はそれなりに栄えていますので。それにあまり表立って我々が活躍したという情報は流したくないので…」


「ですか……。邪神の噂を広めるのは確実にこなしますので安心して下さい。」


「お願いしますモルドナ王陛下」


「そ、それと……お願いしたいことが…」


「はい?」



 意を決したモルドナ王と、本当に今それを?と額を押さえるヴァルソアを見て、何事かと訝しげに見つめる。



「いつか、魔帝国に赴く事は可能でしょうか?」


「へ?………魔帝国に来たいのですか?」


「我々人族は魔帝国に行くことは殆どありませんから……北の大陸を治める大帝国を一度見てみたいと……」


「なるほど……構わないですよ。時間がある時にでもぜひ連絡してください。私の転移魔法なら一瞬で行けるので」


「………本当ですか?ありがとうございます!!」



 少年のように喜ぶオジサマ国王を見てアルスは再度苦笑する。

ローナやヴァルソアもなぜこのタイミング?と頬をひくつかせている。



「では、またいずれ」


「はい……ありがとうございました。アルス殿下」



 和やかに終わった南大陸の小国の王と、北大陸を統べる魔帝国の皇太子の話し合い。

これは新たなる歴史の1ページに過ぎない。


















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