60話 聖信教会
軍の人数が少なすぎたので、変更致しました。
2023.7.26
「聖戦か……なるほど言い得て妙な話だ。しかし、だとするならこちらも聖戦として臨むしかないのか…。南大陸の被害状況は?」
「すでに3カ国壊滅しているようです。」
「すでに3カ国だと!?聖信教会の戦力はそこまでなのか?」
「いえ、邪神の使徒が4人いるようです。」
「使徒クラスが4人……なるほど、それは危険だな。」
ドラゴンロードでの修行中にきた報告を聞いてすぐに、魔帝国に戻ったアルスは蒼天本部にある執務室でローナから報告を受け、顎に手を置き、んーと唸った。
自分自身も使徒になり、かなりの強さを得たが邪神の使徒は4人。
それは危険と判断するのも当然であった。
既に南大陸で3カ国。
まずは、使徒の力がどれ程なのかを把握しておきたいが…
「ローナ…幹部を全員招集し、会議室に集めておいてくれ。先立ってバロンをすぐにここに…」
「はっ!」
一人になった執務室の中、椅子に背を凭れさせ天井を見やるアルス。
「あっちの使徒は俺と同格ですかね?」
『それはないであろうな。アルスと同格の使徒を4人用意する程の力はあやつにはない。』
「4人同時なら?」
『それでもアルスの方がまだ上であろうな』
「まだということはいずれは超えられる可能性があると?」
『成長補正はそれだけ脅威だ』
「早急に叩くか、それともさらに力をつけるか…」
『もしくは強大な味方を得るか…であるな』
創造神の言う通りだとすればまだ邪神の使徒の脅威度は今の所そこまで高くはない。
こちらには父上もいる。
師匠も声を掛ければ助けてくれるだろう。
そして魔帝国軍に、蒼天も加えればこちらの戦力は最高峰ともいえる。
同じ創造神を信仰する者として獣人達とも共同戦線をしたいが、どうだろうか。
人族とは仲が悪いが、魔族とは良好な関係だとは聞いている。
そして、ルーズ陛下と師匠にも話に行かなくてはならない。
執務室に来たバロンにすぐに世界各地に散りばめた隠密を増やし情報をさらに集めさせるように伝え、それからアルスは蒼天本部の会議室に集まった幹部達を一通り見据えてから真剣な面持ちで向かい合う。
円卓の大きなテーブルと置かれた椅子。
上座に座るのはもちろん皇太子であるアルス。
右隣には蒼天の総帥であるローナ、左隣には軍団長バロン、バロンの横に軍団長補佐カイト、カイトの横から順番に、壱番隊隊長レオナルド、弐番隊隊長ガイゼン、参番隊隊長ジョセフ、狙撃隊隊長エル。
ローナの隣から、戦鬼衆主席ロキ・メルトバン、次席ロナ・メルトバン、三席ベルドール、四席ゼン、五席ステア、そして隠密隊から隊長である仮面の男クロウ。
幹部総勢13名が全員集結するのは久しぶりの事である。
「報告は各自聞いているとは思うが、今回…邪神の使徒が宣戦布告した。南大陸では3カ国が壊滅している。使徒の数は報告通りなら4人…」
「ふぅ…なるほど……使徒が4人とは」
アルスの言葉を聞き、レオナルドが溜息をついた。
「だが、創造神様曰く現在の力量なら四人合わせても俺のほうが強いらしいから今の所はそこまでの脅威はないだろう。」
「今の所は、というと?」
アルスにそう質問したのはローナである。
「邪神の使徒は成長補正というスキルを所持している。その成長度合いはかなりなモノであるらしい。つまるところ放置していれば…」
「脅威が増すと…」
ローナは納得した顔で頷く。
「で、あるならば早急に潰したほうがいいですねぇ殿下!」
ベルドールがニヤつきながらアルスを見やる。
戦闘狂というあだ名がつくほどにベルドールは戦いに常に飢えている。
戦が待ち遠しいのだろう。
「敵戦力の詳細は?」
「はっ…。使徒が4人…そして信仰者は日に日に増え戦闘に参加している者らは5万を超える程、それに加えて教会に与する国が現在で2カ国、その軍の合計で20万、合わせて約25万です。」
バロンを見て質問したローナにテキパキとバロンが詳細を答えていく。
アルスは思ったよりも多いなと、驚いた。
蒼天は現在壱番隊30,000、弐番隊20,000、参番隊20,000、狙撃隊5,000に、戦鬼衆が10,000の合計85,000人で構成されている。
魔帝国軍は100万近い戦力を誇ると考えれば少ない感じもするが、この世界では魔法などが主だった武装になる為いくら自力の低い人族とみても25万の戦力でもかなりな規模である。
しかし、アルスとしては蒼天だけで対処したいと考えている。
もし、戦場に行っている間に魔帝国内部に攻め込まれるといった失敗はしたくない。
そもそも攻め込まれる前に攻め滅ぼす、それがアルスの考えである。
「いくら相手が人族と考えても、定石であるならこちらも国軍から人員を数万程借りて挑むべきなのだろうな。」
「それはしない…のですか?」
ローナの問いにアルスは、重く頷いた。
「攻め込まれてからならそれもありだが、攻め込まれる前に攻め滅ぼしておきたい。だからこそ魔帝国の守りを減らすのは本意ではない。」
「いいですねぇ…25万の狂信者共など我々魔国最強ともいえる蒼天に掛かれば……」
「ガイゼン……敵を侮るのは良くないぞ」
俺の言葉に乗っかったガイゼンをレオナルドが嗜める。
「殿下……もし、やつら…邪神の使徒達が我々の想像よりも手強かった場合…、その数の差が致命傷になることはないですか?」
「レオナルドの意見もわかる。が、よくよく考えてみろ…5万の信仰者はただの一般人、2カ国の軍勢も急造の合併軍。それに対する我が蒼天は今や新設ながら国軍よりも練度が高いとまで言われている軍だ。それに、今回は俺も前線に参加する。」
「なっ!?殿下自ら前線など…」
「俺自身が一番の戦力だ。それに使徒同士の戦争に俺が参加しないわけにはいかないだろ?」
「ですが……」
「レオナルド……止めても無駄だとわかっているだろ?」
「そうだぜ……昔から前線で暴れまわるのが隊長……いや、殿下じゃねぇか」
「カイトさん…ガイゼン…」
「そういうことだ。レオナルド……俺は出る」
「分かりました……蒼天全軍での出撃ですか?」
「あぁそのつもりだ。まぁ陛下とも話し合ってからだが…また追って通達する」
「「「「はっ!!」」」」
「なるほど……であるか。つまり、こちらに攻め込んで来る前に蒼天全軍で出撃して殲滅すると?」
帝王以下魔帝国の大臣、軍幹部達を前に陛下に向かい合うアルス。
「はい…。」
「こっちから人員を割いても構わんぞ」
「いえ、それだと不測の事態が起きた場合に問題があるかと…」
「数万ほどそっちに回してもこちらは問題ないと思うが?」
「邪神の策略で何があるとも分かりませぬ故…」
「せめて第一から第三までの奇襲突撃部隊を連れて行け」
「かしこまりました。感謝します陛下」
「アルスの手腕大いに期待している」
「はっ!!」
それから軍の調整や色んな準備を行なった。
その間にも南大陸では戦火が広がりをみせ、そして軍を動かす機会をアルスが伺っている間、期間にして一月程の間に南大陸の半分程が聖信教会の傘下となった。
60話を読んで頂き有難う御座いましたm(_ _)m
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