表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/138

59話 クロ×黒い思惑






 休暇を終えて、ドラゴンロード王国に戻るとすぐにアルスはバルデロと修行を開始した。



魔法の連続を続けてきた甲斐もあり、最適解をなんとなく掴みかけている。






 そんな日々を送っていたが、アルスは今日バルデロにいつもの草原ではない場所に連れてこられていた。



「師匠どこに?」

「トレーニングも兼ねて、アレを引き取らせようかと思ってな」

「アレ?ってなんですか」

「あぁ…アレだよアレ」



 師匠が指をさす方向を目で追うと、歩いていた森がひらけてそこに大きな黒と紫の禍々しい卵が置かれていた。



「なっ!?あれはなんですか?」

「あれはダークネスドラゴンの卵だな」

「引き取るってアレをですか?」



 慌てて師匠を見ると、当たり前のように頷いている。



「引き取るって、親のドラゴンは…」

「アレの親は亡くなった。両親共な」

「いや、それでも引き取るって…」

「ドラゴンの卵はな、親の魔力を吸って中で成長し孵化するんだ。だが、あれには親がいない…誰かが魔力をあげなくてはな?」

「なんでそれが俺なんですか?」

「ダークネスドラゴンは高位の龍だ。ワイバーンなんかはさておき、ファイアドラゴンやアースドラゴンなんかよりもさらに上だ。」

「高位だと……。なるほど、かなりの魔力が必要だと?」

「あぁそうだ。高位のダークネスドラゴンの成龍が2体で一年程の期間を掛けて孵化させる。つまり、相当な魔力が必要だな。」

「でもそれだったら師匠が…」

「理由は二つある。一つはお主の魔力を伸ばす為…魔力は極限まで使えば保有量が増えるからな。それともう一つ、ドラゴンの卵が孵化すると、魔力を多く与えた者を親、または主と認識する。つまりはお主に従うということだ。そして高位の龍が従うとなれば、それは我々ドラゴンロード王国からするととてつもない意味を持つ。

創造神様の使徒であり、高位の龍を従えるとなれば、いずれ帝位についたときルーズと和睦を改めて次代で結んだときに役に立つだろう。」

「どうしてそこまで?」

「そんなことは簡単な話だ。我が師匠で、お主が弟子だからな……。ほら、そしたら魔力注いでみろ」









 それから来る日も来る日も魔力が尽きるまで卵に注いでいった。



あれから数週間が経つ。



 今日も今日とて魔力を注ぐぞーと、少し魔力をくわえた瞬間。

ピキッという音で俺は慌てて、隣に立つバルデロを見やる。

頷くバルデロを見て確信する。

生まれる……




 ピキッピキッと卵が徐々に割れていく。

そして、ピキピキピキ!と音がして上半分が割れて地面に落ちる。

中から出てきたのは龍にしては相当小さいがそれでもアルスと同じくらいの背丈がある漆黒のドラゴン。



「………」



 ドラゴンがアルスをじっと見つめる。


 

「ほら、アルス……名前をつけてやれ」

「え?名前ですか??いや…んー。」



 首をひねりんーと悩むアルス。



「じゃあクロで」

「安直だな…」

「……。君の名前はクロだ」

 


「………。ピー」



 ドラゴンの赤ちゃんてピーって鳴くのか?

鳥みたいだな…。

それはさておき、少し嬉しそうな顔をしているからクロという名前は気に入っているのだろうか。


 












「ほら、次いくぞー」


 そう言って、容赦無く凄まじい攻撃を放ってくるバルデロ。

炎と雷の複合魔法であるそれは、なるべくなら受けたくないと感覚的に思う程だ。




 アルスとバルデロは草原でいつものように修行をしているが、少し離れたところでクロがそれを見守っている。

城に置いていくとアルスが伝えても、絶対についてこようとするクロに、ここ数日は諦めて遠くで見守らせる事にしている。



 まるで親について行きたがる子供である。

ちなみに修行が終わればすぐに駆けつけて頭を擦りつけるし、寝るときもアルスのベッドについて来る。

そんな姿をバルデロは微笑ましそうに見ていた。



















ーーーーーーーーーーーーーーー





 物々しい雰囲気の大きな教会。

集まる者らは一様に仮面をつけている。

真っ白な仮面の観衆と、その前に立つのは聖職者の格好をした金の仮面の人物。

その金の仮面を守るように立つ武器を携える黒仮面の3人と銀仮面。




 最近人族の間で一気に勢力を広げている聖信教会、その教会本部がここである。




「神は宿敵たる邪神、そしてその使徒、信仰する者らを抹殺せよと仰られている…」

「「「「おおぉぉおおお!!」」」」


「故に我々聖信教会はここに……聖戦の幕開けを宣言する!!!!」

「「「「おおおおおお!!!!」」」」




 凄まじい熱気の中、金仮面の聖職者が声を響かせる。



「最初は、そうであるな……手始めとしてこの大陸の聖信教会以外の教えを信仰する者らを殲滅していく……。使徒様方…それでよいですな?」

「……。」

「構わん」

「問題ない」

「分かった。」



 金仮面の問いに、銀仮面、黒仮面達が頷く。







 この日から数日後、聖信教会による聖戦が人族大陸内で勧告され……

聖信教会以外の教会を信仰する各国、その中でも聖信教会への鞍替えに応じなかった国々は燃え盛る炎と飛び散る血飛沫に包まれ、そして少し遅れて他大陸でもその聖戦勧告が伝わる。

もちろん、各地に密偵を放っていたアルスの元へもその報せは届いた。










 








59話をお読み頂き有難う御座います。

ここから戦闘の回が多くなります…

ほのぼの好きの方少々お待ち下さいm(_ _)m

ブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ