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56話 師匠と弟子





「つまりだ……使える魔法が多くても、迷いがある時点で時間の無駄であるし、そもそも戦闘中に迷いが生じるなど危険すぎる。」

「あぁ、それは俺も思ってましたよ……絞るべきということですね」

「違うな…」




 今日も今日とて草原で向き合う二人。

だが、今日は講義のような雰囲気になっている。

俺が日ごろ悩んでいた使える魔法の多さという悩み。

だが、俺の考えとバルデロの考えはどうやら違うらしい。




「というと?」

「無意識…これが正解だ」

「無意識?」

「つまりは、この状況ならこの魔法が一番効率良く効果が高いという演算を無意識に最速で行えるようにする。」

「いやいや……そんなこと…。いや、できるのか」

「我はできるぞ。」





 なるほど、と思った。

無意識にどの魔法を使うか脳内で最適な演算を最速で行う事ができればそれが一番良いはずだ。

だが、それは膨大な魔法知識だけでなく膨大な経験が必要だ。




「つまり、ありとあらゆる魔法を経験することが始まりということ…ですか?」

「理解が早くて良いな……ということで今日はありとあらゆる魔法を俺に撃ち込んでこい」

「……胸を借ります」

「気にするな弟子の悩みを解決し成長させてこそ師匠というものだ」

「…師匠」




 ちなみにバルデロは師匠という呼び方をすると凄く嬉しいらしい。

今も少しニヤニヤしている。

単純で扱いやすい。











 

 結構距離を空け、まず最初に使うのは…

前にエミリオが使っていた隕石を落とす魔法だ。

魔法名はスターダストレイン。

師匠であるバルデロも時々使ってくるが威力・数、共に凄まじいのでぜひ使ってみたかった。



 俺は右手を前に開いて出し、そして魔力を高めていく。

そして、脳内でスターダストレインを思い浮かべる。

いける!使えるぞ…



 俺は少し頬を緩ませ、そしてその魔法を放った。





 周囲一帯に広がる膨大な魔力。

エミリオの時よりもそれは壮大。

空を見上げれば凄まじい数の隕石が落ちてきているのが見える。


 それに対して師匠はというと、上を見上げ「ほう…」と少し笑みを漏らした。








 凄まじい轟音が響き渡り、土煙とその余波で全く目の前が見えない。

殲滅級と呼ばれるだけあり、こんなの戦争で使ったらあり得ない数の人が死ぬぞ……と思うが土煙がサッと消え去ると、そこには無傷のバルデロが立っていた。



「いやー、なかなかのものだな。」

「無傷の状態で言われても…」



 ガッハッハと笑うバルデロを見てアルスはこの人には勝てないかもしれないと思った。



「それじゃーアルス次行くぞー!撃って来い!!!」








 隕石の次は、炎の巨竜…


 雷の巨竜、氷の巨竜、風の巨竜、土の巨竜…


 とてつもない大きさの竜巻…


 巨大な槍のような雷槌…


 重力魔法による超重量の斬撃…


 太陽のような獄炎…


 一面を氷で埋め尽くす氷撃…


 

 魔力の残量ギリギリまで怒涛の攻撃を放っていった。


 

 さすがのバルデロも防御魔法で受けきれない程の魔法もあり、何度か多少のダメージは喰らったが、それでも身体で受け流し、魔法で弾き、直感で回避し、と致命傷は避けていた。





 魔法の連続を始めて1時間程でアルスの魔力は人生でもあまり経験がないくらいに枯れていた。

大の字にそのまま倒れるアルス。



 だが、今回はなんとなく感覚を掴めそうでその感覚を脳内で何度も繰り返していた。




「なにか掴めそうか?」

「……そんな気はしますね」

「続けるか?」

「さすがに無理です。」

「よし、じゃあ今日は終わりにしよう」




 そう言われてアルスはやっとのこと立ち上がると、バルデロに深々と頭を下げた。



「今日も有難う御座いました。師匠」

「…よ、よい!これからはこういう感覚のトレーニングを増やしていく。イメージもしておくように」

「はい!」

















 城に帰り、ルーズ(ドラゴンロード王)に与えられている部屋で横になる。



 たしかに、この修行は自分のこの先にとても役立つと改めて理解した。

邪神の使徒の強さは未知数。

もしかしたらバルデロよりも強い可能性もある。

もし、何もしていなかったら俺は負けていただろう。

だからこそ、この修行は必要だと思った。



 バルデロを師と仰ぐ、これもまた運命なのかもしれない。





 コンコンッとノックの音が聞こえ、扉を見ると開いた先にバルデロが立っていた。


「アルス…明日から3日間は休みにする。あとこれから3日の修行の次の日は休みだ。いいな?」

「どうしたんです?師匠らしくもない」

「ルーズに説教された。ちゃんと休息を摂らせないとはどういうことだ!とな。だからまぁ休め」

「なるほど……」



 バルデロの子供は現国王のルーズ1人であり、バルデロは意外と子煩悩である。

そのかわいい息子に怒られたとなれば、それに従うのは当然と言える。

たしかに、ここに来てまったく休みがなかったな…と気づく。

たまには、実家(魔帝国)に帰らないと……今更ながらにそう思った。

きっとメル辺りは心配しているはずだ。




「それなら一旦、魔帝国に帰還します。久々に家族に会ってきます…」

「で、あるか。ならお土産をいくつか用意しとこう。」

「え…悪いですよ」

「なーに、お前の父も我の弟子。息子のお前も弟子だ。その家族となれば我の家族と言っても良い…用意しておくから明日ちゃんともって帰るのだぞ」

「わかりました」



 バルデロは見掛けとその戦闘力とは裏腹にこうした気遣いもできる。

だてにドラゴンロード王国の元国王…という訳では無いのだろう。




 よーし明日は久々の我が家(魔帝国)!!!

ゆっーーーくりするぞおー!











56話を見ていただき有難う御座いました!

次回の投稿も割と早めに出させてもらいます

次話が気になる!という方はぜひブックマークの登録よろしくお願いしますm(_ _)m


また、面白い!続きはよ出せ!という方は高評価お願いします。。


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