47話 実験の内容は先に言いましょう
革命軍本拠地のある大魔帝国東部に進軍する軍隊は総勢10,000人。
4000人という情報からするとかなり多いが念には念をと考えれば通常である。
これ以上出さないのは帝都を守る軍や、他の要所の守備軍は動かすなという皇太子殿下の命によるものである。
軍長ガゼフから指示を受け、軍を進軍させている軍長補佐エミリオ・アストラは後ろから来ているトライコーンの引く大きな馬車から放たれるオーラに気圧されていた。
「アストラ様…やはり凄まじいですな。皇太子殿下…」
「軍長閣下よりも、さらに圧倒的な雰囲気。さすがは陛下の嫡子であらせられる。」
「もし、皇太子殿下が怒って暴れたらどうなるんですかね?」
「我々は一瞬で死ぬだろうな。絶対そのような事がないようにせよ」
「はっ!!命あっての物種です。」
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側からそんな危険視されているとはつゆ知らず…アルスは馬車の中で使えそうな魔法を組み立てていた。
いやー…まじで多い。
全属性魔法使用可能ってことは使える魔法が無限大だ。
そこから選ぶとかまじで時間が無駄。
前もって使えそうなのを取捨選択しなければならない。
その為俺は今全属性の魔法書を読みながら使えるやつを選んでいた。
前々から使っていたやつは続行として…他になんか使えるやつないかなー。
ちなみに、創造という固有スキルだが…
魔法ではなくスキル?
と訝しんだが理由が分かった。
創造というからには物を生み出す事ができる訳だが、まずこれは俺が知り得るモノなら生物以外はなんでも生み出せた。
だがその代価だが、魔法ならMPだが、これはHPを代価にするらしい。
つまり、凄まじい大きさと威力の兵器とか作ったら死ぬ可能性があるって事だ。
まぁそれを理解できただけでかなり強い。
HPが常人離れしてるお陰でほぼほぼ死ぬ可能性はないし。
いや、今は魔法だ…
何が使えるかなー。
ん…
いや、あるな凄いのが…
父上が使う魔法…転移。
あれはたしか無魔法の最上級。
今の俺なら使えるのではないか。
俺は慌てて無魔法の魔法書を取り転移魔法についてのページを熟読していく。
ほうほう、一度行った事がある場所、または明確に座標を理解している場所にのみ転移可能か…
よし、試してみよう…城の中庭辺りに…
いや、待て!今このまま転移したら戻ってくる時馬車が移動して馬車の外に行っちゃうんじゃ?
「ローナ…」
「は、はい。どうなさいましたか?」
「ちょっと実験をする。一度馬車を止めてくれ」
「えっと、実験ですか?分かりました…」
同乗していたローナに馬車を止めるよう伝えると、一旦進軍自体が止まったようだ。
なんか、そこまで大事にしなくてもよかったのだが…
まぁいい…これで戻って来れる。
「では、ローナ…ちょっと城に戻ってくる」
「へっ?」
意識を城の中庭に指定し、転移魔法を発動させる…
「テレポート」
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ちなみに口で詠唱したり、言葉を発しなくても、その魔法が理解できていれば魔法は発動する。
その魔法をより明確にし、練度を上げるために詠唱を好んで行う者もいるが、一々魔法名を口に出したりしている時間が勿体ないと特に魔族では思われている。
※元々魔法に対する適正の低い人族では、詠唱が主流である。
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ブワッと身体が浮いた感覚の後、気付くと俺は城の中庭に立っていた。
「え?アルス!いつの間に?」
「進軍中のはず…ん?まさか転移魔法を覚えたのか?」
ちょうど母上と父上が中庭で散歩していたので遭遇した。
「母上、父上…先程ぶりです。転移魔法の実験の為に一度帰還しました。それにしても父上…この魔法便利ですね。」
「その歳で転移魔法を覚えるとはさすがというべきか…。まさしく規格外であるな。」
父上がこれは驚いた…という顔で俺を見る。
「転移魔法なんてすごいわ!さすがはアルス」
母上が俺の頭を撫でてくる。
相変わらず過保護だ。
「あれ、アルス。いつの間に戻ってきたんだ?」
「アルスー!もう帰ってきたの?」
「兄上っ!」
そこに父さん、母さん、メルも現れた。
「転移魔法の実験で戻ってきました。」
「なっ!?転移魔法?使えるのか?」
「すごいわ!アルス!最上級魔法じゃない!私でも転移は使えなかったのに…」
父上と母上も、すごいじゃないか!と俺を撫でてくれた。
もう成人したんだけど?
最近色気付いてきたメルもキラキラした目で見つめてくる。
「兄上はやはり凄いです。」
メルがそう言って微笑んでくるが、そうかいつの間にか兄ちゃん、から兄上に呼び方が変わっている。
「とりあえず皆が心配するので戻りますね!」
皆にそう言って戻る為に馬車の中をイメージした。
すると、メルが寄ってくる。
「兄上!」
「ん?どうした?」
「御武運を…」
「ありがとう。帰ってきたら転移魔法で遊びに行こう」
「はい!楽しみにしています。」
心配そうなメルの頭を撫でる。
さぁ、戻ろう。
「で、殿下!!どこに消えていたのですか?」
「ん?転移魔法でちょっと城に戻ってた」
「なっ!!」
戻った途端にローナが近寄ってきた。
まさにアタフタしていた。
なんか、ごめん。
説明不足だった。
「まぁ、実験は成功だ。」
「今度からは言ってからにしてください。皆が心配するので…」
「あ、うん。すまん」
ローナが、あのローナが大人だ。
こうして俺の転移魔法の実験は成功した。
消費MPはやはり莫大だが、そもそも今の俺はMPも規格外な為、これは使えると確信している。
よーし着くまであと数日、もう少し魔法の実験をするか…




