46話 反乱の兆し
「なに!?反大魔帝国革命軍?」
「はい…今この大陸でそういう組織が暗躍しています。」
バロンに報告を受けた俺は頭を抱えていた。
「国内で反乱分子ってことか…で、戦力は?」
「構成員は現在約4000人…ですが、かなり強者揃いのようです。特に幹部以上は魔王級かそれに近い実力者…」
「魔王級が何人かいるってことか…厄介だな。今までそんな報告はなかったが急にできたのか?」
「いや、巧妙に潜んでいたようですね。そして本日、声明文を出しました。」
「内容は?」
「魔帝の失脚を望み革命を起こす、と。」
「父上もそれは知っているのか?」
「すでに伝わっているはずです。」
「そうか…で、そいつらはどんなやつなんだ?」
「革命軍の幹部は………」
バロンに説明された事を要約するとこうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
反大魔帝国革命軍
・構成員:4000人
・リーダーの情報なし。
・幹部達は確認されている者で3名。
3人とも違う色の鬼の仮面を被って
おり、色は赤、青、黄。
・本拠地は大魔帝国東部。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「情報はそれだけか?」
「隠密にさらなる調査を要求しています。いましばらくお待ちください。」
バロンが俺の執務室から出ていくのを見ながら、今後の展開を考えていた。
この感じだと内乱になるだろうな。
国内での戦争か…まじでいい加減にしてほしい。
けど、そんな事が起こる可能性も正直考えていた。
次の日
コンコンッ
執務室のドアが叩かれた。
「ん?誰だ」
「ローナです。」
「入れ」
「はい」
俺が許可するとローナが入ってきた。
「殿下…陛下がお呼びです。」
「革命軍とやらの件だろうな…。わかった。今行こう」
呼ばれたのは謁見の間であった。
ということは、他の面々もいるということだろう。
入口に立つ兵が俺に気付き跪く。
「急いでるから儀礼は構わん。通せ」
「はっ!!」
兵はすぐに立ち上がり大きな両開きの扉をノックすると開けながら声を上げる。
「皇太子殿下…入られます!!」
奥の数段上にある玉座に父上が座し、玉座までの赤い絨毯を挟むようにして左右に父上の側近、軍の幹部、文官の長である大臣達、そして俺の側近が並んでいた。
俺はツカツカと絨毯を進み、玉座のある高台の下に立つ。
臣下なら跪くが俺は皇太子だから直立で良い。
「父上…召喚の命に従い馳せ参じました。反大魔帝国革命軍の件ですね…」
「さすがはアルス。やはりもう耳に入っていたか…。で、アルスの意見を聞かせてくれ」
「私も昨日聞いたばかりです。…革命軍との内戦は避けられないでしょう。敵戦力が約4000人という情報ですが、今まで隠し通していた実績がある以上その人数すら偽装して流している可能性もあります。とりあえず数を大幅に削る為にも東部にあるという本拠地を叩くのが妥当かと。すでに、宣戦布告もなされている故…」
「まぁそれが妥当であるな。では革命軍の本拠地の壊滅作戦の指揮はガゼフに任せる。」
帝国軍の長であるガゼフはそれを聞き頭を下げる。
「はっ!」
「父上…私も行きたいんですけどいいですか?」
「ほう…アルスも行きたいのか?なぜだ?」
「そうですね…革命が起こった理由を知りたいのもありますが…一番は面白い人材が居ないか…ですね。」
「ほう…革命軍から人材を獲りたいと?」
「優秀であり、問題がなさそうだと判断した場合に限りますが…」
「そうか…構わん。」
「それと、ガゼフ本人は総指揮にあたらせますが、帝都に残しておいてください。」
「俺はここに残るんですか?」
後ろからガゼフの疑問の声が聞こえ俺は振り返る。
「情報がほとんど出ていない現状と私の部下の練度の高さを考えれば確実性のある情報だと判断できるが、そこすら逆手に取り、本拠地すら実はフェイクという可能性がある。その場合軍を動かした後に帝都に攻め込まれる可能性があるからな…そういった場合臨機応変に対応できる軍の長は帝都にいるべきだ。ロイドと共に情報をさらに集めその線も探っておいてくれ。」
「そういうことなら…。確かにその線もありますね。では、現場指揮は殿下にお願いしても?」
「あぁ、任せておけ。」
その会話を聞いて父上は頷いた。
「アルス…この国に来てから初の戦だ。まぁお前の力があれば最悪1人でも相手を壊滅出来るだろうが…今回はなるべく指揮に専念せよ。」
「わかりました…父上。」
その会話を終え、俺はガゼフ、ロイドに視線を投げた。
ガゼフは軍長だが、ロイドは参謀長、この2人無くして戦争はあり得ない。
「ロイドとガゼフは後で俺の執務室に来てくれ。今後の方針を話し合う。」
「「はっ!!」」
「それでは、解散してよい。」
父上の号令で俺がまず謁見の間を出て、そこから他の者達が出て行く。
ロイド達を待たず、俺は執務室に向かった。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
私はロイド・パイロン。
ベルゼビュート大魔帝国軍で参謀長を任せられている。
今日は陛下に呼ばれ謁見の間に集まった。
軍幹部だけでなく大臣達も呼ばれている事からかなりの事だとすぐに理解した。
まだ皇太子殿下が来ていないが、「あいつは各地に放っている隠密の情報ですでに知っているだろから先に伝えておく…」と陛下は言い、革命軍の存在を告げた。
参謀長である私すら、知り得なかった情報である。
くそ…ダリフ…私にも伝えておけ!!!
それから少しして謁見の間の扉が開かれ、皇太子殿下が現れた。
最近、使徒となりさらに圧倒的な雰囲気を纏った殿下。
噂では神人族という種族になり、さらに莫大な力を得たという。
絨毯を進む殿下の姿はまさしく王者の貫禄があった。
あれでまだ15歳とは…末恐ろしい。
そして殿下は開口一番に言った。
「父上…召喚の命に従い馳せ参じました。反大魔帝国革命軍の件ですね…」
参謀長である私にすらまだ入ってきていなかった情報…陛下の言う通り殿下は知っていた。
それも昨日には知っていたという。
なんという情報の速度。
殿下の直属部隊、蒼天隊は五年前に設立された部隊であるがその練度はすでに帝国内でも頂点に立つ組織。
さらに、蒼天隊では隠密部隊を各地に常に放っており殿下の、情報は一番の武器である、という信念を重んじている。
それから殿下は陛下に今後の方針の案を提示していく。
それはまさしく正論…私の出る幕はなかった。
指揮はガゼフに任せられる。
が、そこにきて殿下は自ら敵本拠地に行くと言い出した。
理由は、人材発掘?なんと…なんという豪胆さ。
今から戦うという革命軍に、すでに人材発掘を考えている思考。
それは、負けなどあり得ないという確信がなければできないことである。
さすがは、次期帝王となられるお方。
それから殿下はガゼフは帝都に残すと言った、もちろんガゼフは困惑している。
ガゼフという男は戦場に真っ先に行くタイプの長である。
最前線で戦ってこそトップ。
というのが口癖のような男。
だが、その後に殿下がガゼフに言った事に反論する隙はなかった。
「情報がほとんど出ていない現状と私の部下の練度の高さを考えれば確実性のある情報だと判断できるが、そこすら逆手に取り、本拠地すら実はフェイクという可能性がある。その場合軍を動かした後に帝都に攻め込まれる可能性があるからな…そういった場合臨機応変に対応できる軍の長は帝都にいるべきだ。ロイドと共に情報をさらに集めその線も探っておいてくれ。」
そこまで考えているとは…素晴らしい。
魔族の指揮官の殆どは力押しタイプである。
元々多種族、特に人族などに比べれば明らかに優れた身体能力、魔力を誇る魔族。
その為、策など考えず力で勝れば良いと考えるタイプは多い。
特に魔王家、現魔帝家の人間は他とは比べ物にならない力を有している。
玉座に座る魔帝陛下や、皇太子殿下はその中でも歴代の中でもかなり上に位置する戦闘力を誇る。
使徒となられた殿下の最近の実力は手を合わせなくても皆が理解するほどに圧倒的である。
で、あるなら陛下が仰ったように1人でも敵4000を駆逐することが可能…しかし、それであっても策がなければ付け入る隙を与えてしまう。
それを殿下は理解している。
本当であれば私が参謀長として苦言する立場だがその隙すらない。
さすがは歴代最強の陛下の跡継ぎ。
さぁ、今回どんな戦いを殿下は見せるのか…
私は興奮に満ちた感覚に包まれた…