45話 ロクシュリア=ソーマリア
ロクシュリア=ソーマリアがその事を知ったのはつい最近であった。
それはまさしく神託。
教会でいつも通り祈りを捧げていると、『ベルゼビュート大魔帝国の皇子、アルスを使徒にした。支えてあげてくれ』突如頭の中で響き渡る神々しい声。
何度目かの創造神様からの神託だった。
以前にもアルス皇子の話は聞いていたが、使徒!?
それはもう私達信徒にとっては神の代弁者と言っても過言ではない尊い存在。
ぜひ、会わねばならない。
ロクシュリアはその日そう誓った。
数日後、大魔帝国の帝王から皇子が皇太子になる式典が開かれると手紙が送られてきた。
その手紙には息子が使徒になったので、神から聞いているのであればそれを証明して欲しい。と書かれていた。
やはり…事実のようである。
行かないわけにはいかない、いやむしろ行きたくて仕方がない。
そうして、私はまだ見ぬ使徒様に会うべく大魔帝国に向かった。
着いたのがギリギリということもあり、身辺警護の兵士達に誘導され、帝王と皇子の演説を後ろから見ていた。
初めて見た使徒様…
神々しく創造神様の雰囲気を纏うその姿に私は釘付けになった。
白金の柔らかそうな髪が風で靡く姿しか見えないが、それだけでも使徒である事は納得できた。
帝王に呼ばれ前に行き使徒であると証明した後、隣を見るとその顔をハッキリ見た。
中性的な綺麗な顔立ちに、白金の髪、そして黄金の瞳。
創真教の信徒となり、毎日祈りを捧げている時神託が聞こえ、あれよあれよと教皇にまで至った聖女と呼ばれる私が…初めて一眼見てときめいてしまった。
これはきっと使徒様だからだろう。
そう理解はしているが、驚いたのは言うまでもない。
式典が終わり、夜まで待って晩餐会が開かれた。
そこで改めて使徒様にご挨拶をした。
「創真教国、教皇ロクシュリア=ソーマリアと申します。使徒様の御前に立つ事が出来、光栄の極みです。」
「アルス・シルバスタ=ベルゼビュートです。そこまで畏まらないで下さい。逆に気を使います。」
使徒様はそう言って微笑んだ。
あぁ、これが神の微笑み。
なんて温かいの…
それから色々お話をさせてもらった。
使徒となり純白に金が少し入った翼になった事や、魔人族から神人族という種族になった事など…
すごい!!本当に凄い!
神人族…神を冠する種族…
そんなものがあったなんて…
そもそも種族が変わるなんて聞いたことがない。
帝王がお披露目も兼ねてと翼を出してくれと使徒様に頼んだお陰で翼を見たけど…うん。
あれはまさしく神の…
神様も言ってた…
〝支えてあげてくれ〟って
それってやっぱり結婚しろって事だよね?
この人なら…
「あ、あの…使徒様…」
「ん?どうしたんです?」
「け、結婚してください!!」
「へっ?」
使徒様は頬を赤らめてこちらをマジマジと見てきた。
私はそれを恥ずかしいけど真っ直ぐ見つめる。
「私が使徒様を一生支えていきます!だから…結婚して下さい!」
「………へっ?え!えーーー!!!」
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晩餐会でいきなり創真教国の教皇に告白された。
いや、結婚を求められた。
いきなり…いきなりだ。
俺は今までの皇太子としての威厳ある態度を一切忘れて、目を見開いた。
「ほう…それはよいな。教皇よ。皇太子となり世継ぎの為に早めに結婚させたいと余も思っておった…創真教国は神聖とされる国、その国の教皇ともなれば相手として不足はない。どうだアルス!不満か?」
父上がなぜか肯定的だ。
止めてくれよ…
いや、確かに教皇は凄まじく可愛い。
前世的に言えば可愛らしい感じのチョコレートとかのCMやってそうな女優のような見た目。
それに綺麗な銀髪も、素晴らしい。
いや、確かにかなりありだ。
ありだが、いきなり結婚って。
いや、確かに皇族だからすぐに結婚するのは常識なのかもしれないが…
恋愛結婚が当たり前の前世的な考えだと、いきなりはさすがに…
いや、まぁお見合いとかもあるか。
「えっと…さすがにいきなりなんで…」
「そ、そうですよね…」
俯く姿も絵になる。
「断らないということは可能性はあるということだな。良いじゃないか…それならたびたび会って話したらどうだ?」
「ま、まぁそれくらいなら…」
「ありがとうございます!!」
微笑んで頷く父上と、喜んで赤くなる教皇。
いや、冷静に考えると凄い状況だ。
中央大陸以外では一般的に信仰されているのが創真教だと聞いたことがある。
その頂点に立つ教皇に告られるって…
とりあえず俺は心を落ち着ける為にフルーツのジュースを給仕からもらい一気に飲み干した。
後日談だが、俺と教皇のその一件はその日から一気に全大陸に広がったらしい。
創真教国の教皇、大魔帝国の皇太子にプロポーズ…と。
結婚かぁ…
いや、でもそう考えるとなんでかあいつを思い出すんだよなぁ。




