39話 ドワーフの鍛冶師ってやっぱすげぇ
それから結局2日程マリア達とグダグダと過ごし、今日はやっと王都観光である。
護衛はローナだけど、色々と大丈夫か?
まぁローナの部下達もいるから大丈夫か…
俺が城の門にたどり着いた時には、皆が既に待っていた。
ローナ以外の護衛達が臣下の礼をとってくる。
「アルス殿下…本日身辺警護を任された奇襲突撃第二部隊副官、バロンと申します。友人の方々共々身命に代えても御守りします故、ご安心くださいませ…」
バロンさん…ローナとは正反対の真面目な人だ。
「身命は大事にしてね。でも、ありがとう。少し安心したよ…」
その安心はローナだけじゃないって事だけど
城門の前には二頭立ての大きな馬車が停められていて、驚いた事にその馬車はモンスターに引かれていた。
頑丈そうなツノが三本生えた、通常の馬より二回りほど大きな馬である。
ユニコーン?いや、バイコーン?
でも、三本?
ステータスで確認するとそこにはトライコーンと書かれていた。
初めて聞く名前だ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
[トライコーン]
称号/幻獣
ランク/A
HP/265.000(265.000)
MP/130.000(130.000)
攻撃力/100.000
防御力/280.000
俊敏/12.000
器用/11.000
固有魔法/[身体強化/LV.MAX][威圧/LV.MAX][俊敏強化/LV.MAX]
ーーーーーーーーーーーーーーー
し、初めて見たAランクモンスターだ。
ステータス…バカ強いし幻獣!?
おいおい、めっちゃやばいモンスターじゃん。
「バロン…このモンスターめっちゃステータス高いし、Aランクだけど、なんなの?」
「さすがは殿下!見ただけで分かるというのは本当なのですね…。このトライコーンは、魔王家の方々を乗せる専用のモンスターです。逆に言えば魔王家の方々が一人も乗っていなければこの門から進みませんし、暴れます」
「うちの一族限定なのか。にしても、これ暴れたら相当な被害でるぞ?」
「はい…なので、そういう不用意なことはしません」
トライコーンの前に立ってみる。
少し黒めの深い茶色の体に、立髪は輝く金色である。
吸い込まれるような芸術的な見た目…これが幻獣。
「よろしくな…お前ら」
二頭の間に立ち話しかけてみる。
すると、
二頭が俺の顔に顔を近づけてきた。
そして、スリスリ。
え、可愛い!
「お前ら可愛いな…」
しばしなでなでしてあげたら二頭は目を瞑り、気持ちよさそうにしている。
「なっ!?トライコーンが、懐いている…」
「さすがは…殿下」
どうやら後々聞いた話、通常トライコーンの前に立つと凄まじい攻撃をされるらしい。
だから、飼育してる人達も前にはあまり立たない…とか。
おい!先に言えよそれ!!!
トライコーンの馬車に乗り、山道を下っていく。
といっても獣道ではなく、ちゃんと舗装された下り坂である。
まぁそりゃそうか魔王城への道だもんな。
「で、何する?アルス」
「んー、そうだな。観光出来るとことかあるの?ローナ」
マリアに質問され、それをローナに質問する。
そもそも王都に何があるのか全く知らないからな。
「んー、そうですね。首斬りの館…とか、あとは凶悪モンスターの商店とか…」
あぁーやっぱりこいつに聞くのは間違いだった。
「ローナ…お前の案は却下だ。バロンさん…なんか無いですか?」
「え?楽しそうなのに…」
「そうですね…確か最近出来た劇場とかは人気ですね。あとは、商店も多いので買い物とかもできますよ?」
バロンさん…素晴らしい。
「よーしじゃあとりあえずそのあたりにしよっか。」
「俺、剣見たいな!魔国の剣…良いのありそう」
「アニキ、俺も魔道具とか見たいっす」
「剣と魔道具か。そしたら、バロンのおすすめの店があれば行ってみるか…」
「はい!王都にあるドワーフ族の有名なお店があるのでそこに行ってみましょう!」
そして、来ました王都の武器と魔道具のお店…[ベルマン商店]
魔国でも有名な鍛冶師のベルマンというドワーフのお店で、横には工房がありかなり大きな商店であった。
バロン曰く、息子は魔道具の製作の才があり近年両方を扱う店になったという。
「…おい、あれ…魔王家の紋章…それにトライコーンだぞ」
「陛下か?」
「いや…まだ若い子供達だぞ…それに人族じゃ?」
「……あの雰囲気…あの方が…アルス殿下では?」
馬車から降りると周囲がざわざわとしだした。
魔王家の紋章入りの馬車だからな…
ん?俺の名前も知られてるのか…
とりあえず騒ぎが広がらないように、足早に商店に入った。
カランコロンカランッ
扉についた小さな鈴が鳴り、ドワーフの従業員が寄って来た。
「いらっしゃ……」
途中まで言い掛けて、俺と、護衛、そして外の馬車を交互に見て、呆然とする従業員。
「も、もしや…殿下…あらせられますか?」
「ん?あぁ…うん。ごめんね何か店の前騒がしくしちゃって」
「い、いえ!滅相もないです!!本日はご来店頂き誠にありがとうございます!!あ、私は会頭であるベルマンの息子…ベルドルと申します!」
お、従業員じゃなくてあの魔道具の息子さんか。
「魔道具の天才という息子さんか…、これはこれは丁寧に…。少し商品を見てもいいか?」
「…天才……魔道具の天才…殿下に……グスッ…グスッ……は、はい!どうぞ!!」
何故かベルドルは泣いていた。
おい、俺ってそんなに有り難いのか?
ミラとレノとトルスは魔道具の方に、
マリアとレオと何故かローナは武器の方に歩いていく。
まぁローナは放置として、俺はどっちから見ようかなー。
とりあえずステータスで剣とか見てみるか。
武器の所に行って良さげな剣を見てみる…
ーーーーーーーーーーーーーーー
[風獅剣]A
名工ベルマンによって打たれた魔剣。
風魔法の付与あり。
攻撃力/25.000
付与魔法/[風斬]
ーーーーーーーーーーーーーーー
一本目からガゼフに貰った魔剣と同格…Aランクの魔剣。
しかも、攻撃力もなかなかだ。
「このベルマンという会頭…かなり良い腕だな…」
「武器も、見て分かるのですか?」
「あぁ、武器だけじゃなく例えば食材やモンスターなんかも分かるぞ?」
「本当に凄まじいスキルですね…」
このスキルが知れてからは父上すら、珍しいモノを持ったな!と褒めてくれた程だ。
確かによくよく考えれば凄まじく便利だよな。
ちなみに、同じようなスキルを持つ人も少なからずいるらしい。
鑑定眼っていうスキルだ。
ただ、そのスキルはステータスのどこか一箇所だけ覗せたり、またモンスターの戦闘力だけが分かったり、と特定の部分しか分からないらしい。
熟練度を上げれば、見える箇所も増えるらしいが、それもかなり困難だとか。
「…其方が…魔王陛下の息子か」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはベルドルに似た、しかし風格が全く異なるドワーフが立っていた。
「貴様…その態度…殿下に無礼であるぞ」
「…すすす、すみません!!父さん!!ちゃんとした態度をとってくれって言っただろ!」
バロンが腰の剣に手をかけ、そして慌ててベルドルが父親…つまりベルマンに駆け寄り説教を始める。
しかし、ベルマン。
ただの鍛冶師じゃないな…バロンと並ぶかそれ以上の実力を持っている。
「構わない…。バロン物騒だからやめろ。それに、この人お前より強いぞ?」
「なっ!?私より強い?」
「ハッハッハッ!!!そこまで分かるか王子!見ただけで人の力量が分かる…とは噂に聞いてたが、本当に分かるとはな」
「わかるよ…剣の良し悪しもね…」
「そうか!!なら、ゆっくり見てくれ!お、そうだ!ちょっとテストをしていいか?それに正解できたら、ここに並んでないもっと良いのを見せてやる!」
「テスト?これより良いの…よしやろう!」
ベルマンに苛立つバロンと慌てるベルドルを放置し俺はベルマンに付いて奥にあったテーブルに向かう。
「まぁ座っててくれ…」
と言われ、ソファに座って待つ。
それが気になったのかマリア、ミラ、レノ、レオ、トルスが俺の後ろに立ち…一緒に待っていた。
そこに、ベルマンが三本の剣を持ってきた。
「どうだ王子?この中で一番良い剣…王子ならどれだと思う?」
不敵に笑うベルマン。
一本は聖剣と言われても納得する豪華で、しかも斬れ味が凄まじそうな魔剣。
二本目は、すこし水色かかった剣身の綺麗で芸術的な剣。
そして、三本目は…
「これは…なんか…不吉そうだしないわね」
「たしかに、扱いにくそうだしな…」
ミラとレオが言う通り、見た目は悪い。
というより極悪だった。
漆黒の剣で、煌びやかな飾りもなくシンプルで、それなのになぜか怪しい雰囲気を放っている。
とりあえず俺は全部のステータスを見てみた…そして唖然とした。
一本目、
ーーーーーーーーーーーーーーー
[聖魔剣]A+
名工ベルマンによって打たれた魔剣。
聖魔法の付与あり。
攻撃力/38.000
付与魔法/[聖光][聖魔斬]
ーーーーーーーーーーーーーーー
え、強っ!!凄まじい性能だ。
ガゼフの剣超えてきたよ…
二本目、
ーーーーーーーーーーーーーーー
[刹那剣]A+
名工ベルマンによって打たれたミスリルの魔剣。
風魔法、雷魔法の付与あり。
攻撃力/52.000
付与魔法/[風斬][雷伝][風雷豪]
ーーーーーーーーーーーーーーー
なっ!?ミスリル??
あのファンタジー鉱石のミスリルだと?
すげぇー。しかも馬鹿みたいに強い。
風雷豪ってなに!?
そして、三本目を見て…
俺は唖然とした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
[雲外蒼天の剣]S-
名工ベルマンによって打たれた最高傑作。
ミスリルとアドマンタイトの混合魔剣。
火魔法、水魔法、風魔法、雷魔法、闇魔法の付与あり。
攻撃力/98.000
付与魔法/[爆炎剣][氷華剣][風魔剣][雷業剣]「漆黒千剣」
ーーーーーーーーーーーーーーー
おいおい…なんだこの性能。
これもはやアーティファクトじゃ?
それによーく考えたけど雲外蒼天って前世の言葉じゃ?
えーっと意味は確か、困難を乗り越え、努力して克服すれば、快い青空が望める、だったか。
いや、確かに良い意味だが…
どういう経緯でこっちでも使われてるんだ?
「ベルマン…これより良い剣があるのか?」
俺はその雲外蒼天の剣を手に持ってベルマンを見る。
「…ふふっ……本物であるな…王子の目。分かるか?その性能が」
「五属性の魔法付与、そしてミスリルとアドマンタイトの混合。そして凄まじい攻撃力だ…これはもはやアーティファクトだろ?まぁ打ったのがベルマンというのは分かっているが」
「なっ!?そこまで分かるか!?アーティファクト……嬉しいのぉ。他の鍛冶師も息子でさえもこの凄さを本来の意味で分からんかった。王子……王子の言う通りこれが一番良い剣だ。持ってってくれ」
「え?売ってくれるのか?」
「売る?何を言ってる?これの良さをそこまで理解する者はいない。王子が使ってくれた方がこの剣も本望よ。金はいらん。持ってってくれ」
ベルマンはそう言うと、最後に俺の手にある剣を少し撫でた。
それはまるで我が子を見るようだった。
「ありがとう…じゃあ使わせて貰うよ」
俺はその剣を改めて見つめた。
うん…すげぇ剣だ。
だけど、なんかしっくり来るんだよな。
運命…みたいな?
『その剣は良い剣じゃよ……ぬしのことを今後守ってくれるじゃろう』
え、創造神様…
最近すっかり忘れてたよ。
『…忘れるって。失礼じゃのう。魔王にそういうところはそっくりじゃ』
すみません。
『あ、そうだ。この剣にのぉ、加護をつけてやるから、大事にせぇ』
「え?加護?」
俺のいきなりの呟きに、皆が俺を見る。
やばっ!!声出た。
手にあった剣が突如光り輝く。
そして、パッと視界を真っ白に埋め尽くすと…
「おいおい…神様…やりすぎじゃ?」
その剣は見た目も少し変わっていた。
装飾のなかった鍔はウロボロスのドラゴンのような細工がつき、柄には金の幾何学模様が薄らと描かれ、柄頭には7つの小さな宝石が埋め込まれている。
そして、剣身も先程より輝きを増し、鞘にも金の模様が刻まれていた。
もう別の剣じゃん!!
ーーーーーーーーーーーーーーー
[雲外蒼天の神剣]S
名工ベルマンによって打たれ、創造神に加護を与えられた神剣。
ミスリルとアドマンタイトの混合。
火魔法、水魔法、風魔法、雷魔法、闇魔法の付与あり。
攻撃力/130.000
付与魔法/[爆炎剣][氷華剣][風魔剣][雷業剣]「漆黒千剣」[天地奏剣]
神聖スキル/[世界神の加護]
ーーーーーーーーーーーーーーー
魔法増えてるし…攻撃力上がってるし…神剣になってる。
神様…やりすぎじゃ?
「なっ!?これはどういう?」
ベルマンが剣を見つめる。
「え?なんか見た目変わってない?」
マリア達も驚愕してる。
これなんて言えば良いんだ?
えっと…
「神託があって…良い剣だから加護をつけてやるって」
「な…神にも愛されておるのか。王子…其方はやっぱり凄い男だ!!」
「でもそういうことってよくあるのか?」
「ない…。わしも初めて見たわ。性能も上がってるようだし、本当に凄い事よ…」
それから、ベルマンはずっと嬉しそうにしていた。
マリア達が買おうとした武器などを無料でいい!持ってけ!という程に。
そして、また来てくれ!と言われて俺達はお店を出た。
「にしても、ベルマンさん…凄い人だったね!」
「うんうん…かなり熱かった」
「でも…良い人だったよね」
店を出ると女性陣がそう言う…
と、あれ?と思ってローナを探すとローナは光り輝く音楽の鳴る魔道具を抱えてご満悦だった。
意外と女の子なとこもあるんだな。
レオとトルスはベルマンから貰った新しい武器を馬車の中で眺めていた。
Aランクの剣と槍である。
値段にしたら一等地に大きな家が建つくらい凄まじい高額らしい。
「アルスの友達ってだけでこんな剣を貰えるとは……これ、南大陸だったらさらに高額なんじゃ?父上に見せたら呆然とするだろうな…」
「この槍も…風格やばいっす。しかもあの価格……うちの親に見せたら腰抜かしますよ…」
レオとトルスの言う通り値段も性能もすごい、それを皆にくれるって…ベルマン太っ腹だよね。
「あれだけしてもらったんだ。今度なんかお礼をしないとな…」
「着きましたよ!殿下…。すでに部下に先行させてチケットは取っているので早速入りましょう…」
そこは前世で言うところの中世ヨーロッパの劇場のような場所だった。
石造りだけど、その石は白色でそこがまたなんかオシャレに見える。
バロンが部下に取らせていた席は、多分VIP席なんだろう。
かなり豪華でしかも客席の上の階にある少し前に飛び出した個室だった。
「すごい部屋…」
「うん…こんな部屋から観れるって凄い」
マリアとレノは目をキラキラして興奮していた。
「調度品もかなり高価なものばかりね…」
豪商の娘であるミラは調度品を腕を組みながら見て回っている。
「ここは、王族や高位の貴族の為の部屋ですので寛いで頂けるはずです」
「バロン…すまないな。色々手配してくれて…」
「いえ、殿下…、それが私の今日の任務ですので気にしないでください」
バロン…ローナとは違ってめっちゃ頼りになる。




