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36話 友とは一生の宝である。




「おはようございます…殿下」

久々に寝坊をした。



メイド…それもソラさんに起こされ、なんとか目を擦り起き上がる。



「おはようソラさん。にしても、夜更けまで本読んでたから…まだねむい…ふはぁー」

伸びをして、身体を起こしにかかる。


「本を読まれてたんですか?」


「うん。ちょっと魔族の歴史とかの本を読んでたんだ…」

家庭教師から勧められた本である。


「やはり殿下は勤勉でおられるのですね」


「んー?そんな事ないよ!ただの読書だし」


「ふふっ それが勤勉なのですよ」

ソラさんが少し頬んで褒めてくれる。

ソラさんが来てからもう一週間以上経つな。

時間過ぎるの早い…





あっ!!!!

そういえば、魔国に来て正式に知らされた…昔はセイレスと出会った日だった誕生日。

今日じゃない?



「今日…俺の誕生日だ」

「今思い出したのですか?そうですよ…。殿下!おめでとうございます!」

「ありがとう…」


そうか、もう10歳。

こっちにきて10年経ったのか。





朝食に行くと、皆がすでに席に座っていた。


「あら…お寝坊したの?アルス?おはよう!そして、お誕生日おめでとう!こっちにおいで髪直してあげるから」

「あ、ありがとう…」

母上にそう言われ席に着くと髪を直してもらう。


「アルス…誕生日おめでとう。こうやって祝えるようになるなんて、わしは嬉しいぞ」

「父上…ありがとうございます」


「誕生日おめでとう…アルス」

「ありがとう父さん」


「おめでとうアルス!もう10歳ね!!」

「うん。ありがとう母さん」


「お兄ちゃんおめでとう」

「ありがとー!メル」


皆に誕生日を祝われ…うん、なんか良い日だ今日は。





食事を終え、自室でソラさんではなく別のメイドさんに着替えさせられその後城内を歩くと、会う人会う人に祝いの言葉をかけられた。


「殿下おめでとうございます!」

「あ、殿下!!誕生日おめでとうございます」

「殿下…誕生日おめでとうございます」

「殿下、おめでとうございます!!」


うん、なんか疲れるけど嬉しい。




そんなこんなで歩いているとレノに会った。

「あ、アルス君…じゃなくて殿下!!誕生日おめでとうございます!」

「別にいいよ2人の時は…」

「え?あ……ありがとう」

「それよりどっか行くの?」

「えっと、本が読みたかったんだけど、メイド長さんに聞いたら、書物庫には王家の人間しか入れない…って言われちゃったから。すこしお散歩!」

「んー、大丈夫じゃない?書物庫一緒に行く?」

「え、いいの?」

「あー別に父上達もなんも言わないと思うよ。俺もいるしね」




そうして、ついた書物庫は…まるで図書館。

三階建ての建物くらいの高さのある天井のスレスレくらいの高さの棚が両サイドにあり奥行きも数十mはある。


「すごーい!!!こんなに本が!!」

「すごいよね。俺も初めて入った時は驚いたよ」


この世界では本は高価であり希少だ。

だから、ここまでの量を集めるのは凄い。

さすが、魔王城…と言ったところか。


「で、何読みたいの?」

「初歩的な魔法書か、なにか物語とかかな」

「それだったら…」


俺は既に見知った書物庫の中を歩き何冊か手に取ってレノに渡す。


「このあたりかな!」

「ありがとう…アルス君は何か読むの?」

「んーそうだな。今日は帝王学の本と、魔族の歴史関連にしようかな…」

「…やっぱりアルス君は王族なんだね」

「俺は多分王族じゃなくても読むよ?知識は宝だからね」

「そっか……」


書物庫に置かれたテーブルセットで2人で本を読む。

にしても帝王学ってむずいよな。

王族です!みたいな雰囲気出すのしんどいし。


それよりも最近は魔族の歴史が面白い。

歴代の魔王…やばい人ばっかだ。


例えば、数千年前に居た煉獄の魔王。

人族との戦争で南大陸そのものを炎で埋め尽くした…っていやいやどんな魔法と魔力量なの?

俺の数百倍はチートじゃん。


三代前の魔王もすごい。

雷鳴の魔王。ドラゴンの国との戦争で雷の龍を創り出す最上位魔法を数千一気に放って、一撃で数百のドラゴンを倒した。

って…この人も魔力量どうなってる訳?


魔王ってやっぱりすごいな。


そして、もう一つ気になったのが。

魔王争奪戦争と呼ばれる二千年前の戦争。

代々魔王家が魔王になっていたのが気に食わなかった強い魔族達が魔王に反旗を翻して戦争を行なったらしい。

その魔族達も、化け物みたく強い人達で魔王とかなり良い戦いをしたんだけど、最後は魔王の使った古代魔法で討ち取られた、というか消し炭になった。

消し炭?どんな魔法…それ。


でも、そうだよな。大陸全部を仕切る統一国って他にはないもんな。

そりゃー気に食わない人もいるよ。

もしかしたら今もいるかもしれないな。

魔族同士の内戦…とかやばすぎるしやめてほしいな。

平和に暮らせないのかねみんな。



「…ルス君…アルス君!」

「ん?ごめん。集中してた」

「大丈夫だけど…もう結構時間経ったけどお昼ご飯大丈夫なの?」

「え?もうそんな時間?」

「うん!」

「そしたら今日はここまでにしようか。昼過ぎからはちょっと戦闘訓練と魔法の練習をしたいんだ」

「うん。良いよ!…あの…それ見ちゃダメ?」

「え?いいけど、見たいの?」

「うん!見たい!」

「じゃあ昼に!んーと、訓練場集合で」

「わかった!!」









そうして昼食のため俺は食堂に向かう。

で、家族でご飯を食べていると…


ガチャ…と食堂が開き、タッタッタッと兵士が父上のそばに行く。

「陛下…お耳に入れておきたい事が…」


そして、なにやら耳元で話している。


「なに!?それはアルスに聞いた方が良さそうだな…アルス!」

父上に呼びかけられ、えっ?とフォークとナイフを置く。


「実は人族の子供達が人族の兵と共に、城の門で捕縛されたらしいのだが…アルスの知り合いと名乗ってるらしいんだ…マリア・レイストフ、ミラ・ ベルーシュ、トルス・ランドバルト、レオ・トライデンという者らを知っているか?」


マリア、ミラ、トルス、レオ…?

ええええええ!!!!!!


「知っている。も何も…友人です!」

「レイストフ、トライデン、ランドバルト?伯爵、子爵と辺境伯の子供達か!?」


俺と父さんが驚いて立ち上がる。


「そうか…やはり友人か。なら、手厚く応接室に通せ」

「はっ!!」

父上が兵に言うとすぐにその兵は走って部屋を出ていく。


「父上…食事中にすみません…俺も行ってよいですか?」

「あぁ…構わない。ケイレスも行くか?」

「はい!私も行きます!」


そうして、俺と父さんの2人は応接室に向かう。







応接室に行くと…久々に会う見知った顔の4人がいた。

「マリア…ミラ…トルス…レオ…どうして?」


「アルスー!!!!」

「アルス…」

マリアとミラが俺に走って駆け寄り抱きしめてくる。


「アニキー!!!」

「アルス…無事でよかった」

そして、トルスとレオも立ち上がり俺を見つめてくる。


「心配したんだから!!魔国に帰還するって映像みて…心配で…だから…グスッ」

マリアは泣いていた。


「皆でアルスの所に行って、もし囚われていたりしたら、絶対助けようって…親にも内緒で船に乗って…来たの…」

ミラも涙目である。


「そっか…嫌われたと思ってたよ」


「何言ってんの?嫌う訳ないじゃん!」

「やっぱりアルスは大馬鹿…全然私達のことわかってない」

「アニキ…俺らはアニキのことずっと好きですよ!」

「友人なんだ…そんなことは思わないさ」



話を聞くとどうやら、俺が魔王の息子であり魔国に行った…という情報で、囚われてるのかも…と思って助けに来たらしい。

その途中、戦争が終わったばかりで船も出ておらず紆余曲折している時1人の兵に救われ、一緒に来たらしい。


その兵を見る…格好は今は旅の装いだが、人族の中ではかなり強い人物だとわかった。


その兵を見て、今度は父さんが目を見開いている。


「…マッシュ。生きてたのか!!」

「大将もご無事で…」


どうやらこの兵は父の側近で副官だった士官であるらしい。






積る話もあるので、皆とりあえず応接室のソファに腰掛けた。


「本当にアルスは魔王の息子なのね…」

「でも、ちゃんと幸せそうに暮らせてるのは顔を見たらわかる…よかった」


マリアとミラはどこかほっとしたような顔を俺に向けてくる。

なんか気恥ずかしくて俺は何を言うべきか思案した。



それに比べて、トルスとレオはすぐに順応する。


「アニキ、魔王ってやっぱり超強いんですか?」

「ん?父上か?あぁ、多分本気を出せば一人で人類全部と戦えるんじゃないかと思うくらい強いぞ…たぶん」

「す、すげぇー。さすが魔王」



「アルス…ちなみに魔族達との試合とか…できるのか?」

「ん?あぁそういやカイト達はすでにここで暮らしてるし、試合もしてるからレオも多分俺が話せばできると思うぞ?」

「え?カイトさんもいるのか!?そうかーすげぇーやってみてぇ」


トルスは能天気だしレオはやっぱり脳筋だな。



「2人とも、そんな事は今じゃなくても良いでしょ?」

「ほんと、バカ…」

マリアとミラは2人にちょっとイラついていた。

まぁでも俺からしたらかなり気が楽になるが…



「で、魔国にはどれくらい滞在できるんだ?」

「んー、親にも内緒で来ちゃってるから…長くても3日かなー帰りの移動もかなり時間かかると思うから」

代表してマリアが答える。


「ん?あー帰りは気にしなくても良いぞ?父上に言えば転移魔法で送ってくれるだろうし」

「…転移魔法。魔王の転移魔法!?」

ミラは何やら遠い目をしてぶつぶつ言っている。


「それが可能なら、まぁ一週間以内なら滞在できるかな…」

「でも、親御さんも心配してるだろうし、あんま長居はさせられないな…。とりあえず父上達に滞在の許可を取りに行こっか」


「…魔王よね?」

「……魔王…」

「アニキの実の父上様…」

「最強の魔王…」


「ん?あーでもそこまで礼儀とか言わないから気軽で良いと思うぞ?」




父とマッシュさんはまだ2人で話したいらしく応接室に残ったので、皆を連れて俺は父上を探した。


「魔王城!凄い…王国の城の何倍あるのこれ…」

「こんなとこで暮らせるって…なんか羨ましい」

マリアとミラは城内をキョロキョロ見ながら興奮してる.


「あの魔族…めっちゃ強そう…」

「いや、あっちの方が強いぞ?間違いない」

トルスとレオは通りすがる兵達を見てそんなことを言っている。




と、そこにゼスさんが通りかかった。

今日はマントをしていないので黒いローブを着た金髪のおじ様である。


「アルス殿下!お誕生日おめでとうございます!」

そう言って頭を下げてくるゼスさん。


そういえば誕生日なの、すっかり忘れてた。


「ありがとうゼスさん。それで、今父上を探しているんだけど、どこにいるかわかる?」

「陛下ですか?王妃殿下と共に、先程は中庭に居ましたが…」

「中庭だね!ありがとう…あ、そういえば今度魔族の歴史について聞かせてよ!家庭教師がゼスさんは詳しいって!」

「魔族の歴史ですか…ふふっ構いませんよ!ぜひ、今度お聞かせします」

「よかった!ありがとう…」



そうしてゼスさんと別れ中庭に向かう…


「あの人…なんか凄い強そうなオーラ出てたけど、誰なの?」

「あの人は父上の側近のゼスさん。幹部達の中でもかなり強い人だよ?」

「魔王の側近…」


マリアは少し顔を青ざめていた。

確かにそれだけ聞いたら怖いな。



で、やっと中庭に着く。

そこには2mを超える筋骨隆々の父上と、まるで天使か美少女というべき母上が居た。


「父上!母上!紹介します。俺の友人のマリア、ミラ、トルス、レオです…」


「ほおー!アルスの友人か…この状況下で遠いなか、よく来たな。歓迎するぞ…わしが魔王…シルバ・ヴィベルイ=ベルゼビュートだ」

俺と同じ黄金色の瞳がマリア達を見つめる。


「アルスの友達!!よろしくね!私はアルスの母…エリザベート・フェーブル=ベルゼビュートよ」

母上は穏和な笑みで皆を見る。


「お初にお目にかかります…魔王陛下…王妃殿下…私は中央大陸ローゼン王国、レイストフ伯爵家長女、マリア・レイストフです」

いつの間にかマリア達は膝をついていた。


なんだかんだ真面目だな…


「私はローゼン王国にあるベルーシュ商会、会頭の娘ミラ・ ベルーシュです」

「ローゼン王国…トライデン辺境伯家長男…レオ・トライデンと申します」

「ランドバルト子爵家長男…トルス・ランドバルトです。アニキの子分です」


おい、トルス…お前だけなんか変だぞ?


「堅苦しくならなくてよい。息子の友人だ…種族も国も関係ない。息子も寂しがっておったからな…わざわざありがとう」


「そんな…こちらこそ、戦争終息後のこの時期に受け入れて頂きありがとうございます」

マリアはどこか驚愕したような顔をして、頭を下げた。


まぁ確かに父上は魔王っぽくないもんな。



「で、アルス…わざわざ顔合わせに来たわけではないのだろ?」

「はい。友人達の数日間の滞在許可と…その後に転移魔法で送ってあげれないでしょうか?」

「ん?なんだそんなことか。それならさっきエリザベートとも話していた。もちろん構わないぞ」

「ありがとうございます…。」

「フッ たまには子供らしく遊んでこい。今のお前なら必要ないかもしれんが一応護衛をつけるなら王都で観光してもよいぞ?」

「え!?いいんですか?」

「構わん」


父上はそう言って微笑んで頭を撫でてきた。

こう見るとやはり魔王というより、父親だよなーと思う。


「あ、アルス!!王都に行くのは良いけど、それならレノちゃんも誘ってあげなさい!」

母上にそう言われ思い出してしまった。


「あっ!!レノとの約束忘れてた!!」


「もー、ダメよ!女の子の約束をすっぽかしたら」

母上にほっぺを摘まれる。


「ごめん…。ちょっとあとで探して謝ってきます。」

「ちゃんと謝るのよ?」

「はい!もちろんです。」






それからレノを探すために城内を歩く。

多分、訓練場付近か?


「魔王様って、印象が伝わってるのと全然違うわね!」

「うん…確かに凄いオーラだったけど、なんか優しい…」


マリアとミラに言われて俺も少し誇らしかった。


「あぁ父上は優しいよ。それに母上も」


「王妃様…最初お姉さんかと思った。」

ミラは可愛いかったなーと続けて感想を述べる。


「確かに絶世の美女です。さすがはアニキの母上」

「にしても、魔王様…あれは強いなんてもんじゃないな。どう考えても勝てる見込みが一ミリもない。」


なんで、レオは少し落ち込んでいるんだ。

戦闘狂じゃねーかそれ。







それから訓練場に着くと、そこにレノが座っていた。


「あ、アル…殿下!えっと、その方達は?」

立ち上がってこちらにくるレノ。


「遅くなってごめんね。紹介するよ!俺の友人のマリア、ミラ、トルス、レオ」

「えっと、マリアです!よろしく!」

「…可愛い。あ、私はミラ!よろしくね」

「アニキの一の子分。トルスです!よろしく」

「レオだ!よろしくな」


なんか、うん…良い!

友人達に囲まれるなんて、最近想像もしてなかった。


「で、王都に行くの?」

「マリアはすぐ行きたいのか?んー、でも今日は皆疲れてるだろ?だからそれは明日にしよ…今日はレノに俺の鍛錬と実験を見てもらう約束をしてたから、まずはそれをしなきゃ」

「実験…まだやってるんだ…」

「ミラ…その目やめて」

「じゃあ俺も一緒にやっていいか?」

「アニキ!俺もやりたいっす」



そして、俺とレオとトリスの3人は訓練場の隅で剣を交える事になる。

俺強くなり過ぎたんだよなー。大丈夫か?





それはまた次の話で……







マリア達…やっと再会できたー。

なんか俺も嬉しい。


by 尾上蓮虎

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