33話 長く生きるって孤独だな
どうも尾上です。
そろそろ次の展開が始まります。
始まるけど…学園編…書きたい…書いちゃおうかな…
「側近…ですか?」
とある日魔王である父上の執務室に呼ばれた俺は父上に「側近を集めよ」といわれた。
「あぁ、いずれお前が魔王になった時お前を支える側近達を今から探しておいた方がいい。」
「カイト達以外にですか?」
「そもそも…アルス。お前は人族の中で育ったせいで忘れているがな…魔族と人族じゃ寿命が雲泥の差だ。特にお前は俺の血を継いでいる。その為、数百年は寿命がある。いくらお前が信頼してようと100年後、200年後…その時に人族の部下はもうこの世にいないのだぞ?」
なっ!?確かに…
って、え?俺数百年も生きられるの?
え、ちょっと待って…てことは父上から魔王を継ぐのも下手したら100年後とか?
たしかに…カイト達はその時いない、な。
「そっか…友達とかもその時にはいないんですね…」
え、なんか唐突に悲しいんだけど。
そうか…マリア達もカイト達も、何もなくても俺より先にこの世を去るのか。
「まぁそう落ち込むな。友との別れ、戦友との別れ、それを多く経験するのも長命の者の勤め。それでも、生き続ける…それが友への花向けだ。」
それでも生き続ける…か
なんか深いな。
「わかりました。カイト達ももちろんその中に入れますが、魔族の側近も考えてみます。」
「時間は多くあるのだ、ゆっくり考えたら良い」
父上と話してから訓練場に向かった。
訓練の為ではなく、側近かぁ…という難題の末にたどり着いたのである。
そこで戦う魔族達を眺める。
魔族とは多種族の混合である。
1番多いのが父上や俺と同じ魔人族…魔人族はツノと翼を持つが、力量がある程度以上あればその両方を身体の中に収納することができ、見た目では人族とさほど変わりはない。
が、魔力量と魔力適性、そして身体能力のポテンシャルが特に高く戦闘民族と言えばその通りの種族である。
他にも巨人族や吸血鬼族、ダークエルフ、そして亜人の中でも魔族寄りな種族などなど、たくさんの種族がありそれらを一括りにして魔族と呼ぶ。
その為見た目や力も千差万別である。
その為戦う兵達も多種多様。
今も三つの尻尾をだし多くの攻撃魔法を多用する妖狐族と素早い動きで剣を縦横無尽に振るう黒豹のような見た目の獣人族が戦っている。
そして、そこから少し離れたところでガイゼンが巨人族と戦っていた。
いや、見た目はどちらも巨人だけど。
いつの間に打ち解けたんだ…
「どうした?アルスこんなとこで」
訓練場が見渡せる場所に腰をかけていた俺に、後ろから父さん、ケイレスが話しかけてきた。
「実は父上に…」
俺は父さんに父上から言われた側近の話と長命の話をした。
「…そうか。確かにそうだよな。アルスは俺らよりも数倍以上長く生きる。でも、父さんは嬉しいぞ?息子が長く生きるのは…」
どこか呑気な父さん…本気で思ってるんだろうな。
「でも、見知った人達が確実に自分よりも長く生きられないってなんか寂しいよね」
「そうだな…。アルスは優しいからな。でも、アルスが長く生きるってのは他のみんなからしたら嬉しいんじゃないか?アルスができるのはその人達がいる間、どれだけその人と楽しい時を過ごせるかだろ?寿命なんて正直わからん。もしかしたらいずれそういう魔法ができてみんな長生きするかもしれない。だったら区別しないで、自分の居たい人といれば良いんだ!好きな気持ちに、そんな事で蓋をしたらダメだ」
やっぱり父さん…良いやつ。
うん。でも確かにそうだよね。
生きる長さとかは関係ないよ。
もはや、そんな魔法創ってみようかな。
「ありがとう父さん。うん。そうするよ!なんか肩の力がおりた。」
「人生なんてわからないさ。俺だってこうやって魔国で暮らすなんて思ってもみなかったんだ。それに、世界は広いよな。魔国がこんなに栄えてて、魔族があんなにも良い人ばかりなんて思ってもみなかった。アルスに出会えて、こんなに幸せな生活をおくれてる。本当にありがとうな!お前は俺の最高の息子だよ」
「確かに広い。俺もこうなるまで魔族ってもっと怖い人達だと思ってた。けど、全然違ったよ。父さんも俺の自慢の父さんだよ。もちろん父上も、母上も、母さんも、メルも、俺にとっては最高の家族。」
そう言うと父さんは微笑んで、頭を撫でてくれた。
「アルスには今後どういう人生があるんだろうな…。でも、どんだけキツくてもさこれだけは覚えておけよ?」
父さんが不意に前に来て目を見つめてくる。
「何があってもお前には俺達がいる」
俺の頬を伝う涙は、何の涙なんだろうか。
温かいその雫は、どうして出ているのだろうか。
でも、その言葉は心の中に明確に記された。
「…ありがとう。父さん。」
訓練場で父さんと別れ、城に戻って歩いているとどこからか綺麗な歌声が聞こえてきた。
前世でいうオペラのような歌声…凄い上手い。
もはや芸術?
その歌声の方に歩いていくと、城の中庭に行ける場所に辿り着き、中庭を見るとそこには母上が居た。
母上だったの?歌うま!!
その澄んだ声に聞き入りながら母上の方に歩みを進めると…
「あれ?アルス…聞いてたの?」
と母上は歌をやめてこちらを振り向いた。
「母上…歌が上手いんですね…もはや芸術でしたよ」
「あれ?あの人から聞いてない?私、セイレーン族と魔人族のハーフなの」
「え?そうなんですか?」
セイレーン族とはその歌声で人を癒し、時に惑わせ、操る種族だと聞いた事がある。
通りで歌が上手いわけだ。
「でも、母上はセイレーンというよりまるで天使ですね…」
綺麗な白金の澄んだ髪に、翡翠のような瞳、顔立ちもとても綺麗で、子だからという贔屓目なしにまるで天使である。
「天使?あら嬉しい!私の愛しの息子は本当に良い子だわ…」
母上は嬉しかったのか、抱きしめてくる。
もう慣れたけど…母上…胸が…
「ん?ということは俺も歌が上手いんですかね?」
俺にもセイレーン族の血が流れてるってことだよな?
「歌えると思うわ!一緒に歌ってみる?」
母上に教えてもらいながら一緒に歌う。
そして、確かに俺も上手かった。
これ前世ならジャ○ーズ入れたんじゃない?
ってくらいの歌唱力だ。
でも、俺何やってんだ…という感覚に苛まれる。
異世界きて、魔王の息子で、母親と歌歌うって、いやでも9歳だもんな。
子供なんて本当はこんなもんか?




