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28話 陰謀


  

 現在、ローゼン王国内に進軍してきた魔国との戦争は東、北、西の三方向で主な大戦が繰り広げられていた。



 特に北側での戦いは他の戦場と比べると段違いに規模が大きく現在大将が二人そこに出陣していた。



 しかしロングズマンそしてレイナードの二人の大将が居る事で士気は高く、魔国の苛烈を極める戦い振りにも引けを取ることはなかった。





 そんな均衡が崩れるのは、誰も予期してない程に唐突であった。



「ガハッ…ロングズ…マン辺境伯…これは…どういう事です?」


  

 腹に突き刺さる剣と、目の前のロングズマンを交互に見てケイレス・レイナードは生唾を飲んだ。



「ハッハッハッ 死していくものに知る必要はない。ぬしは我らにとって邪魔な存在になった…とだけ説明しておこう。」



 よくよく考えれば、今日の戦いは途中から布陣がおかしかった。

計画とは違うロングズマン辺境伯の動き、そしてその部下達の配置。

気にしてる程に余裕はなく、気づけばロングズマン辺境伯の部下に囲まれ自分の部下達から距離を置かれ、そして剣を刺されている。



 手で剣が引き抜かれた箇所に触れればそこからは止め処なく血が流れ出していた。



「裏切ったのか…?」


「裏切る?それは違うな。そもそもイレギュラーだったのは、アレがまだ存在していたという事実と、ぬしがそれに関わっていたという事だ。上はそれを全て無かった事にすると決めた。」


「アレ…?関わる?何の事だ!」


「ぬしは知らなくていい。案ずるなぬしの家族もすぐに後を追う…。それなら寂しくはなかろう」



 こいつ…目が本気だ。

俺の家族の身にも同じ事が起きているのか?

マリーも、メルも、アルスも、こんな意味のわからないことで殺される?



 そんな事!あって(言い訳→良い訳)ない!!

くそ…くそっ!!!!



「クソッ!!!!簡単に…俺が…死ぬと思うな!!!!!!」



 叫んだケイレスは、いきなり表情を変えて不敵に笑みを洩らす。



 その変貌ぶりに周りは一歩後ずさった。



 目は真っ赤に染まり、身体はメキメキとふた回り程肥大し、そして全身から殺気を迸らせる。

ケイレスがその若さで出世を続けることが出来たのは、この力があったからである。



「まだ動けたか!…にしても最後の最後に狂戦士を使うとは、どこまでも面倒な男だ!」


「あああああーーーッッ!!!!殺す殺す…全員皆殺しだ!!!」



 ケイレスは咆哮をあげ、目の前のロングズマンを蹴り飛ばすと風の如く速度で右に左に次々に囲んでいたロングズマンの部下達を斬り倒していく。



「そいつはもう虫の息だ!!!殺せ!!!!!」



 一気に殺到する兵士達…しかし、凄まじい瞬きを浴び一瞬足を止めた。



 ケイレスの剣がとてつもない光を放っていたのである。



「天剣か…」

ロングズマンは奥歯を噛み締めた。



 光の剣となったケイレスの剣が囲んでいた兵を一撃にして斬り倒す。



 ロングズマンは慌てて背中に背負っていた自身の愛斧を構える。



「さっさと死ね!!!レイナード!!」

「殺す!!!!!!」



 剣と斧がぶつかったにしては大き過ぎる爆音が辺りに響く…そしてその衝撃で戦場に凄まじい砂嵐が巻き起こる。



 ケイレスの剣は光に包まれ、そして自身は風の如くロングズマンに斬りかかる。



 丈夫さでは他に並ぶ者はいないと言われるロングズマンもこの乱撃に防戦一方であった。



 ケイレスが大地を蹴り、瞬く間にロングズマンの目の前まで迫り、そして跳躍して上段から斬りかかる。



 それをロングズマンはなんとか斧で受け止め…



「なっ…な、くそっ…ガハッ」

腹に横一文字に斬られた傷と吹き出した血飛沫を見てロングズマンは膝から崩れ落ちる。



 跳躍し上段から斬りかかる一瞬で剣の軌道を変え横薙ぎにロングズマンを斬り倒したケイレスは目の赤さも引き苦笑していた。



「まさか、こんな所でアルスの技に助けられるとはな…」



「な、何事ですか??これは!!!」

駆けつけるケイレスの部下達。


どーするか…とりあえず

「そいつは俺に斬りかかってきた裏切り者だ。捕らえて王都に送れ。それよりマッシュをすぐにここに呼べ」



 話をそのままするわけにはいかない。

そもそも奴の話ぶりからして、これは俺を嵌める罠だ。

上と言っていたが、それはこの国の上層部の事だろう。

逃げるにしてもこの傷では無理だ。

だが治癒の為に後方に下がれば囲まれる可能性もある。

だからこそ、付き合いが長く治癒にも長けた部下を呼び寄せた。



 近くのひらけた場所に運ばれた俺は駆け付けた副官マッシュによって慌てて治癒された。

ある程度終わり、人払いをしたマッシュが俺に話しかける。



「どういう事ですか?ロングズマン辺境伯はなぜ?」


「マッシュ。時間がない。掻い摘んで話すから黙って聞いててくれ。

今日の戦い、始まった時からやつの動きはおかしかった。

途中気づけば囲まれ、そして俺は不意打ちでロングズマンに剣を刺された。

やつは言ったお前が邪魔になったと。

しかも裏切りではなく上層部の判断だと。

俺は知らずに何か大変な事に巻き込まれていたらしい。」


「な?大将を上層部が?ありえません。それに大変な事ってなんですか?」


「俺もわからん。わからんが、やつは嘘を付いてる風ではなかった。それに家族も皆殺しにすると言っていた。くそっなんなんだよ!!」


「とりあえず事情はわかりました。しかし、すでに大将の屋敷に上層部の手の者が向かっているとして、ここから屋敷に辿り着くまでに間に合わない…のでは…」


「だからって見捨てられんのか…家族が殺されるかもしれねぇんだぞ!?」


「そうですね…では、これを使いましょう」

マッシュはおもむろにブレスレットを出した。


「それは…転移魔道具…」


「これは我が家の家宝です。しかし、一度しか使えません。これで、大将の屋敷に行きすぐに家族を連れて逃げましょう」


「そんな大事なもの…」


「構いません…大将には何度も命を助けられていますからね…これくらいさせてください」

マッシュからブレスレットを受け取るケイレス。



 しかし、そこにロングズマンの残兵が向かってきていた。



「ケイレス・レイナードを見つけた!!」

「捕まえるか!この場で殺せ!!!」



「早く行ってください。ここは私が何とかします」

優しげに微笑み肩を叩くマッシュ。


「しかし…」


「私に嫁や子供はいません。唯一の家族は大将や仲間達です。家族が困っている時は助けるものでしょ?

だから、早く!早く行ってください。

そして、またいつか会いましょう…大将」



 ブレスレットに魔力を注ぎ行き先を念じて起動させる。

足元に魔法陣が現れ、光が身体を包む。


 マッシュが数十の兵士に囲まれ総攻撃を受けていた。

しかし、魔法と剣でそれに応戦している。


 マッシュの肩から血が吹き出す、背中から剣が生え、片膝をつく。


「マッシュ!!!!!!」

叫ぶケイレス


「大将!!!!あなたは最高な上官でした!!!」

振り向く事もなく、大声で叫ばれたその言葉にケイレスは涙を流した。




 光が辺りを包み込み、

次に目を開いた時にはケイレスは屋敷の近くに移動していた。



 マッシュ!!!!!!

くそ…くそっ!!!!

どうなってんだよ!!



 後悔の念を抱えながら、それでもケイレスは走った。

全速力で駆け、屋敷を目指す。



 しかし…


「おい…うそ…だろ?」



 ケイレスが目にしたのは轟々と燃える屋敷であった。

屋敷の前には武装した兵士が数十人近く立っている。



 ここまでするのか?

俺が何をしたっていうんだ!!!



 ケイレスは剣を抜いた。



 もういい!!こいつら全員殺してやる。




 そしてケイレスが走り出そうとした時、横から腕を引っ張られ脇道に連れられる。



「え?」



 そこには、手を引いた本人…フード付きのローブを着たマリーとそして反対の手でマリーに手を引かれるメルの姿があった。



「話は後でいい!とりあえずここから逃げるわよ」



 それからマリーから渡されたローブを羽織り、マリーの魔法をいくつか駆使してその場から離れた。



 そして街まで出るとお金を屋敷から持ち出していたマリーのおかげで馬屋で、馬と馬車を購入しそこから人がいない森の中まで走る。



「で、どうなってるの?」

心配そうに二人を見るメルの頭を撫でながらマリーがケイレスに聞く。



 そこで俺はロングズマンとの経緯を話す。



「つまり何か存在していては不都合なモノが存在していて、それにあなたが関わっていたってこと?心当たりはあるの?」


「全くない。しかし、ロングズマンが言う上がどこまで上なのかはわからないがここまで堂々とやってくるってことは陛下すら関わっている可能性はある。」


「じゃあ国から出るしかないわね。でも、アルスはまだ戦場よね?どうやって合流するの?」


「相当難しいとは思うが、俺とお前がいればなんとかならないか?」


「ならない事はないとは思うけど…」


「すでに、襲われている可能性はあるな…」

ケイレスは俯く。


「あの子なら大丈夫よ。だって頭も良いし腕も立つわ!絶対に生きてる!」


「あぁ、そうだな。信じるしかない」






マッシュ…いい奴や

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