25話 戦争とは
ガイゼンを見つけたが、彼はかなり奮闘しているらしい。
とりあえずは一旦彼は放置でいいだろう。
次に目に付いたのはエル……魔導具である魔銃を使っているのは初めて見たが、一定の距離を保ちながら敵に魔弾を乱射している。
しかも、全て必中している。
12歳らしいが、なかなか有能である。
レオナルドはカイトと協力して戦っている、苦戦しているが勝ち目はかなりあるように見える。
ジョゼフも一対一で奮戦している。
俺はとりあえず兵長以上の兵士は一旦通り過ぎ、下級兵達の所に走る。
そこは壮絶だった。
片腕の無い兵士、すでに首を取られた兵士、口から血を流す兵士…
俺は奥歯を噛み締め、一気に加速して間に入る。
「な!!??お前は隊長が戦っていた子供!?ローナ隊長はどうした?」
騎士の1人が俺を見て叫ぶ。
「あいつなら致命傷を負わせたら逃げたよ…うちの部下が世話になったな。もう1人も逃がさない」
ここは先ほど戦っていた所より木々が密集している。
俺は剣をしまい、全身に気功を纏う。
身体はすでにボロボロだ…もはや死力を尽くす他ない。
一気に目の前の敵兵に詰め寄り、剣を振り下ろす隙を与えず鳩尾に掌底を放つ。
「ブハッ!!!!」
そして吹き飛ばされ木に衝突するそいつを無視して、右に左にと次々に掌底を打ち込んでいく。
くそ…HP保つのか…これ
一瞬でその場の敵兵を戦闘不能にした俺は、周りを見渡し、窮地にいる隊員のフォローの為に雷撃や風斬などの魔法を的確に当てていく。
「おー、隊長!敵の将はもう倒したのか?」
ガイゼンが俺を見つけブンブンと大斧を振り回しながら話しかけてきた。
「かなり深い傷は与えたはずだが、逃げられた」
「交戦中に逃げるなんて、武人の風上にも置けん奴だな」
頬をひくつかせ苛立たし気に斧を振るうガイゼンはそう言いながら最後の1人を吹き飛ばす。
そこにカイトとレオナルドも駆けつける。
「た、隊長!!血が!!!」
カイトが俺の肩の傷を見て慌てる。
「大丈夫だ。そこまで重症じゃない。それより、大怪我をしている隊員達を集め無事な魔法が使える隊員に治癒させてくれ」
「はっ!直ちに…」
あと戦ってるのはジョゼフだけか…
と、ジョゼフが居た場所を見ると敵兵を抱えてこちらに歩いて来ていた。
「隊長。どうやらこいつは副官のようだったので尋問の為、気絶させ連れてきました」
「そうか!よくやったジョゼフ。そいつは拘束しておいてくれ」
ジョゼフ…初めて声を聞いたが…出来る男だ。
そしてそれから隊員を集めた。
死者17名。
生存者13名。
うち重傷者4名。
「クソ……。俺の判断ミスだ」
俺はうな垂れた。
初めての交戦だったとはいえ、自分への過信、そして敵への侮り。
明らかに俺のミスだった。
仲間が17人も死んだ。
昨日まで笑っていた仲間が。
「隊長は間違っていません。あの状況で逃げるのは不可能でした」
カイトがうな垂れる俺を心配そうに見ている。
「いや、そもそもこれは勝ちだぜ!?隊長」
ガイゼンはニヤッと笑みを向けてくる。
「敵は魔国の精鋭部隊。それに対して小隊一つで敵を殲滅したんです。ガイゼンの言う通りこれは明らかに勝ちです。死んだ者も無駄死にではありません。そういう顔は死した者が浮かばれませんよ」
レオナルドの意見…
たしかにそうなのだろう。
頭では納得しているし、戦争とはこういうものだという事も分かっている。
はずだった。
しかし、実際に目にするのはまた違う。
現に支援部隊 総勢約150名、四個小隊 総勢約120名、そして我が小隊から17名。
合計287人の死体がその辺に無残な姿で転がっている。
これが、戦争。
本隊であればこの何十、何百倍も死んでいるのだろう。
そもそも俺達も飛竜に乗られていたり、場所が拓けた場所であったり、敵将が逃走せず士気が下がっていなかったら…
そういう幸運が続いていなければ死んでいただろう。
俺らが生き残っただけでも幸運なのだろうな。
俺は暗くなる気持ちを心の奥底に押し込み、隊員達に支援部隊の物資の状況と、生きている敵兵の捕縛、そして生存者の確認と、怪我人の治癒を指示した。
ちなみに飛竜はいつの間にかいなくなっていた。
騎士が負けた場合にはすぐに逃げるように訓練されていたのだろう。
そして、それから数時間後司令本部に帰還し報告を行った。
「レイナード曹長…実に素晴らしい働きだった。魔国の奇襲突撃部隊と交戦し敵将は取り逃がしたとはいえ致命傷を与え、さらには副官を含め多くの捕虜を連れ帰るとは。
仲間の死を経験し狼狽えているようだが、誇るべきだ!魔国の奇襲突撃部隊は一隊で中隊以上の戦力を誇ると言われている。それを出来たばかりのたったの二週間しか経っていない小隊一つで負かすなんて容易ではないぞ?」
マリオット大佐は浮かない顔をしている俺をずっと励ましてくれた。
まぁ実際それ程の功績らしいが。
死ぬ気で戦っただけで、大した指示も出せていなかった。
あの手柄は俺ではなく隊員達のものだ。
大佐への報告が終わり部屋を出る俺は、
もっと強くならなくてはならない。と心に決めた。
第六小隊には数日後、補充の兵士が来るらしい…それまでは療養と待機を指示されている。
俺は我が隊の野営のテントが張られている拠点に向かい、自分のテントに入りそのまま眠りについた。
肩の痛みはもう引いてきているがそれよりも体力、魔力、共に限界だ。
久々な感覚。あーーねむい。しぬ。




