22話 戦争開始…
ではでは、ここからはアルス編にもどりますのでお楽しみください
魔国との戦争が始まった。
それは俺達、王立士官学校の生徒にとってとても他人事ではない出来事である。
特に、俺達特待生にとっては…
「という事で今回の戦争で君達一年の特待生も配属される事になったのじゃが。こればかりはいくら軍人であると認められていても学生である故強制は出来ん。辞退したい者はおるかね?」
校長から呼び出しを受けた特待生達は表情を固くしていた。
そもそも実地研修すら受けていない上に、軍としての基礎訓練すらまだ始まっていないわけで、正直なんの活躍が出来るのかと一様に不安を感じていた。
が、しかしここで辞退するという者はいない。
「そうかそうか!今年の一年生はとても勇敢であるな!しかし、勇敢と死に急ぐ者は同義と言っても良い。あまり無茶はしないように…
では、これより君達に大将 レイストフ伯爵より賜った指令書の内容を伝える。
王立士官学校一年特待生のうち、新入生代表を除く4名に軍曹の階級を与え、その4名は後方支援部隊の補給班への着任を命ずる。
新入生代表、アルス・レイナードには座学の知識と書類で渡された戦闘の素質と力量を加味し曹長の階級を与え、後方奇襲部隊への着任を命ずる」
俺だけ階級が一つ上で奇襲班か。
「アルス君、あまり肩肘を張らなくてもよいぞ。奇襲部隊とはいえ後方。そう、易々と仕事は回ってこないはずじゃ」
話が終わり校長室を後にする。
「アルスだけ、一つ階級上かー!まぁ仕方ないよね確かにすごいもんあんた」
ミラがいつものテンションである事に俺は少し安心感を覚えた。
モンスターと戦っていた経験はあるが、これは戦争…
いくら腕に自信があっても不安は俺にもあった。
「いやぁー俺も支援じゃなくて奇襲の方が良かったわー!くそー手柄先にとられちまうなー」
レオもいつも通りなようだ。
「しかし、戦争ってまったく想像ができない。本当に大丈夫なのかな」
「なぁーに弱気になってんのよ!あんたらしくもない!大丈夫よ!敵が後方に来たとしてもあんたは強いでしょ?」
「そうだ!我がライバル!お前は明らかに強い!何を心配しているんだ!」
いつもはそれなりに受け流す評価の賛辞も今は何か引っかかり不穏な予感が消せない。
他の二人の特待生はどうなのだろうか。
ふと、隣を歩く初めて見た特待生の二人をみる。
一人はマッシュルームのような白髪に鋭い眼光が印象的な小柄な少年。
もう一人は黒髪のショートヘアの猫目の少女。
二人とも顔色一つ変えずにツカツカと寮へと歩みを進めている。
これが普通なのか?
戦争に行くんだぞ?
魔族って強いんだろ?
数十万の軍勢だぞ?
俺がおかしいのか?
疑問はあげだしたらキリがない。
俺は自室に帰り、母とメルに手紙を書く。
暗い感じにしないように最近学校であった面白い話などを散りばめ、しかし軍人として戦争に行くという事も忘れずに書く。
母さんとメルは心配するだろうなー。
特にメルは、泣くんじゃないか?
だけど、まぁ行くしかないもんな。
それに父さんも今頃前線に出ているだろう。
後方でも、俺に出来る事が何かあるはずだ。
よし、頑張ろう。
それから数日後、軍から支給された装備を身に纏い俺は寮まで迎えに来た馬車に乗って戦場へと向かっていた。
馬車に乗っているメンバーは俺、マリア、ミラ、レオ、白髪の少年、黒髪の少女の特待生組と迎えに来た兵士の人の7人だ。
「今から向かうのは後方にある司令本部です。そこで皆さんは着任式を行い、その後隊に配属されます」
兵士の人の階級は伍長。
現場からの叩き上げ兵士の中ではかなり熟練の兵士である。
が、しかし今の俺らはそれよりも階級が上である為明らかに20代中盤である伍長、カイトさんはまだ子供である俺らにも礼儀は欠かさない。
軍人に年齢は関係ない。という事らしい。
「まさかこの歳でもう初陣になるとはなぁー!」
「ほんとよね。私はなんやかんやで軍の本部の勤務になって平和に暮らしたかったんだけど…計画狂っちゃったわ」
レオとミラの会話を聞きながら、俺は目を瞑り今後の事を考えていた。
魔族の強さは人族の数倍〜数十倍だと言われている。
強さといっても単純な武術の戦闘力だけでなく、魔力量の多さそして魔法の素質も段違いであるとされている。
特に魔王やその一族、また側近達は魔族の中でもさらに桁外れの実力と才能を持っているらしい。
つまり魔族一人で軽く数人、数十人分の強さという事だ。
そう考えると、今回の戦争で魔国が出してきた50万の軍勢は、数百万の軍勢と同義という事である。
それに対してローゼン王国を含む南大陸の国々は、以前の戦争とは違い連合を組んでもいない。
今回の戦争に出兵している各国の兵士は、
ローゼン王国軍30万、
タイラーン帝国軍50万、
マリアナ公国軍20万
そして、その他各国計80万。
合計180万。
普通の戦争ならここまでの数が出る事はまずない、しかし今回ばかりはこの数字が決して過剰ではないと俺は考えていた。
はたして勝てるのか。
そればかりは神のみぞ知る…か。




