137話 【それでいいのかブルーダスト王】
西大陸にはドワーフの国とエルフの国がある。
事前に蒼天で会議をしたが、エルフはドワーフよりも鎖国的で、外交のカードはない。
ドワーフとの同盟が思っていたよりもスムーズに進んだたため、一度帰国する予定だったがエルフとの会談ができないか考えている。
エルフの知り合いもいない、そして魔国とエルフに接点もない。
しかし、エルフの協力が叶えばこちらは相当有利にことを進められるのは言うまでもない。
何か手立てはないものか。
ポリオにその話をしてみたが、かなり苦い顔をされた。
そして彼は首をゆっくりと横に振った。
ポリオ曰くドワーフとエルフは種族レベルで犬猿の仲らしい。
若いドワーフ達からすればそこまで嫌悪感は無いが、それでも古い考えを持つ年長者達は敵対視しているそうだ。
歴史的にみてもドワーフとエルフが友好関係にあったことはない。
これはいよいよ本当に難しいな、と思った。
ブルーダスト王城の中庭を散歩しながら思考に浸っていると、中庭でベルクールが少女を肩に担いでいた。
一見して誘拐のような光景だが、肩に乗る少女の満面の笑みを見ればそれが遊びなのだとわかる。
「ベルクールとファナ姫なにしてるんだ」
「おぉー殿下!なんか肩に乗せろってせがまれてな」
「楽しいですよアルスお兄様!!」
ファナ姫はポリオの妹なのだがなぜか俺をお兄様と呼ぶ。
これは本当に謎だ。
懐かれているのはわかるのであまり強くは止められない。
「あぁ楽しいならいいか」
「変わってくれよ殿下」
「いや、ベルクールの方が大きいのは明らかだ。適材適所、がんばれ」
「くぅー、そりゃないぜ。」
ベルクールは心底裏切られた顔でジト目をしてきた。
筋骨隆々の巨体でやめてほしい。
「殿下はなにしてたんだ?」
「考え事をしながら歩いていたところだ」
「あぁ、昨日言ってたエルフとの会談の件か?」
「ポリオに話したがやはりドワーフ側からの助力は無理そうだ。そもそもブルーダストとエルフの国は外交をしていないらしい。魔国も接点ないしな。」
「じゃあどうするんだ?エルフは今回は見送るか?」
「そうせざるを得ないだろうな」
ふと、ベルクールの肩の上のファナ姫を見ると静かだとは思っていたがなにやら思案顔で“んー”と唸っている。
そしてパッと顔を上げて俺を見る。
「行くしかないですねお兄様」
「ん?」
「話したいけど話す機会がないんですよね」
「ん?まぁうん、そうだね」
「なら直接会いに行くしかないです」
いや、確かにそうなんだが...いや、そうか。
「確かに」
「良いこと言うじゃねえかチビ姫!それしかねぇな」
ベルクールはツボに入ったのか爆笑している。
ファナ姫の顔は真面目だ。
確かにそう考えれば間違えない。
国同士の関係やら立場やらを気にしすぎていた。
が、もっと早くそう考えてもおかしくはなかった。
まさかファナ姫に諭されるとは。
「よし、じゃあ次はエルフの国にいこう」
「おうし、行くかーエルフの国!!」
「ファナも行きたいですお兄様」
「いやいやいや、それは無理だろ」
「嫌です行きたいです。私の案です」
「あぶねーだろチビ姫」
「でも行きたいです」
ファナ姫は好奇心旺盛だが賢く分別はつく性格だとポリオが言っていたが、完全に我が儘モードになっている。
「そもそもブルーダスト王が許可を出すわけないだろ」
「大丈夫です父上は.......」
「わかった。許可しよう」
「はい?」
「娘を頼むぞアルス皇太子」
即答したブルーダスト王に俺とベルクールは絶句した。
まだ幼さの残る姫を友好国でもない国に向かう危険な旅に行かせるんだぞ?
もっと考えるべきでは?
と思ったがファナ姫の言葉を思い出した。
“大丈夫です父上は.....私に激甘です”
大丈夫かブルーダスト王。
「やったー!!アルスお兄様よろしくお願いします」
「まじでこれは連れてく流れなんじゃないか殿下」
「みなまでいうな」
こうして予想外の展開から、エルフの国に赴くことと、ファナ姫が同行することが決まってしまった。
さすがに断ることもできたが、ファナ姫のキラキラした瞳に射抜かれて俺は首を縦に振るしかなかった。
ポリオもついていきたいと言い出したのだが、それはブルーダスト王に即時却下されていた。
娘と息子で対応変わりすぎだぞ...
―次話予告―
アルス、ベルクール、エリスプリナ、ファナはエルフの国に向かって旅立つ。
「すごーい空飛んでる!!!!」
「ファナ姫危ないから!!下覗かない!!」
「おい!!飛び跳ねるなチビ姫!!クロが落ちたらどうすんだ!!」
「.....うるさい」
はたして無事に辿り着くのか...
次回【あれは...巨人の、国?】
絶対見てくれよな!!!!




